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61話 園遊会
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――王宮の園遊会。
私は婚約者のウィロウに、デイジーは父エンフィールド公爵にエスコートされて出席しました。
美しく手入れされた王宮の庭園で、身分の高い者から順に並んで国王陛下をお待ちしています。
私たちは公爵家が並ぶ上座に陣取っていました。
ウィード公爵夫妻とその嫡子カルドン様、オークリー公爵夫妻と嫡子ルピナス様たちも共に並んでいます。
ウィード公爵の嫡子カルドン様はダリアさんのお兄様です。
「エンフィールド公爵、よく来てくれた」
「お招きいただき光栄に存じます」
父がエンフィールド家を代表して国王陛下に招待の礼を述べました。
さすがに公式の場ですから、父も国王陛下に「おい、国王」などと気安い呼びかけをしたりはしません。
表向きの顔で、行儀良く定型の挨拶を述べています。
大抵は家長が挨拶を述べ、国王陛下は家長に一言声をかけるだけで終わります。
招待客は大勢いますので長話はしないのです。
ですがデイジーは特別に国王陛下にお言葉をいただきました。
「デイジー嬢もよく来てくれた。池の水蓮が見ごろだ。後で息子に案内させよう」
「ご厚情をたまわり光栄に存じます」
◆
「国王陛下からお言葉を賜るとは」
「さすがです、デイジー嬢」
国王陛下へのご挨拶が終わると、招待客たちはそれぞれが自由に美しく手入れされた庭園を散策しました。
デイジーの周囲には求婚者の有象無象が集まって来ています。
デイジーをエスコートしていた父は、いつものことなのですが、私とウィロウにデイジーのことを任せると、どこかへ油を売りに行ってしまいました。
デイジーの周囲に集まる若い令息令嬢とは、父は齢が離れすぎていて話題が合わないこともあり退屈なのでしょう。
デイジーは社交界デビューした直後に、王子殿下たちにがっちり囲まれてしまいましたので、今まで有象無象はデイジーに近づけずにいました。
それがあの『悪夢の夜会』の以後、囲いが消えたことにより、大勢の若い令息令嬢がデイジーの周囲に集まるようになりました。
今日のこの王宮での園遊会は国王陛下の主催で、下位貴族は当主夫妻しか招待されていないため若い令息令嬢の数は少なめですが、それでもデイジーの周囲には令息たちが集まって目立つ集団になっています。
その様子を、少し離れた場所から恨めしそうに見ている令息がいます。
「……」
ピオニーさんの元婚約者、オークリー公爵令息ルピナス様です。
貴族たちの私的な夜会やサロンではお見掛けしなくなっていたお方です。
ルピナス様からの求婚をデイジーはすでにお断りしていますが、彼はまだデイジーのことを諦めていないのでしょうか。
デイジーをじっと見つめています。
「……」
ルピナス様の視線に気付いたデイジーが、不安気な表情を浮かべました。
「そういえば、デイジー嬢、ご存知ですか?」
デイジーがルピナス様に視線をやったことに気付いたのか、有象無象の令息の一人がしらじらしく話し始めました。
「オークリー公爵家は、ルピナス殿を後継者から外すという噂です」
「一体どうしてですの? 何かあったのですか?」
デイジーがそう問い返すと、この話題がデイジーの興味を引いたと思ったのか、他の令息たちもオークリー公爵家の噂について話し始めました。
「その話なら私も聞きました。オークリー公爵の親族たちが、ルピナス殿を廃嫡しろと騒いでいるとか」
「オークリー公爵家の親族たちは、ドラセナ侯爵たちと和解するために、元凶のルピナス様を排除したいのでしょう」
「ルピナス殿がピオニー嬢と婚約破棄したせいで、オークリー公爵家の一族はドラセナ侯爵の派閥から恨まれ、官職を追われましたからね……」
「一族に不利益をもたらすような者に爵位を継がせたら没落の危機です。オークリー公爵は実の息子に爵位を継がせたいでしょうが、親族たちは許さないでしょう」
令息たちはオークリー公爵家の噂を語りながら、ルピナス様の無能をデイジーに宣伝しました。
ルピナス様を蹴落とすチャンスですものね。
「直にルピナス殿は廃嫡されて、貴族社会から消えるでしょう」
そう言った令息に、デイジーは質問しました。
「跡継ぎから外されただけで貴族社会から消えてしまうのですか? 貴族なのに?」
デイジーに質問された令息は、誇らしげに答えました。
「貴族の子は爵位を継げなければ、いずれ貴族ではなくなるのです。爵位を継ぐか、爵位を継ぐ者の配偶者になるかしないと、平民になってしまうのですよ」
ちなみにこの令息、伯爵家の跡継ぎです。
彼のこの言葉に、デイジーの周囲に集まっている令息たちの中の、爵位を継げない立場の子息たちが顔を引きつらせました。
貴族の世界は弱肉強食。
いつ足を引っ張られるか解らないのです。
私は婚約者のウィロウに、デイジーは父エンフィールド公爵にエスコートされて出席しました。
美しく手入れされた王宮の庭園で、身分の高い者から順に並んで国王陛下をお待ちしています。
私たちは公爵家が並ぶ上座に陣取っていました。
ウィード公爵夫妻とその嫡子カルドン様、オークリー公爵夫妻と嫡子ルピナス様たちも共に並んでいます。
ウィード公爵の嫡子カルドン様はダリアさんのお兄様です。
「エンフィールド公爵、よく来てくれた」
「お招きいただき光栄に存じます」
父がエンフィールド家を代表して国王陛下に招待の礼を述べました。
さすがに公式の場ですから、父も国王陛下に「おい、国王」などと気安い呼びかけをしたりはしません。
表向きの顔で、行儀良く定型の挨拶を述べています。
大抵は家長が挨拶を述べ、国王陛下は家長に一言声をかけるだけで終わります。
招待客は大勢いますので長話はしないのです。
ですがデイジーは特別に国王陛下にお言葉をいただきました。
「デイジー嬢もよく来てくれた。池の水蓮が見ごろだ。後で息子に案内させよう」
「ご厚情をたまわり光栄に存じます」
◆
「国王陛下からお言葉を賜るとは」
「さすがです、デイジー嬢」
国王陛下へのご挨拶が終わると、招待客たちはそれぞれが自由に美しく手入れされた庭園を散策しました。
デイジーの周囲には求婚者の有象無象が集まって来ています。
デイジーをエスコートしていた父は、いつものことなのですが、私とウィロウにデイジーのことを任せると、どこかへ油を売りに行ってしまいました。
デイジーの周囲に集まる若い令息令嬢とは、父は齢が離れすぎていて話題が合わないこともあり退屈なのでしょう。
デイジーは社交界デビューした直後に、王子殿下たちにがっちり囲まれてしまいましたので、今まで有象無象はデイジーに近づけずにいました。
それがあの『悪夢の夜会』の以後、囲いが消えたことにより、大勢の若い令息令嬢がデイジーの周囲に集まるようになりました。
今日のこの王宮での園遊会は国王陛下の主催で、下位貴族は当主夫妻しか招待されていないため若い令息令嬢の数は少なめですが、それでもデイジーの周囲には令息たちが集まって目立つ集団になっています。
その様子を、少し離れた場所から恨めしそうに見ている令息がいます。
「……」
ピオニーさんの元婚約者、オークリー公爵令息ルピナス様です。
貴族たちの私的な夜会やサロンではお見掛けしなくなっていたお方です。
ルピナス様からの求婚をデイジーはすでにお断りしていますが、彼はまだデイジーのことを諦めていないのでしょうか。
デイジーをじっと見つめています。
「……」
ルピナス様の視線に気付いたデイジーが、不安気な表情を浮かべました。
「そういえば、デイジー嬢、ご存知ですか?」
デイジーがルピナス様に視線をやったことに気付いたのか、有象無象の令息の一人がしらじらしく話し始めました。
「オークリー公爵家は、ルピナス殿を後継者から外すという噂です」
「一体どうしてですの? 何かあったのですか?」
デイジーがそう問い返すと、この話題がデイジーの興味を引いたと思ったのか、他の令息たちもオークリー公爵家の噂について話し始めました。
「その話なら私も聞きました。オークリー公爵の親族たちが、ルピナス殿を廃嫡しろと騒いでいるとか」
「オークリー公爵家の親族たちは、ドラセナ侯爵たちと和解するために、元凶のルピナス様を排除したいのでしょう」
「ルピナス殿がピオニー嬢と婚約破棄したせいで、オークリー公爵家の一族はドラセナ侯爵の派閥から恨まれ、官職を追われましたからね……」
「一族に不利益をもたらすような者に爵位を継がせたら没落の危機です。オークリー公爵は実の息子に爵位を継がせたいでしょうが、親族たちは許さないでしょう」
令息たちはオークリー公爵家の噂を語りながら、ルピナス様の無能をデイジーに宣伝しました。
ルピナス様を蹴落とすチャンスですものね。
「直にルピナス殿は廃嫡されて、貴族社会から消えるでしょう」
そう言った令息に、デイジーは質問しました。
「跡継ぎから外されただけで貴族社会から消えてしまうのですか? 貴族なのに?」
デイジーに質問された令息は、誇らしげに答えました。
「貴族の子は爵位を継げなければ、いずれ貴族ではなくなるのです。爵位を継ぐか、爵位を継ぐ者の配偶者になるかしないと、平民になってしまうのですよ」
ちなみにこの令息、伯爵家の跡継ぎです。
彼のこの言葉に、デイジーの周囲に集まっている令息たちの中の、爵位を継げない立場の子息たちが顔を引きつらせました。
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