かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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64話 案内役の王子たち

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「デイジー嬢を案内をするようにという、国王陛下の思し召しだ」

 アイヴィー王子殿下はまるで怯えているかのようにデイジーの顔色を伺いながらそう言いました。
 デイジーに嫌われている自覚を持ったようですね。

「デイジー嬢、私たちが案内役を陛下より仰せつかりました。池の水蓮が見ごろですのでご案内いたします」

 シスル王子殿下が自信に満ち溢れた笑顔で言いました。
 こちらはデイジーに嫌われていることにまだ気づいていないようです。

「はい……。ご厚情に感謝いたします」

 デイジーは笑顔の仮面で王子殿下たち答えると、私とウィロウを振り向きました。

「お姉様、王子殿下たちが案内してくださるそうです。お言葉に甘えましょう」

 エスコート役の父が雲隠れしてしまったので、このままではデイジーは王子殿下たちにエスコートされてしまいそうですものね。
 もちろん私たちも一緒に行きます。

「まあ!」

 私は幸運を得たかのような喜びの表情で、王子殿下たちに礼を述べました。

「王子殿下に直々に案内していただけるなんて、なんて素晴らしいんでしょう。光栄の極みにございます」

「あ、ああ……、リナリア嬢、喜んでもらえて嬉しい」

 歯切れの悪い口調で、シスル王子殿下が私に言いました。
 アイヴィー王子殿下は無言で様子を窺っています。


 ◆


 王子殿下たちに先導され、私たちは水蓮の咲く池のほとりへ行きました。

 バジル様や有象無象の令息たちは、私たちとは少し距離をとりながら後を付いて来ています。

「とても綺麗ですね」

 暗緑色の池の水の上に、水蓮が丸い葉を広げ、淡いピンク色の美しい花をいくつも咲かせています。

 この国では、水蓮の花といえば白色ですが、この水蓮はピンク色です。

「ピンク色の水蓮は初めて見ました」
「外国から取り寄せた品種で、陛下の自慢の水蓮なのです」

 シスル王子殿下が得意気にデイジーに説明をしました。

 私たちは水蓮や庭園の当り障りのない話題で、しばし歓談しました。

 ですが、その歓談の間ずっと黙っていたアイヴィー王子殿下が、意を決したように顔を上げました。

「デイジー嬢……。その……、誤解を解いておきたい……」

 アイヴィー王子殿下がおずおずとデイジーに言いました。

「私は決して浮気をしたわけではない。ダリアは政略結婚の相手で、愛はなかったのだ。浮気ではない」

 『政略結婚で愛はない』というのは、どこかで聞いたセリフです。
 私たちの父が、カトレア夫人をはじめとする愛人たちに挨拶代わりに言っていたセリフですね。

 デイジーも同じことを思ったようで、すっと冷めた顔をしました。

「でもダリアさんは、殿下のご婚約者でいらしたのでしょう?」

 デイジーは凍てついた眼差しでアイヴィー王子殿下を見据えました。
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