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62話 傾国の令嬢
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「デイジー嬢の人気は凄いな」
デイジーとその周囲に集まる令息たちの光景を眺めて、年配の貴族たちが囁き合っています。
「社交界一の美貌のご令嬢ですもの」
「国王陛下がデイジー嬢にお声がけなさったのは、やはり……」
「デイジー嬢をめぐって、王子殿下たちは兄弟喧嘩中だとか」
「もしシスル王子殿下がデイジー嬢を得れば、王太子が変わるかもしれん」
「エンフィールドの後ろ盾を得ることになりますものね」
皆、表立っては言いませんが。
国王陛下がエンフィールド公爵に、アイヴィー王子殿下とデイジーとの縁談を持ち掛けた話は密かに広まっています。
私がウィード公爵とドラセナ侯爵に告げ口しておきましたからね。
「だがデイジー嬢は平民の血が混じっている。王子妃にはなれないのでは?」
「エンフィールドを得るためなら王室典範を変更するだろう」
「王室典範の変更は、両刃の剣となりそうだな」
両刃の剣は、そのとおりです。
国王陛下はたしかに王室典範を変更することができます。
しかし他の王族や貴族の理解を得られないまま変更すれば、「王室典範を変更した国王は、国王として不適格」とされ、他の王族や貴族たちに退位をせまられることになりかねません。
退位を迫られても、それをねじ伏せる力があれば良いのですが。
国王陛下は現在、ドラセナ侯爵とウィード公爵を敵に回し、ドラセナ侯爵は王弟殿下と懇意にしている状態です。
うかつに王室典範を変更すれば、ドラセナ侯爵が王弟殿下を立てて、国王陛下の足をすくいに来る可能性は無きにしも有らずです。
国王陛下は、デイジーを得てエンフィールドを味方につければ、敵をねじ伏せることができると考えているのでしょうけれど。
「バジル様もデイジー嬢に求婚しているそうよ」
「王子の称号を持たないバジル様は、王子殿下たちより分が悪そうね」
「いや、解らんぞ。王弟殿下は財務大臣ドラセナ侯爵と懇意だ。王弟殿下のご子息のバジル殿がもしデイジー嬢と結婚してエンフィールドと縁を結んだら、とんでもない大勢力となる。盤面がひっくり返るかもしれん」
「まさに『傾国の令嬢』ですわね」
そう、最近、デイジーには『傾国の令嬢』という二つ名があります。
デイジーをそう呼び始めたのは、民草でした。
ドラセナ侯爵の派閥による報復活動により、民草の生活にも影響が出ることになりました。
王宮の文官の入れ替えによる仕事の遅延や、特定の品目の値上がりなどです。
社会の不穏な変化に気付いた者たちは、原因を探ろうとするものです。
特に商人はそういった変化に敏感で、情報を得ようとします。
そのため、社交界から漏れ出た『悪夢の夜会』や『葡萄酒事件』の噂は、市井にも広まって行きました。
民草たちは「さる美貌の令嬢をめぐって、王子や令息たちが争っているらしい」だの、「さる美貌の令嬢に嫉妬した令嬢たちが王家に処罰されたため、処罰された娘の親たちが復讐戦をしている」だのと噂しているとのことです。
そして事件の中心人物である「さる美貌の令嬢」デイジーは、民草たちに『傾国の令嬢』の渾名で呼ばれるようになりました。
その市井での渾名が、今度は社交界に逆輸入され、『傾国の令嬢』はデイジーの影の二つ名となっています。
国を乱す争いの火種となっているので『傾国の令嬢』と呼び出したのでしょうが。
でもシスル王子殿下とバジル様は、デイジーを得れば王座を目指せます。
デイジーは傾国の令嬢というより、むしろキング・メーカーではないかしら?
王妃にもなれる淑女にデイジーを育てたのは私ですけれどね。
「お姉様、私、喉が渇きました。園遊会にも飲み物は用意されていますか?」
キングメーカーであり傾国の令嬢であるデイジーは、喉が渇いたようです。
国王陛下へのご挨拶のために、日差しの下で並んでいましたものね。
「デイジー嬢、休憩用のテントに飲み物があります」
「私がテントまでご案内いたします」
有象無象の令息たちが、すかさずデイジーに言いました。
私のエスコート役のウィロウは、うんうんと頷くと、デイジーに言いました。
「そうだね。デイジー、テントで一息入れようか?」
デイジーのエスコート役の父はどこかへ行ってしまったので、ウィロウが私たち二人をエスコートしてくれています。
「私がご案内いたします。ここから一番近いテントはあちらです」
有象無象の令息たちに案内されて、私たちは休憩をするためにテントを目指して歩き出しました。
「お父様はどこへ行ってしまったのかしら」
歩きながらデイジーは軽く憤慨しながら独り言のように呟きました。
私はデイジーの呟きに答えました。
「お父様はきっと、いつものように、どこかでご夫人たちに囲まれて油を売っていると思うわ」
「最低ですね……」
デイジーとその周囲に集まる令息たちの光景を眺めて、年配の貴族たちが囁き合っています。
「社交界一の美貌のご令嬢ですもの」
「国王陛下がデイジー嬢にお声がけなさったのは、やはり……」
「デイジー嬢をめぐって、王子殿下たちは兄弟喧嘩中だとか」
「もしシスル王子殿下がデイジー嬢を得れば、王太子が変わるかもしれん」
「エンフィールドの後ろ盾を得ることになりますものね」
皆、表立っては言いませんが。
国王陛下がエンフィールド公爵に、アイヴィー王子殿下とデイジーとの縁談を持ち掛けた話は密かに広まっています。
私がウィード公爵とドラセナ侯爵に告げ口しておきましたからね。
「だがデイジー嬢は平民の血が混じっている。王子妃にはなれないのでは?」
「エンフィールドを得るためなら王室典範を変更するだろう」
「王室典範の変更は、両刃の剣となりそうだな」
両刃の剣は、そのとおりです。
国王陛下はたしかに王室典範を変更することができます。
しかし他の王族や貴族の理解を得られないまま変更すれば、「王室典範を変更した国王は、国王として不適格」とされ、他の王族や貴族たちに退位をせまられることになりかねません。
退位を迫られても、それをねじ伏せる力があれば良いのですが。
国王陛下は現在、ドラセナ侯爵とウィード公爵を敵に回し、ドラセナ侯爵は王弟殿下と懇意にしている状態です。
うかつに王室典範を変更すれば、ドラセナ侯爵が王弟殿下を立てて、国王陛下の足をすくいに来る可能性は無きにしも有らずです。
国王陛下は、デイジーを得てエンフィールドを味方につければ、敵をねじ伏せることができると考えているのでしょうけれど。
「バジル様もデイジー嬢に求婚しているそうよ」
「王子の称号を持たないバジル様は、王子殿下たちより分が悪そうね」
「いや、解らんぞ。王弟殿下は財務大臣ドラセナ侯爵と懇意だ。王弟殿下のご子息のバジル殿がもしデイジー嬢と結婚してエンフィールドと縁を結んだら、とんでもない大勢力となる。盤面がひっくり返るかもしれん」
「まさに『傾国の令嬢』ですわね」
そう、最近、デイジーには『傾国の令嬢』という二つ名があります。
デイジーをそう呼び始めたのは、民草でした。
ドラセナ侯爵の派閥による報復活動により、民草の生活にも影響が出ることになりました。
王宮の文官の入れ替えによる仕事の遅延や、特定の品目の値上がりなどです。
社会の不穏な変化に気付いた者たちは、原因を探ろうとするものです。
特に商人はそういった変化に敏感で、情報を得ようとします。
そのため、社交界から漏れ出た『悪夢の夜会』や『葡萄酒事件』の噂は、市井にも広まって行きました。
民草たちは「さる美貌の令嬢をめぐって、王子や令息たちが争っているらしい」だの、「さる美貌の令嬢に嫉妬した令嬢たちが王家に処罰されたため、処罰された娘の親たちが復讐戦をしている」だのと噂しているとのことです。
そして事件の中心人物である「さる美貌の令嬢」デイジーは、民草たちに『傾国の令嬢』の渾名で呼ばれるようになりました。
その市井での渾名が、今度は社交界に逆輸入され、『傾国の令嬢』はデイジーの影の二つ名となっています。
国を乱す争いの火種となっているので『傾国の令嬢』と呼び出したのでしょうが。
でもシスル王子殿下とバジル様は、デイジーを得れば王座を目指せます。
デイジーは傾国の令嬢というより、むしろキング・メーカーではないかしら?
王妃にもなれる淑女にデイジーを育てたのは私ですけれどね。
「お姉様、私、喉が渇きました。園遊会にも飲み物は用意されていますか?」
キングメーカーであり傾国の令嬢であるデイジーは、喉が渇いたようです。
国王陛下へのご挨拶のために、日差しの下で並んでいましたものね。
「デイジー嬢、休憩用のテントに飲み物があります」
「私がテントまでご案内いたします」
有象無象の令息たちが、すかさずデイジーに言いました。
私のエスコート役のウィロウは、うんうんと頷くと、デイジーに言いました。
「そうだね。デイジー、テントで一息入れようか?」
デイジーのエスコート役の父はどこかへ行ってしまったので、ウィロウが私たち二人をエスコートしてくれています。
「私がご案内いたします。ここから一番近いテントはあちらです」
有象無象の令息たちに案内されて、私たちは休憩をするためにテントを目指して歩き出しました。
「お父様はどこへ行ってしまったのかしら」
歩きながらデイジーは軽く憤慨しながら独り言のように呟きました。
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