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63話 ゴブリンの怪談
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「ふう……」
私とデイジーとウィロウは、休憩用のテントで果実水を飲んで一息つきました。
デイジーが目当ての有象無象の令息たちも一緒です。
テントは、骨組みの上に日除けの布が張られた簡単なものです。
テントの日陰の中には、招待客たちがくつろげるように椅子や小卓が並んでいて、休憩できるようになっています。
「デイジー嬢、ご存知ですか? ゴブリンが出たという噂を」
有象無象の令息の一人がそう切り出すと、冒険小説が好きなデイジーは目を輝かせました。
「ゴブリンが?! 本当にいたのですか?!」
「市井にそういう噂が流れているようです」
そして令息たちは、市井でまことしやかに語られている怪談について、私たちに教えてくれました。
その怪談は「ゴブリンが王子と結婚しようとして貴族令嬢に成りすましていた」というものでした。
無知で無学な平民は迷信深いですから、こういった怪談は市井に広まりやすいようです。
「王子殿下たちの婚約者だった、ウィード公爵令嬢とドラセナ侯爵令嬢が修道院へいった話に、どこかで尾ひれがついたのでしょう」
「無知な平民たちは迷信深いですからね」
「彼女たちが貴族社会から消えた話が、大きくふくらんで、正体がバレたゴブリンが逃げた話になったのでしょう」
「……」
デイジーはその話に居心地悪そうにしました。
悪夢の夜会で、『王子の婚約者の貴族の娘』を『ゴブリン』と呼んだことがあるデイジーには心当たりがあることでしょう。
私は苦笑しました。
「噂話に、とんでもない尾ひれがついたものね」
「リナリア、その顔は、何か心当たりがあるの?」
ウィロウが鋭い質問をして来たので、私は笑って誤魔化しました。
「……大したことではないわ。……後で話すわ」
「ふうん……」
◆
「リナリア嬢、ウィロウ殿、ごきげんよう」
有象無象の令息たちに遅れて、バジル様がいらっしゃいました。
バジル様は王族で、今日の王宮の園遊会では主催者側の家族であるため、招待客への挨拶に手間取ったのでしょう。
お父君の王弟殿下は、最近人気がとても高くていらっしゃいますものね。
国王陛下をしのぐほどに。
「デイジー嬢、ごきげんよう。王宮の庭園はいかがですか?」
バジル様は早速、デイジーを囲む有象無象たちの輪に入り、デイジーに話しかけました。
「あちらでエルダーフラワーが見ごろです。あちらの休憩用のテントではエルダーフラワーの花を漬け込んだシロップ水を振舞っていますよ。よろしければご案内します」
しかし……。
「デイジー嬢、ごきげんよう……」
「ごきげんよう、デイジー嬢。楽しんでいただけていますか?」
「……アイヴィー王子殿下、シスル王子殿下……」
少し控えめな態度のアイヴィー王子殿下と、自信満々のシスル王子殿下がいらっしゃいました。
それまで、内心はどうあれ、和やかな表情だったバジル様と有象無象の令息たちは、かつてデイジーを強固に囲っていた二人の王子殿下の登場にすっと顔色を変えました。
これは一悶着ありそうです。
私とデイジーとウィロウは、休憩用のテントで果実水を飲んで一息つきました。
デイジーが目当ての有象無象の令息たちも一緒です。
テントは、骨組みの上に日除けの布が張られた簡単なものです。
テントの日陰の中には、招待客たちがくつろげるように椅子や小卓が並んでいて、休憩できるようになっています。
「デイジー嬢、ご存知ですか? ゴブリンが出たという噂を」
有象無象の令息の一人がそう切り出すと、冒険小説が好きなデイジーは目を輝かせました。
「ゴブリンが?! 本当にいたのですか?!」
「市井にそういう噂が流れているようです」
そして令息たちは、市井でまことしやかに語られている怪談について、私たちに教えてくれました。
その怪談は「ゴブリンが王子と結婚しようとして貴族令嬢に成りすましていた」というものでした。
無知で無学な平民は迷信深いですから、こういった怪談は市井に広まりやすいようです。
「王子殿下たちの婚約者だった、ウィード公爵令嬢とドラセナ侯爵令嬢が修道院へいった話に、どこかで尾ひれがついたのでしょう」
「無知な平民たちは迷信深いですからね」
「彼女たちが貴族社会から消えた話が、大きくふくらんで、正体がバレたゴブリンが逃げた話になったのでしょう」
「……」
デイジーはその話に居心地悪そうにしました。
悪夢の夜会で、『王子の婚約者の貴族の娘』を『ゴブリン』と呼んだことがあるデイジーには心当たりがあることでしょう。
私は苦笑しました。
「噂話に、とんでもない尾ひれがついたものね」
「リナリア、その顔は、何か心当たりがあるの?」
ウィロウが鋭い質問をして来たので、私は笑って誤魔化しました。
「……大したことではないわ。……後で話すわ」
「ふうん……」
◆
「リナリア嬢、ウィロウ殿、ごきげんよう」
有象無象の令息たちに遅れて、バジル様がいらっしゃいました。
バジル様は王族で、今日の王宮の園遊会では主催者側の家族であるため、招待客への挨拶に手間取ったのでしょう。
お父君の王弟殿下は、最近人気がとても高くていらっしゃいますものね。
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「あちらでエルダーフラワーが見ごろです。あちらの休憩用のテントではエルダーフラワーの花を漬け込んだシロップ水を振舞っていますよ。よろしければご案内します」
しかし……。
「デイジー嬢、ごきげんよう……」
「ごきげんよう、デイジー嬢。楽しんでいただけていますか?」
「……アイヴィー王子殿下、シスル王子殿下……」
少し控えめな態度のアイヴィー王子殿下と、自信満々のシスル王子殿下がいらっしゃいました。
それまで、内心はどうあれ、和やかな表情だったバジル様と有象無象の令息たちは、かつてデイジーを強固に囲っていた二人の王子殿下の登場にすっと顔色を変えました。
これは一悶着ありそうです。
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