かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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37話 乱れ撃ち

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「ダリア・ウィード、貴様のような女は王太子妃にふさわしくない。私はこの件を国王陛下に報告する。ウィードが悪事を押し通すために王家の権威を持ち出したことを知れば、国王陛下は婚約破棄を裁可してくださるだろう!」

 アイヴィー王子殿下がそう言い放つと、ダリアさんとウィード公爵夫妻は壮絶に顔色を変えました。

「……っ!」
「そ、そんな……!」

 アイヴィー王子殿下の言い様からは、葡萄酒事件の主犯はダリアさんであると国王陛下に報告されることが推測されます。
 不利な状況に天秤が傾いたことにダリアさんとウィード公爵夫妻は狼狽えています。

「おい、小僧」

 父は眉を吊り上げた険しい表情で、アイヴィー王子殿下に言いました。

「その言葉に二言はないだろうな」
「無論です。ウィード公爵令嬢とは必ず婚約破棄します。私はウィード家の悪事とは無関係です!」

 これは僥倖。

 アイヴィー王子殿下とウィード公爵が仲違いして潰し合ってくれれば、こちらは漁夫の利を得られますね。

 父の支離滅裂な攻撃が、偶然にも上手く作用したようです。

 それならば……。

「ねえ、お父様、ウィード公爵領の者たちの通行料だけを倍額にするのは、公平ではないわ」

 私がそう言うと、父は少し驚いたような顔をしました。

「ウィードを許せというのか? どうした、リナリア。お前らしくないぞ。具合が悪いのか?」

「デイジーを虐めたのはダリアさんだけじゃないの。アイリスさんとピオニーさんとエリカさんもよ。彼女たちがよってたかってデイジーを虐めたの。彼女たちの家にも倍返ししなければ公平とは言えないと思うの」

「な、なんだと!」

 父は驚愕の声を上げると、デイジーを振り向いて尋ねました。

「デイジー、本当か?!」

 父にそう尋ねられたデイジーは『良いの?』と問いかけるように私を見たので、私は頷いてみせました。

「本当よ、お父様」

 デイジーは父にすらすらと答えました。

「アイリスさんとピオニーさんとエリカさんも、ダリアさんと一緒に私を虐めたの。平民のくせにって言われたわ」
「そいつらは、どこのどいつだ!」
「ドラセナ侯爵令嬢、カポック伯爵令嬢、クテナンテ伯爵令嬢よ」

 父はデイジーから彼女らの家名を聞くと、会場を振り返り怒声を上げました。

「ドラセナ、カポック、クテナンテ、覚悟しろ! 倍返しだ!」

 父がそう叫ぶと、人垣の中からドラセナ侯爵、カポック伯爵、クテナンテ伯爵の三人が飛び出しました。

「ま、待たれよ! エンフィールド公!」

 三人の貴族は蒼白な顔で父に訴えました。

「ご令嬢の言い分だけで通行料倍額とは、一方的すぎますぞ!」
「そ、そうです。まずは調査を!」

 あら?
 彼らは自分の娘が何をしたのかを知らないのかしら?

「あ……思い出した」

 父は、はっと気付いた顔をしてドラセナ侯爵に言いました。

「お前の娘、王家の下の息子と婚約してなかったか?」
「あ、ああ、そうだ。我が娘アイリスは第二王子シスル殿下と婚約した……」

 ドラセナ侯爵のその返答を聞くと、父はくるっと振り返り、再びアイヴィー王子殿下に言いました。

「おい、やはり王家はグルか」
「ち、違う! 誤解だ!」

 再び流れ弾に被弾したアイヴィー王子殿下は慌てふためきました。
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