かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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65話 王子たちの言い訳

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「ご婚約者を放置して他の女性に言い寄るのは、浮気ではありませんか?」

 デイジーが冷めた目でそう言うと、アイヴィー王子殿下は狼狽えてさらに言い訳を重ねました。

「国王陛下が決めた政略結婚の相手だ。陛下の意向に逆らえず義務で婚約したが、愛はなかった。デイジー、私が本当に愛しているのは君だけだ!」

 またどこかで聞いたセリフが飛び出しました。
 『本当に愛しているのは君だけ』という父のセリフを、カトレア夫人は真に受けてしまい、他にも愛人がいることを知らなかったのですよね。

 私とデイジーは、たびたびカトレア夫人の愚痴を聞いていましたので、父のこれらのセリフはデイジーもよく知るところとなっています。

「アイヴィー王子殿下は、私に会う以前から、他のご令嬢たちとも、特別にとても親しくしていらしたのでしょう?」

「……っ!」

 葡萄酒事件より以前から、ダリアさんたちが令嬢たちを虐げていたことはバジル様たちの調査で明らかになっています。
 ダリアさんたちが標的にした女性たちの大半は、アイヴィー王子殿下たちが言い寄った女性たちだったという事も。

 アイヴィー王子殿下たちの女性遍歴や不誠実な所業の数々は、葡萄酒事件の調査結果と称して、バジル様が嬉々として、私とデイジーに報告してくださいました。
 バジル様にとっては、恋敵を蹴落とす好機でしたものね。

「他のご令嬢たちにも、同じことを言っていたのではありませんか?」

 デイジーが素っ気なく言うと、アイヴィー王子殿下は言葉を詰まらせました。

「デイジー嬢、私は違います!」

 シスル王子殿下がここぞとばかりに言いました。

「私は兄上のように、あちこちの女性に声をかけまくるようなことはしていません! デイジー嬢だけです!」

「シスル王子殿下にもアイリスさんというご婚約者がいらしたではありませんか」
「アイリスは政略結婚の相手です。私が愛しているのは、最初からデイジー嬢だけです」
「ではどうして、アイリスさんと婚約解消をなさらなかったの?」
「国王陛下がお決めになった政略結婚でしたので、解消することが難しかったのです」
「陛下が婚約解消を許可してくださらなかったら、シスル王子殿下は、私を愛人になさるおつもりでしたの?」

「そ、そんなことは……ありません……」

 シスル王子殿下は言葉を少し詰まらせながらも続けました。

「いずれきちんとするつもりで……」

「シスル、嘘を吐くな!」

 アイヴィー王子殿下が横槍を入れました。

「嘘ではありません! いずれきちんと父上に奏上するつもりでした!」

 シスル王子殿下は弁明しましたが、アイヴィー王子殿下はそれを瞬殺しました。

「デイジー嬢、シスルは嘘を吐いている。デイジー嬢の前にもプリペット男爵令嬢と仲良くやっていた」

「……っ!」

 プリペット男爵令嬢というのは、養女になった庶子ですね。

 デイジーを囲っていたアイヴィー王子殿下たち四人は、もれなく平民の血が入った養女に言い寄っていた前科がありました。
 それでダリアさんたちは平民出身の養女への憎悪で共感し合い、団結していたのです。

 アイヴィー王子殿下が言うとおり、シスル王子殿下は嘘を吐いています。

 それにしてもこの兄弟、愚鈍ですね。
 もしシスル王子殿下がデイジーに選ばれたら、それは王家がエンフィールドを得るということなので、アイヴィー王子殿下にとっても利益ですのに。
 足の引っ張り合いをするとは頭が悪い。

 もっとも、王子殿下は二人ともすでにデイジーに嫌われていますので、アイヴィー王子殿下がシスル王子殿下に協力したとしても今更ですが。

「な、何を言うのです、兄上!」
「本当のことだろう」
「兄上は黙っていてください! デイジー嬢、誤解しないでください!」

 王子殿下たちは言い争いを始めました。
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