かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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45話 悪夢の夜会のあと

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「お姉様、ウィード公爵家にも仕返しをしないのですか?」

 デイジーが少し不服そうな顔で私にそう質問しました。

「ウィード公爵とは話し合いの余地がないから、場合によっては倍返しを実行するわ。でも王家が介入して仲裁するのではないかしら?」
「王家が横槍を入れて来るのですか?」
「経済への影響を重く見た大臣たちにせっつかれて、国王陛下がウィードとエンフィールドの仲裁をすると思うわ」

「じゃあ、ウィード公爵を逃がしてしまうのですか?」

 ダリアさんに葡萄酒を浴びせかけられて、ウィード公爵家を快く思っていないデイジーが不満そうな顔をしました。

「私たちが何かしなくても、ドラセナ侯爵たちがウィード公爵に何かすると思うわ」

 私はそう言ってデイジーを宥めました。

「私たちはそれを見物をしていれば良いのよ」

 ダリアさんは、アイリスさん、ピオニーさん、エリカさんたちのリーダー格で、私とデイジーに葡萄酒を浴びせたのはダリアさんです。

 アイリスさん、ピオニーさん、エリカさんの三人は、デイジーに悪口を言っただけです。

 悪口を言うことは褒められた行動ではありませんが、悪口を言う程度なら、悪女と呼ばれるほどのことではないのです。
 彼女らがあの場で悪女と呼ばれた原因は、葡萄酒を浴びた私とデイジーの酷い姿がもたらしたもの、ダリアさんの所業によるものです。

 アイリスさん、ピオニーさん、エリカさんの三人の実家が、ダリアさんさえいなければ娘が恥をかくことはなかったと、ダリアさんとウィード公爵家を恨んでくれれば上々。
 エンフィールドが手を汚さずとも、彼女ら三人の実家がウィード公爵家憎しで団結して、ウィード公爵家に何かしてくれるでしょう。

 それにしてもダリアさんたちは、何故、婚約者に抗議なさらず、デイジーを攻撃したのかしら。
 ダリアさんが私たちに葡萄酒を浴びせる以前であれば、彼女らは婚約者にないがしろにされた被害者でしたので、大義名分を掲げて抗議すれば、お相手の行動を改めさせるなり賠償をさせるなりして勝てたかもしれませんのに。

 婚約者をないがしろにしたとて罪ではなく、罰則もありませんが、道徳的には批判される事ですので、ダリアさんたちが声を上げていれば何らかの補填を得ることは可能だったはずです。

 ですが私とデイジーを攻撃した後では、ダリアさんたちの行動に落ち度があったとみなされてしまうので、今から婚約者に抗議したとて負け戦でしょう。

 ダリアさんが私たちに葡萄酒を浴びせたのは、致命的な悪手でした。
 私たちに、本営のウィード公爵を奇襲するための武器を与えてしまったのですもの。
 本営を攻撃されるという発想がなかったのかもしれません。

 葡萄酒を浴びせられて、デイジーが目の前のダリアさんたちを攻撃しようとした行動は、攻撃された者にありがちな行動でした。
 小娘の話では、ダリアさんたちが他者のドレスを汚したのはあれが初めてではないようでしたから、今までは娘同士の小競り合いで終わっていたのでしょうね。

 私は無駄な小競り合いより、本営を攻めて、二度と立ち上がれないよう殲滅することを選びましたが。


 ◆


 ――その後。

 葡萄酒事件が起こったウィード公爵家の夜会は『悪夢の夜会』と呼ばれるようになりました。

 あの夜会の以後、王家の求心力は低下し、あちらこちらで貴族同士の対立も起こり、民草の生活にまで影響を及ぼしたからです。

 そして『悪夢の夜会』で起こった『葡萄酒事件』は、社交界で話題になるだけに止まらず、市井にまで広がりました。


 ◆


 ――『悪夢の夜会』から、三か月が経過した頃。

 王城に呼ばれた父が、デイジーに縁談を持ち帰りました。

「デイジーをアイヴィー王子殿下の妃にしたいと、国王陛下より打診があった」
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