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60話 白紙撤回
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王弟殿下が仕切ってくださり、話し合いは何の損害もなく無事に終了しました。
アイヴィー王子殿下からのデイジーへの結婚の申し込みはお断りしました。
王命は白紙撤回です。
密室での非公式の話し合いの中で発せられた王命でしたので、無かったことになりました。
国王陛下に意見できる王弟殿下がいてくださったおかげで、円滑に進めることができました。
この場に王弟殿下を召喚してくださったのはやはりバジル様だったのでしょうか。
なかなか使える男ではありませんか。
◆
「さすがはリナリアだ。王太子を交代するのは名案だった。デイジーが嫌だと言っているのだから、王太子くらい交代してやれば良いのだ」
「王命を撤回させてしまうなんて、さすがです、お姉様。お姉様が味方で良かった」
王城からの帰りの馬車で、父とデイジーが私を褒め称えました。
「でも園遊会で、やっぱり、王子殿下たちとお話しなきゃ駄目ですか?」
デイジーが少し憂鬱そうに言いました。
あの場で、デイジーは国王陛下から直々に王宮で行われる園遊会に招待されました。
すぐに正式な招待状を送るので、必ず出席して欲しいとのことです。
園遊会の招待状は我が家にとっくに届いていましたが、父と私の二人で出席すると返事をしていました。
デイジーが王子殿下たちに会いたくないと言うので、デイジーは行かない予定だったものです。
「王命を撤回してくださったのだから、お礼に、王子殿下たちと少しくらいお話をして差し上げなさい。国王陛下の直々のご招待だもの。そのくらいは礼儀よ」
「はあ……。貴族のお付き合いって大変ですね……」
「デイジーが結婚相手を決めてしまえば、こんな騒動もなくなるわ。誰か気になった人いないの?」
「どんな人か解らない人ばかりですもの。まだ選べません」
「皆さんとお話はしているのでしょう?」
「はい。お話はしています。でもお世辞の言い合いばかりなので、お話しただけではどんな人か解らないのです……」
デイジーは小さく肩を窄めました。
「バジル様はどう? 少なくとも二回はデイジーを助けてくださったわ」
私がそう問いかけると、デイジーは考えるような顔をしました。
「良い人だとは思います。でも……バジル様って、ちょっと、風変わりなお方で……何を考えていらっしゃるのかよく解らなくて……」
デイジーがそう言葉を濁すと、父がうんうんと頷きました。
「あの小僧は雰囲気がガジュマルに似てるな。陰気で何か企んでいそうなところが」
父は実弟ガジュマル・エンフィールドを恐れているので、これは消極的な発言です。
私は不思議に思い、父に質問しました。
「お父様はバジル様を、デイジーの結婚相手に推していらしたでしょう。王弟殿下の夜会にデイジーを連れて行ったのはお父様よ」
「真面目で賢い好青年だと聞いていたから良いと思ったのだ……」
「その前評判は間違っていなかったのではなくて?」
「うむ。真面目で賢そうな男だ。最初は良いと思った。だが、あいつ、最近だんだん雰囲気がガジュマルに似て来た……。あいつたまに怖い笑い方をする……」
アイヴィー王子殿下からのデイジーへの結婚の申し込みはお断りしました。
王命は白紙撤回です。
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◆
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「皆さんとお話はしているのでしょう?」
「はい。お話はしています。でもお世辞の言い合いばかりなので、お話しただけではどんな人か解らないのです……」
デイジーは小さく肩を窄めました。
「バジル様はどう? 少なくとも二回はデイジーを助けてくださったわ」
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