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74話 王子の処遇
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「お姉様、国王陛下はどうして王子殿下たちの味方をしなかったのですか?」
アイヴィー王子殿下とシスル王子殿下は、乱心していたと、国王陛下がお認めになりました。
そのため王子殿下たちは病気療養という名目の謹慎処分を受けることとなりました。
「ダリアさんたちのときには、国王陛下は王子殿下たちの味方をしたのに……」
王子殿下たちの処遇を聞いて、デイジーは不思議そうにそう言いました。
「国王陛下はちゃんと王子殿下たちの味方をしているわよ」
「だったら、どうして?」
「乱心を認めないほうが王子殿下たちに不利になるからよ。乱心していたほうが傷が小さくて済むの」
乱心を認めても、乱心を認めず不良行為を認めても、どちらにせよ王子殿下たちは傷を負い、その傷が次代の国王として不適当とされる弱点となります。
どちらを選んでも悪い結果となります。
ですが、乱心を選んだほうが多少はマシなのです。
前者、乱心を認めた場合。
王位継承者が列を成しているというのに、乱心している不適当な者をあえて即位させれば、貴族たちの反発は必至となります。
「王弟殿下が反乱を起こすのですか?」
「王弟殿下を皆で推すのが妥当ではあるけれど。上位貴族ならみんな王位継承権を一応持っているのよ。私もね」
「え、お姉様も?!」
「百番目くらいだとは思うけれど、私も一応、正統な王位継承者よ。もちろん、お父様や叔父様もよ」
「……お父様も?」
「そうよ。エンフィールド家には過去に王女が降嫁しているから、直系はみんな王位継承権を持っているわ」
大抵の公爵家は、王家の分家だったり王家と縁組をしていたりして、家長たちは悉く王位継承権を持っています。
「……お父様が国王になったら国が滅亡しそう……」
「お父様は絶対に即位できないと思うわ。お父様は何故か女性人気は高いけれど、爵位や官位を持っている男性たちには全く人気が無いんですもの」
「それなら安心ですね」
「お父様と同じように、王子殿下たちは貴族や官僚の支持を失っているから、即位が危ぶまれることになったの」
「やっぱり浮気者って駄目ですね」
乱心した王子殿下が即位するとなれば。
王族や公爵家をはじめとする王位継承権を持つ者たちが反発して内乱となり、内乱となれば現状で味方の少ない現王家は敗北します。
詰みです。
ただし乱心は病です。
それゆえ、王子殿下たちは療養の期間を経て病が完治したとすれば、王位継承者として復帰できる芽があります。
「国王陛下は、王子殿下たちに形だけの療養をさせて、それで病が完治したことにして復帰させるつもりでしょう」
「そういうことですか……」
「乱心を否定して、教会を敵に回すよりは、そのほうがマシなのよ」
後者、乱心を否定して、王子殿下たちの意図的な不良行為を認めた場合。
これは教会を敵に回すことになります。
我が国をはじめとして周辺諸国一帯で信仰されている一神教は、貞節を重んじ、結婚前の不品行を堕落した背教行為としています。
「王子殿下の不品行を、王弟殿下やドラセナ侯爵たちの派閥が教皇庁に訴えるでしょう。そのときは我がエンフィールド家もドラセナ侯爵たちに協力するわ」
明かな背教者が王座につくことを、神の代理人である教皇聖下は認めることが出来ません。
神の教えに反する背教者に王冠を認めたら、教皇聖下は神の代理人としての資質を疑われ地位が危うくなるからです。
教皇庁は陰謀渦巻く伏魔殿です。
諸国で信仰される宗教の頂点である教皇には、国境を超えた絶大な影響力があるため、教皇の地位を巡って激しい権力争いがあります。
教皇聖下が神の教えにふさわしくない行いをすれば、教皇の地位を狙う者たちにすぐに足をすくわれ、教皇の座から引きずり降ろされてしまうでしょう。
だから教皇聖下は背教者には加担できないのです。
ともあれ。
王位は神より授けられるものとされていますので、神の代理人である教皇聖下の承認が得られなければ、その王位は正統性が失われます。
正統性がない王は、王位簒奪者となります。
王家が背教者を強引に即位させれば、背教者が不当に王位簒奪したという大義名分が成り立ってしまいますので、王家に反感を持つ貴族たちは神の名の下に反乱を起こし内乱となるでしょう。
内乱となれば詰みです。
万が一にも王家が内乱に勝利することがあったとしても。
王位に正統性がありませんので、「王位簒奪をした背教者から、敬虔な信徒たちを救う」という大義名分を口実に、他国が我が国を侵略するでしょう。
最悪、教皇庁から悪魔討伐の大義名分を得た周辺諸国の連合軍が我が国に攻め込みます。
詰みです。
そういった背景があるため、国王陛下は苦肉の策として、王子殿下たちの乱心を認めて、療養をしたら完治したとする方向に舵を切ったのでしょう。
王弟殿下やドラセナ侯爵たちが教会の後ろ盾を得たら、勝ち目はなくなると見て、教会を敵に回すことを避けたのです。
結果として、王子たちは療養の名目で謹慎処分となりました。
アイヴィー王子殿下は廃太子にはなりませんでしたが、療養の経過次第では廃太子とすることを国王陛下は公に約束なさったそうです。
水蓮池を荒らした令息たちには、王子殿下たちを救ったという大義名分があったため処罰はありませんでした。
しかし彼らには、池の清掃と水蓮の植え替えなどの奉仕活動が課せられました。
「それでバジル様も、お池のお掃除に行っているらしいわ」
「自業自得ですね……」
池に飛び込んでみせろと言った張本人であるデイジーは、他人事のように言いました。
「デイジーったら。自分が命じたくせに。大物になったものね」
「本当にやるなんて思わないじゃないですか。それにあの人たち、飛び込んだだけじゃなくて大暴れしたんですよ? 滅茶苦茶すぎます」
デイジーは呆れ顔で肩を窄めてみせました。
池に飛び込んだ令息たちは、デイジーの好感度を下げてしまったようです。
アイヴィー王子殿下とシスル王子殿下は、乱心していたと、国王陛下がお認めになりました。
そのため王子殿下たちは病気療養という名目の謹慎処分を受けることとなりました。
「ダリアさんたちのときには、国王陛下は王子殿下たちの味方をしたのに……」
王子殿下たちの処遇を聞いて、デイジーは不思議そうにそう言いました。
「国王陛下はちゃんと王子殿下たちの味方をしているわよ」
「だったら、どうして?」
「乱心を認めないほうが王子殿下たちに不利になるからよ。乱心していたほうが傷が小さくて済むの」
乱心を認めても、乱心を認めず不良行為を認めても、どちらにせよ王子殿下たちは傷を負い、その傷が次代の国王として不適当とされる弱点となります。
どちらを選んでも悪い結果となります。
ですが、乱心を選んだほうが多少はマシなのです。
前者、乱心を認めた場合。
王位継承者が列を成しているというのに、乱心している不適当な者をあえて即位させれば、貴族たちの反発は必至となります。
「王弟殿下が反乱を起こすのですか?」
「王弟殿下を皆で推すのが妥当ではあるけれど。上位貴族ならみんな王位継承権を一応持っているのよ。私もね」
「え、お姉様も?!」
「百番目くらいだとは思うけれど、私も一応、正統な王位継承者よ。もちろん、お父様や叔父様もよ」
「……お父様も?」
「そうよ。エンフィールド家には過去に王女が降嫁しているから、直系はみんな王位継承権を持っているわ」
大抵の公爵家は、王家の分家だったり王家と縁組をしていたりして、家長たちは悉く王位継承権を持っています。
「……お父様が国王になったら国が滅亡しそう……」
「お父様は絶対に即位できないと思うわ。お父様は何故か女性人気は高いけれど、爵位や官位を持っている男性たちには全く人気が無いんですもの」
「それなら安心ですね」
「お父様と同じように、王子殿下たちは貴族や官僚の支持を失っているから、即位が危ぶまれることになったの」
「やっぱり浮気者って駄目ですね」
乱心した王子殿下が即位するとなれば。
王族や公爵家をはじめとする王位継承権を持つ者たちが反発して内乱となり、内乱となれば現状で味方の少ない現王家は敗北します。
詰みです。
ただし乱心は病です。
それゆえ、王子殿下たちは療養の期間を経て病が完治したとすれば、王位継承者として復帰できる芽があります。
「国王陛下は、王子殿下たちに形だけの療養をさせて、それで病が完治したことにして復帰させるつもりでしょう」
「そういうことですか……」
「乱心を否定して、教会を敵に回すよりは、そのほうがマシなのよ」
後者、乱心を否定して、王子殿下たちの意図的な不良行為を認めた場合。
これは教会を敵に回すことになります。
我が国をはじめとして周辺諸国一帯で信仰されている一神教は、貞節を重んじ、結婚前の不品行を堕落した背教行為としています。
「王子殿下の不品行を、王弟殿下やドラセナ侯爵たちの派閥が教皇庁に訴えるでしょう。そのときは我がエンフィールド家もドラセナ侯爵たちに協力するわ」
明かな背教者が王座につくことを、神の代理人である教皇聖下は認めることが出来ません。
神の教えに反する背教者に王冠を認めたら、教皇聖下は神の代理人としての資質を疑われ地位が危うくなるからです。
教皇庁は陰謀渦巻く伏魔殿です。
諸国で信仰される宗教の頂点である教皇には、国境を超えた絶大な影響力があるため、教皇の地位を巡って激しい権力争いがあります。
教皇聖下が神の教えにふさわしくない行いをすれば、教皇の地位を狙う者たちにすぐに足をすくわれ、教皇の座から引きずり降ろされてしまうでしょう。
だから教皇聖下は背教者には加担できないのです。
ともあれ。
王位は神より授けられるものとされていますので、神の代理人である教皇聖下の承認が得られなければ、その王位は正統性が失われます。
正統性がない王は、王位簒奪者となります。
王家が背教者を強引に即位させれば、背教者が不当に王位簒奪したという大義名分が成り立ってしまいますので、王家に反感を持つ貴族たちは神の名の下に反乱を起こし内乱となるでしょう。
内乱となれば詰みです。
万が一にも王家が内乱に勝利することがあったとしても。
王位に正統性がありませんので、「王位簒奪をした背教者から、敬虔な信徒たちを救う」という大義名分を口実に、他国が我が国を侵略するでしょう。
最悪、教皇庁から悪魔討伐の大義名分を得た周辺諸国の連合軍が我が国に攻め込みます。
詰みです。
そういった背景があるため、国王陛下は苦肉の策として、王子殿下たちの乱心を認めて、療養をしたら完治したとする方向に舵を切ったのでしょう。
王弟殿下やドラセナ侯爵たちが教会の後ろ盾を得たら、勝ち目はなくなると見て、教会を敵に回すことを避けたのです。
結果として、王子たちは療養の名目で謹慎処分となりました。
アイヴィー王子殿下は廃太子にはなりませんでしたが、療養の経過次第では廃太子とすることを国王陛下は公に約束なさったそうです。
水蓮池を荒らした令息たちには、王子殿下たちを救ったという大義名分があったため処罰はありませんでした。
しかし彼らには、池の清掃と水蓮の植え替えなどの奉仕活動が課せられました。
「それでバジル様も、お池のお掃除に行っているらしいわ」
「自業自得ですね……」
池に飛び込んでみせろと言った張本人であるデイジーは、他人事のように言いました。
「デイジーったら。自分が命じたくせに。大物になったものね」
「本当にやるなんて思わないじゃないですか。それにあの人たち、飛び込んだだけじゃなくて大暴れしたんですよ? 滅茶苦茶すぎます」
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