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34話 飛び出した小娘
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「ダリアさんがこのような斬新な方法で葡萄酒を振舞ってくださいましたのよ」
私がウィード公爵にそう言うと、バジル様も笑顔で言いました。
「ウィード公爵。ダリア嬢は随分と作法に詳しいのだな。こんな作法があるとは初めて知った」
私とバジル様が念を押すようにダリアさんの名前を連呼すると、ウィード公爵はこのままでは言い逃れできないと思ったのか戦法を変えて来ました。
「何か行き違いがあったのでしょう」
ウィード公爵は視線を鋭くして、私たちを威圧するかのような態度で言いました。
「メイドが大変な粗相をしたようで、お詫び申し上げます。ダリアがメイドの監督を怠ったことは不手際でございました。メイドは処罰いたしますゆえ、ここは、どうか……」
ウィード公爵がメイドに責任転嫁しようと弁舌を振るいはじめた、そのとき。
「そうよ!」
ダリアさんの声が響きました。
大扉のところで縮こまっていたはずのダリアさんは、いつのまにかここにやって来ていたようです。
ダリアさんは素早く両親であるウィード公爵夫妻にすり寄り、そして両親を盾にして私たちに言い放ちました。
「私はそんな酷いことしてないわ!」
ダリアさんはしゃあしゃあと嘘を吐き始めました。
「リナリアさんとデイジーさんが、ご自分で葡萄酒を浴びたのよ! それを私のせいにするなんて、酷いわ!」
ダリアさんは眉を下げ哀れっぽい表情で被害者を装いました。
「お父様、エンフィールド姉妹は私を陥れようとしているのよ……!」
ダリアさんはみっともなくも泣きべそをかきはじめました。
ダリアさんは嘘を吐いていますが、涙は嘘ではないでしょう。
私たちにこてんぱんにされて、泣きたくもなる状況でしょうから。
それにしても、このような場で泣き出すとは、町娘でもあるまいに見苦しいことです。
「ダリア、それは本当か?!」
ウィード公爵がダリアさんの嘘に乗りました。
「ううっ……! お父様、本当よ……! リナリアさんとデイジーさんは自分で葡萄酒を浴びたの!」
ダリアさんは泣きべそをかきながら、さらにペラペラとまくしたてました。
「それにバジル様は関係ないわ……! バジル様はあの場にいなかったもの。バジル様は私を陥れようとするためにわざと葡萄酒を浴びたのよ……! バジル様がご自分で葡萄酒を浴びているところを見ていた人は大勢いるもの!」
そこは、そのとおりです。
バジル様はデイジーの味方をするため、ダリアさんを糾弾する目的で自ら葡萄酒を浴びられたのですもの。
「ダリア嬢が教えてくれた作法を、私も実践したまでです」
バジル様は生真面目なお顔でそうおっしゃいましたが、ダリアさんはキッとバジル様を睨みつけると言いました。
「バジル様はデイジーさんの嘘を鵜呑みになさっただけでしょう! 証拠もないのにデイジーさんの話を鵜呑みにして、私を悪者にするなんて、一方的すぎるわ!」
証拠ですか。
そういえばあの休憩室には木っ端貴族どもがいて、私とダリアさんの争いを見てぶるぶる震えていましたね。
ウィード公爵が手を回す前に、証人として確保しておいたほうが良さそうです。
木っ端貴族の夫人や令嬢の顔などいちいち覚えていませんが、見知った顔はいたので、そこから探しましょうか。
私がそう考えを巡らせたとき。
「証拠ならあります!」
一人の小娘が声を上げました。
王族を交えた公爵家同士の争いの、この渦中に、なんと下位貴族の小娘が割り込んで来ました。
上位貴族の娘であれば見知っているので、私が知らない顔は下位貴族です。
装いも、礼を欠かない程度は保っていますが、上位貴族のような高級品は身に付けていないので下位で間違いないでしょう。
「エンフィールド家のご姉妹に葡萄酒をかけたのは、ウィード公爵令嬢です!」
下位貴族の小娘は、二階から飛び降りようとしているかのような必死の形相で、半ば叫ぶようにして言いました。
「休憩室でダリア嬢が、エンフィールド家のご姉妹に葡萄酒を浴びせたのです! 私、休憩室にいたので見ていました! 他にも見ていた人は何人もいます!」
私がウィード公爵にそう言うと、バジル様も笑顔で言いました。
「ウィード公爵。ダリア嬢は随分と作法に詳しいのだな。こんな作法があるとは初めて知った」
私とバジル様が念を押すようにダリアさんの名前を連呼すると、ウィード公爵はこのままでは言い逃れできないと思ったのか戦法を変えて来ました。
「何か行き違いがあったのでしょう」
ウィード公爵は視線を鋭くして、私たちを威圧するかのような態度で言いました。
「メイドが大変な粗相をしたようで、お詫び申し上げます。ダリアがメイドの監督を怠ったことは不手際でございました。メイドは処罰いたしますゆえ、ここは、どうか……」
ウィード公爵がメイドに責任転嫁しようと弁舌を振るいはじめた、そのとき。
「そうよ!」
ダリアさんの声が響きました。
大扉のところで縮こまっていたはずのダリアさんは、いつのまにかここにやって来ていたようです。
ダリアさんは素早く両親であるウィード公爵夫妻にすり寄り、そして両親を盾にして私たちに言い放ちました。
「私はそんな酷いことしてないわ!」
ダリアさんはしゃあしゃあと嘘を吐き始めました。
「リナリアさんとデイジーさんが、ご自分で葡萄酒を浴びたのよ! それを私のせいにするなんて、酷いわ!」
ダリアさんは眉を下げ哀れっぽい表情で被害者を装いました。
「お父様、エンフィールド姉妹は私を陥れようとしているのよ……!」
ダリアさんはみっともなくも泣きべそをかきはじめました。
ダリアさんは嘘を吐いていますが、涙は嘘ではないでしょう。
私たちにこてんぱんにされて、泣きたくもなる状況でしょうから。
それにしても、このような場で泣き出すとは、町娘でもあるまいに見苦しいことです。
「ダリア、それは本当か?!」
ウィード公爵がダリアさんの嘘に乗りました。
「ううっ……! お父様、本当よ……! リナリアさんとデイジーさんは自分で葡萄酒を浴びたの!」
ダリアさんは泣きべそをかきながら、さらにペラペラとまくしたてました。
「それにバジル様は関係ないわ……! バジル様はあの場にいなかったもの。バジル様は私を陥れようとするためにわざと葡萄酒を浴びたのよ……! バジル様がご自分で葡萄酒を浴びているところを見ていた人は大勢いるもの!」
そこは、そのとおりです。
バジル様はデイジーの味方をするため、ダリアさんを糾弾する目的で自ら葡萄酒を浴びられたのですもの。
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バジル様は生真面目なお顔でそうおっしゃいましたが、ダリアさんはキッとバジル様を睨みつけると言いました。
「バジル様はデイジーさんの嘘を鵜呑みになさっただけでしょう! 証拠もないのにデイジーさんの話を鵜呑みにして、私を悪者にするなんて、一方的すぎるわ!」
証拠ですか。
そういえばあの休憩室には木っ端貴族どもがいて、私とダリアさんの争いを見てぶるぶる震えていましたね。
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