かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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66話 真実の愛

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「プリペット男爵令嬢はただの友人です。デイジー嬢、信じてください!」
「シスル、この期に及んで嘘を吐くな」

 王子殿下たちはお互いに貶め合いました。

「見目の良い令嬢がいれば片っ端から言い寄っていた兄上にだけは、言われたくありません!」
「何だと! そういうお前こそ……!」

 兄弟喧嘩で醜態を晒す王子殿下たちを前にして、デイジーは我慢の限界に達したのでしょうか。

 デイジーは笑顔の仮面を外すと、語気を荒げて言いました。

「いい加減になさって!」

 デイジーは思い切り不愉快そうに眉を歪めて、王子殿下たちに拒否の言葉を投げつけました。

「もう案内は結構です!」

「……!」
「……っ!」

 王子殿下たちは不意打ちを食らったように、はっとして口を閉じました。

「私がお二人を結婚相手に選ぶことはありません。お引き取りください!」

 デイジーが毅然とした態度で、正面から切り込むようにきっぱりと言うと、王子たちは浮き足立ちました。

「デイジー! 私が本当に愛しているのは君だ! 君だけなんだ!」
「デイジー嬢! 私の貴女への気持ちは真実です! どうか信じてください!」

 王子殿下たちは今度は、必死にデイジーに愛を語り始めました。
 しかし笑顔の仮面をすっかり外してしまったデイジーは、汚物を見るような視線を王子たちに向けました。

「……本当に、私のことが好きなんですかぁ?」

 デイジーは冷め切った顔をして、皮肉っぽい口調で質問しましたが、王子殿下たちは即座に愛を叫びました。

「本当だ! 愛している!」
「愛しています!」

「ふうん……。そんなに私のことを愛しているって言うなら、行動で見せてください。いくら言葉を並べられても信じられませんから。行動で見せて……」

 デイジーはすっと片手を上げて、水蓮の浮かぶ暗緑色の池を指しました。

「私のことを本当に愛しているなら、今すぐ、この池に飛び込んでみせて!」

 目が座っているデイジーにそう言われ、王子殿下たちは面食らった顔をしました。

「は……?」
「え……」

 水蓮の池は鑑賞するには美しい色合いですが。
 濁って淀んでいる暗緑色の水は、手を浸すことすら躊躇する色合いです。
 正直、触りたくないです。
 ましてや川や池に飛び込んだ経験などない、やんごとない身分の方々です。
 戸惑うのは当然のこと。

 ――そのとき。

「デイジー嬢!」

 すこし離れた場所から声が上がりました。
 バジル様です。

「デイジー嬢、見ていてくださぁぁあい!!」

 バジル様はデイジーの視線を受けるや否や、水蓮の池に突進しました。
 そして池の手前で力強く踏み切り、天高く跳躍しました。

「トウッ!!」

 掛け声とともにバジル様は、水蓮の池に飛び込みました。

 ――バッシャーン!!

 盛大な水音がして、水しぶきがあがりました。

「な……!!」
「きゃっ!」

 水音と水しぶきに驚いた周囲の人々が、小さく悲鳴を上げます。

 一度は暗緑色の池の水に沈んだバジル様ですが、すぐに立ち上がりました。

「デイジー嬢、見てくれましたかぁぁ!」

 バジル様は池の中で、びしょ濡れの姿でにっかりと笑いながら、両手をぶんぶん振りながらデイジーに言いました。

「私の! 真実の愛をぉぉっ!」
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