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26話 葡萄酒事件(4)
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「ウィード公爵家は随分と大層なおもてなしをしてくださいますのね」
私がにっこり微笑んでそう言うと、ダリアさんは顔を歪めて半ば叫ぶようにして言いました。
「そんな恰好じゃ外に出られないでしょ! 着替えさせてあげるって言ってるのよ!」
「ご厚情に感謝いたします。ですが古着を着る趣味はありませんの。私たちは会場に戻りますのでそこを通してくださいな」
「頭がおかしいの?! そんな恰好で会場に行けるわけないでしょ!」
ダリアさんは私たちの前に立ち進路をふさいでいるままです。
私が一歩前進すれば、ダリアさんは一歩後退して、ドアを守るようにして立っています。
これはもう監禁ですわね。
「私たちを監禁なさるおつもり?」
「監禁なんかしないわよ! 着替えなさいって言ってるのよ!」
「部屋に閉じ込めるのは監禁ですわ。そこを通してくださいな、さあ……」
私は声を張り上げました。
「お退きなさい!」
「……っ!」
ダリアさんはびくっとして顔を歪めましたが、その場を動きません。
私は傍らのデイジーを振り向くと、大げさに怖がる演技をして言いました。
「デイジー、私たち監禁されてしまったわ! おお怖い! こんなところに監禁されてしまって、私たちこの先どうなってしまうのでしょう! 強行突破するしかないわぁ」
「お姉様、やって良いのですか?!」
舌なめずりするように不敵に微笑んだデイジーに、私は注意を入れました。
「私たちは監禁されてしまったのだから正当防衛よ。でも顔は駄目よ。怪我をさせないようにね」
「はい! お任せください!」
デイジーは嬉々として答えるやいなや、ダリアさんに突進しました。
「野蛮なゴブリンめ! 退けぇぇっ!」
「きゃあっ!」
戦場の猛将のように覇気を漲らせて咆哮したデイジーに、勢いよく引き倒され、ダリアさんは名も無き雑兵のようにあっけなく床に転がり無様に這いつくばりました。
「見張りのゴブリンを片付けてやりましたぁ!」
勝鬨を上げたデイジーを私は笑顔で褒め称えました。
「見事よ、デイジー」
デイジーはもともと身体能力が高いのか、はたまた平民育ちで環境に鍛えられたのか、俊敏で体力があり、その才能は貴族の娘となった以後もダンスに生かされています。
座学や作法ばかりの淑女教育はストレスが溜まるから体を動かしたいとデイジーが言うので、趣味程度にと護身術を習わせたところ、講師で雇った女剣士がデイジーは「筋が良い」と賞賛していました。
私は武術方面はよく解らないのですが、貴族の娘にしては出来る方という事でしょうか。
デイジーは平民でしたからね。
もしかすると。
かつての戦乱の時代、我がエンフィールド家は何人もの将軍を輩出した武家でしたから、デイジーには先祖の血が濃く表れているのかもしれません。
「お、お前たち……! その二人を逃がさないで!」
ダリアさんが床に尻をついている無様な姿でメイドたちに命令しました。
メイドたちはデイジーに怯えながらも、ダリアさんの命令に従い私たちの前に出ました。
客人の進路をふさぐとは、無礼なメイドたちですね。
「ウィード公爵家のメイドは躾がなっていないようね」
「お姉様、いかがいたしましょう。片づけちゃいますか?」
デイジーが嬉々とした笑顔で、指示を仰ぐように私を見やりました。
「無知で哀れなメイドですもの。まずは私が言い利かせましょう」
「はい」
デイジーが控えると、私はわきまえていない無作法なメイドたちに、身分の違いを教えてあげました。
「下女どもめ! 私をエンフィールド公爵の娘と知って進路をふさぐか! 縛り首で吊られる覚悟はできていような!」
「ひっ……!」
「お、お許しを……!」
「命が惜しくば、お退き!」
無礼なメイドたちは震えあがり、ようやく分をわきまえて私たちに道を開けました。
「さすがです、お姉様!」
「行きましょう、デイジー」
「はい!」
私たちは無事に恐怖の休憩室を脱出しました。
私がにっこり微笑んでそう言うと、ダリアさんは顔を歪めて半ば叫ぶようにして言いました。
「そんな恰好じゃ外に出られないでしょ! 着替えさせてあげるって言ってるのよ!」
「ご厚情に感謝いたします。ですが古着を着る趣味はありませんの。私たちは会場に戻りますのでそこを通してくださいな」
「頭がおかしいの?! そんな恰好で会場に行けるわけないでしょ!」
ダリアさんは私たちの前に立ち進路をふさいでいるままです。
私が一歩前進すれば、ダリアさんは一歩後退して、ドアを守るようにして立っています。
これはもう監禁ですわね。
「私たちを監禁なさるおつもり?」
「監禁なんかしないわよ! 着替えなさいって言ってるのよ!」
「部屋に閉じ込めるのは監禁ですわ。そこを通してくださいな、さあ……」
私は声を張り上げました。
「お退きなさい!」
「……っ!」
ダリアさんはびくっとして顔を歪めましたが、その場を動きません。
私は傍らのデイジーを振り向くと、大げさに怖がる演技をして言いました。
「デイジー、私たち監禁されてしまったわ! おお怖い! こんなところに監禁されてしまって、私たちこの先どうなってしまうのでしょう! 強行突破するしかないわぁ」
「お姉様、やって良いのですか?!」
舌なめずりするように不敵に微笑んだデイジーに、私は注意を入れました。
「私たちは監禁されてしまったのだから正当防衛よ。でも顔は駄目よ。怪我をさせないようにね」
「はい! お任せください!」
デイジーは嬉々として答えるやいなや、ダリアさんに突進しました。
「野蛮なゴブリンめ! 退けぇぇっ!」
「きゃあっ!」
戦場の猛将のように覇気を漲らせて咆哮したデイジーに、勢いよく引き倒され、ダリアさんは名も無き雑兵のようにあっけなく床に転がり無様に這いつくばりました。
「見張りのゴブリンを片付けてやりましたぁ!」
勝鬨を上げたデイジーを私は笑顔で褒め称えました。
「見事よ、デイジー」
デイジーはもともと身体能力が高いのか、はたまた平民育ちで環境に鍛えられたのか、俊敏で体力があり、その才能は貴族の娘となった以後もダンスに生かされています。
座学や作法ばかりの淑女教育はストレスが溜まるから体を動かしたいとデイジーが言うので、趣味程度にと護身術を習わせたところ、講師で雇った女剣士がデイジーは「筋が良い」と賞賛していました。
私は武術方面はよく解らないのですが、貴族の娘にしては出来る方という事でしょうか。
デイジーは平民でしたからね。
もしかすると。
かつての戦乱の時代、我がエンフィールド家は何人もの将軍を輩出した武家でしたから、デイジーには先祖の血が濃く表れているのかもしれません。
「お、お前たち……! その二人を逃がさないで!」
ダリアさんが床に尻をついている無様な姿でメイドたちに命令しました。
メイドたちはデイジーに怯えながらも、ダリアさんの命令に従い私たちの前に出ました。
客人の進路をふさぐとは、無礼なメイドたちですね。
「ウィード公爵家のメイドは躾がなっていないようね」
「お姉様、いかがいたしましょう。片づけちゃいますか?」
デイジーが嬉々とした笑顔で、指示を仰ぐように私を見やりました。
「無知で哀れなメイドですもの。まずは私が言い利かせましょう」
「はい」
デイジーが控えると、私はわきまえていない無作法なメイドたちに、身分の違いを教えてあげました。
「下女どもめ! 私をエンフィールド公爵の娘と知って進路をふさぐか! 縛り首で吊られる覚悟はできていような!」
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「お、お許しを……!」
「命が惜しくば、お退き!」
無礼なメイドたちは震えあがり、ようやく分をわきまえて私たちに道を開けました。
「さすがです、お姉様!」
「行きましょう、デイジー」
「はい!」
私たちは無事に恐怖の休憩室を脱出しました。
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