59 / 85
59話 兄弟の確執
しおりを挟む
「兄上はデイジー嬢に嫌われているのに! 父上の権力を使ってデイジー嬢と結婚しようなんて卑怯です! 親に甘えるのはいい加減にしてください!」
シスル王子殿下が糾弾すると、アイヴィー王子殿下は怒気を露わにして反論しました。
「黙れ! これは政略だ!」
「ウィード公爵令嬢との婚約も政略だったではありませんか!」
「貴様もドラセナ侯爵令嬢との政略をぶち壊しただろうが!」
「ふ、二人とも……落ち着きなさい……」
兄弟喧嘩を始めたアイヴィー王子殿下とシスル王子殿下の醜態に、王妃殿下がおろおろとしていらっしゃいます。
「二人ともやめんか!」
国王陛下が一喝なさいましたが、シスル王子殿下は険しい視線でそれに言い返しました。
「父上はどうして兄上の肩ばかり持つのですか!」
ふふふ……。
争え、争え。
争い合って、潰し合え。
エンフィールドを駒にしようとした身の程知らずが。
「おい、国王」
私たちの父エンフィールド公爵が、ひどく真面目な顔で、国王陛下に気さくすぎる呼びかけをしました。
「王太子の決め直しで揉めているようだな。時間がかかるだろうから、私たちはもう帰っても良いか? ちゃんと決まったらまた知らせてくれ」
「王太子はアイヴィーだ。決め直しなどせん」
「いや、揉めているだろう」
父の失礼な指が、兄弟喧嘩をしている王子殿下たちを指しました。
「王太子を決めるのは国王である私だ」
国王陛下が厳しい表情でそう言うと、父は眉を下げて可哀想なものを見るような目を国王陛下に向けました。
「ちゃんと話し合ったほうが良いぞ。位の継承のことで家族が揉めると、急に体の具合が悪くなって逝ってしまうことがあるからな」
「……っ!」
国王陛下がギョッとして顔色を変えました。
王妃殿下の顔からもさっと血の気が失せました。
父はしかつめらしい顔で国王陛下にお説教をしました。
「我々のように地位を持つ者は、常に家族が仲良くあれるよう気配りが必要だ。健やかに暮らすためには大切なことだ」
父は実弟ガジュマル・エンフィールドを恐れていて、命の危険を感じているらしいので、親切心から国王陛下に助言したのでしょう。
しかし惨劇を仄めかされた国王陛下と王妃殿下は顔を引きつらせました。
「はっはっはっ……!」
この様子を眺めていた王弟殿下が笑い出しました。
「兄上、いや国王陛下、王命で強引にデイジー嬢を得るのは諦めたほうが賢明です。もし嫌がるデイジー嬢を無理やりアイヴィーの妃にしたら、国内はますます混乱しましょう。デイジー嬢にどれだけの子息が求婚しているかご存知か? デイジー嬢を救うため反乱が起こるかもしれません。国が傾きますぞ」
王弟殿下は皮肉っぽい笑みを浮かべて言いました。
「いっそ、デイジー嬢の『真実の愛』を得た者を、王太子にしては?」
王弟殿下のその言葉に、今までずっと黙っていたバジル様がうっすらと微笑を浮かべました。
アイヴィー王子殿下と言い争っていたシスル王子殿下も振り向きました。
「叔父上、それは名案です」
シスル王子殿下は、まるで優位に立ったかのように喜色を浮かべました。
シスル王子殿下も婚約者を放置してデイジーに言い寄っていたので、デイジーには嫌われています。
ですからここはシスル王子殿下が喜ぶところではないのですが。
無知は幸福ですね。
アイヴィー王子殿下といい、シスル王子殿下といい、どうしてこうもデイジーに好かれていると勘違いをしているのでしょうか。
私のデイジーの笑顔の仮面がそれだけ完璧だったということなのでしょうけれど。
笑顔や美辞麗句が信用できるものではないことは社交界の常識でしょうに。
「巫山戯たことを申すな!」
苛立たし気にそう言った国王陛下に、王弟殿下は穏やかな笑顔で進言しました。
「デイジー嬢に王太子を決めてもらうというのは冗談ですが……。しかし、陛下、嫌がる娘を妃にするために王命を使ったとあれば、貴族たちのみならず民の反感をも買うことも必至。アイヴィーがデイジー嬢に嫌われている以上、無理強いはできますまい」
「……」
顔を歪めて口を噤んた国王陛下に、王弟殿下は余裕の表情で言いました。
「デイジー嬢との婚姻を望むなら、まずはデイジー嬢の心を得ることから始めるべきでしょう」
シスル王子殿下が糾弾すると、アイヴィー王子殿下は怒気を露わにして反論しました。
「黙れ! これは政略だ!」
「ウィード公爵令嬢との婚約も政略だったではありませんか!」
「貴様もドラセナ侯爵令嬢との政略をぶち壊しただろうが!」
「ふ、二人とも……落ち着きなさい……」
兄弟喧嘩を始めたアイヴィー王子殿下とシスル王子殿下の醜態に、王妃殿下がおろおろとしていらっしゃいます。
「二人ともやめんか!」
国王陛下が一喝なさいましたが、シスル王子殿下は険しい視線でそれに言い返しました。
「父上はどうして兄上の肩ばかり持つのですか!」
ふふふ……。
争え、争え。
争い合って、潰し合え。
エンフィールドを駒にしようとした身の程知らずが。
「おい、国王」
私たちの父エンフィールド公爵が、ひどく真面目な顔で、国王陛下に気さくすぎる呼びかけをしました。
「王太子の決め直しで揉めているようだな。時間がかかるだろうから、私たちはもう帰っても良いか? ちゃんと決まったらまた知らせてくれ」
「王太子はアイヴィーだ。決め直しなどせん」
「いや、揉めているだろう」
父の失礼な指が、兄弟喧嘩をしている王子殿下たちを指しました。
「王太子を決めるのは国王である私だ」
国王陛下が厳しい表情でそう言うと、父は眉を下げて可哀想なものを見るような目を国王陛下に向けました。
「ちゃんと話し合ったほうが良いぞ。位の継承のことで家族が揉めると、急に体の具合が悪くなって逝ってしまうことがあるからな」
「……っ!」
国王陛下がギョッとして顔色を変えました。
王妃殿下の顔からもさっと血の気が失せました。
父はしかつめらしい顔で国王陛下にお説教をしました。
「我々のように地位を持つ者は、常に家族が仲良くあれるよう気配りが必要だ。健やかに暮らすためには大切なことだ」
父は実弟ガジュマル・エンフィールドを恐れていて、命の危険を感じているらしいので、親切心から国王陛下に助言したのでしょう。
しかし惨劇を仄めかされた国王陛下と王妃殿下は顔を引きつらせました。
「はっはっはっ……!」
この様子を眺めていた王弟殿下が笑い出しました。
「兄上、いや国王陛下、王命で強引にデイジー嬢を得るのは諦めたほうが賢明です。もし嫌がるデイジー嬢を無理やりアイヴィーの妃にしたら、国内はますます混乱しましょう。デイジー嬢にどれだけの子息が求婚しているかご存知か? デイジー嬢を救うため反乱が起こるかもしれません。国が傾きますぞ」
王弟殿下は皮肉っぽい笑みを浮かべて言いました。
「いっそ、デイジー嬢の『真実の愛』を得た者を、王太子にしては?」
王弟殿下のその言葉に、今までずっと黙っていたバジル様がうっすらと微笑を浮かべました。
アイヴィー王子殿下と言い争っていたシスル王子殿下も振り向きました。
「叔父上、それは名案です」
シスル王子殿下は、まるで優位に立ったかのように喜色を浮かべました。
シスル王子殿下も婚約者を放置してデイジーに言い寄っていたので、デイジーには嫌われています。
ですからここはシスル王子殿下が喜ぶところではないのですが。
無知は幸福ですね。
アイヴィー王子殿下といい、シスル王子殿下といい、どうしてこうもデイジーに好かれていると勘違いをしているのでしょうか。
私のデイジーの笑顔の仮面がそれだけ完璧だったということなのでしょうけれど。
笑顔や美辞麗句が信用できるものではないことは社交界の常識でしょうに。
「巫山戯たことを申すな!」
苛立たし気にそう言った国王陛下に、王弟殿下は穏やかな笑顔で進言しました。
「デイジー嬢に王太子を決めてもらうというのは冗談ですが……。しかし、陛下、嫌がる娘を妃にするために王命を使ったとあれば、貴族たちのみならず民の反感をも買うことも必至。アイヴィーがデイジー嬢に嫌われている以上、無理強いはできますまい」
「……」
顔を歪めて口を噤んた国王陛下に、王弟殿下は余裕の表情で言いました。
「デイジー嬢との婚姻を望むなら、まずはデイジー嬢の心を得ることから始めるべきでしょう」
250
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
日下奈緒
恋愛
そばかす令嬢クラリスは、家族に支度金目当てで成り上がり伯爵セドリックに嫁がされる。
だが彼に溺愛され家は再興。
見下していた美貌の妹リリアナは婚約破棄される。
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
【完結】婚約者を妹に奪われたのでヤケ酒していたら、なぜか黒薔薇公爵に求婚されました
音芽 心
恋愛
伯爵令嬢アイリスは、幼い頃から妹のメアリーと比較され、家族の愛を知らずに生きてきた。唯一幸せだった時間は、婚約者のカルヴィンと過ごしている間だけ。
だがある日、カルヴィンから唐突に婚約破棄を言い渡される。どうやらカルヴィンは、アイリスの知らない間にメアリーと恋仲になっていたらしい。
何もかもが嫌になり、家を抜け出して酒屋でヤケ酒をしていた時、ある男に声を掛けられる。酔っ払っていたアイリスは、その男が誰かもわからぬまま酒を飲み交わしたのだった。
その翌日、目を覚ましたアイリスは見知らぬベッドにいた。おそるおそる隣を見ると、そこにはなんと「黒薔薇公爵」と呼ばれ恐れられている男が寝ていて……!?
***
皆さんの♡や📣、そしてお気に入り登録、大変励みになっております!
楽しく執筆活動ができているのは皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
ルヴェを侮辱した義妹は宮廷を追放されました ― 王妃クシェは最高の名誉職です ―
鷹 綾
恋愛
モンフォール公爵家の嫡女アデルは、王宮で王妃クシェという名誉職を務めていた。
王妃の就寝の儀礼で寝間着を差し出す――ただそれだけの役目。
しかしそれは、王妃の私室に入ることを許された宮廷で最も名誉ある地位の一つだった。
かつてアデルは王太子の婚約者だったが、側室の娘である義妹カミーユが甘い言葉で王太子を誘惑。
婚約は奪われ、アデルは宮廷で静かにクシェの役目を続けることになる。
だがある日、義妹は新たに与えられた王妃の朝の儀礼――ルヴェを聞いて嘲笑した。
「王妃の着替え係?そんなのメイドの仕事でしょう」
その一言で宮廷は凍りつく。
ルヴェとクシェは、王や王妃の私室に入ることを許された最高の名誉職。
それを侮辱することは、王妃そのものを侮辱することと同じだった。
結果――
義妹は婚約破棄。
王太子は儀礼軽視を理由に廃太子。
そして義妹は宮廷から追放される。
すべてを失った義妹は、やがて姉の地位を奪おうと画策するが――。
一方、王妃の最側近として静かに宮廷に立つアデル。
クシェという「王妃に最も近い名誉職」が、やがて王国の運命を動かしていく。
これは、宮廷儀礼を知らなかった者が転落し、
その意味を理解していた者が静かに勝つ物語。
王子、侍女となって妃を選ぶ
夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。
ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。
そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。
一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。
それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。
問答無用で美少女化させられる王子シリル。
更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。
本編完結済。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~
雨宮羽那
恋愛
魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。
そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!
詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。
家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。
同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!?
「これは契約結婚のはずですよね!?」
……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……?
◇◇◇◇
恋愛小説大賞に応募しています。
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"
モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです!
※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。
※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。
※小説内容にはAI不使用です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる