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第6章 アナザージャパン編
第79話 尋問2
しおりを挟む夜、辺りは静まり返っており、人の気配はない。山の麓である辺鄙な場所に、大型のトラックが急停止した。
荷台からはぞろぞろと迷彩服を着込んだ男達から降りてきてすぐに走り出していく。薄暗い森の中をひた走り、やがて大きな神社の裏手に出ると、男達はすぐ横の地面を掘り始めた。
一人、また一人とその開けた穴に入っていく。そして、男たちは神器が設置されている洞窟へ侵入するのであった。
リーダーと思わしき男が手を上に挙げた。すると、男達は銃を取り出し準備を始める。拳銃だけでなく、物々しいほどに大型のライフルや手榴弾まで用意してある。対人戦というより、もっと強力なモノと戦うための装備だ。
そして、突入が始まった。男たちがスピードを上げて走り抜けていく。神器が設置されている場所にあと少しというとき、辺りに漂う黒い霧に気づいた、
「隊長! 霧が立ち込めています!」
「霧だと? 魔物が出てくるやもしれん。ライフル用意!」
隊員たちが素早く隊列を組み直し、ライフルを次々に構えていく。
だが、黒い霧はあっという間に隊員たちを取り囲んでしまった。
「隊長! 黒い霧がっ……」
やがて、黒い霧が晴れると突入した部隊は全て消え去っているのであった。
*
「では、起こしますね。今日はよろしくお願いしますよ! 水竜さん!」
俺は前回の尋問で相手をヤッてしまいそうになった大牙ではなく、水竜にお願いすることにした。
水竜は永年に渡り、黄泉の竜族をまとめていたリーダーだ。彼なら尋問に失敗することはないだろうと、内心期待しての採用だ。
もちろん、元の姿では大きすぎるので、竜の頭のまま、体は人間サイズになってもらっている。
よし、準備は完了した。俺は隊長らしき人物にバケツで水をかぶせた。
「ふはっ! はっ、こ、ここは……、どこだ?」
隊長は辺りを見回し、俺と水竜の存在に気づいた。
「お、お前らは何者なんだ……」
「俺はね、この黄泉の王。君たちに分かりやすく言う所の閻魔大王さ。こちらは竜族の王、水竜さんにお越しいただいた」
隊長の目が見開かれた。
「何が目的なんだ?」
隊長は俺を睨みつけてくる。やれやれ、素直にしゃべってくれるだけなら楽なんだがねぇ。そんな反抗的な目を向けられたら、すぐに水竜さんの出番がきちゃうじゃないか……。
「君達の雇い主は誰なのか。教えて欲しくてね」
「そんなのは知らん! 自分は上からの命令に従っただけだ!」
「ふぅ、全く強情だねぇ。仕方がない。水竜さん。お願いしますよ」
「あぁ、任せておけ」
水竜は巨大なサーベルを取り出した。刃渡りは優に十センチを超えており、ギラギラと光を反射している。
思わず、ゾクッとするほどの見事な剣だ。
「おい、貴様。我等が主様の質問に答えねば、どうなるか? 身を持って知りたいのか?」
水竜さんはサーベルの刃を首筋に当てほんの僅かだけ引いた。すると、血がサーベルを伝いポタリと落ちる。
「くっ、この程度の脅しが自分に通用するとでも思っているのか? やれるものならやってみろ! 貴様らに教えるくらいなら死んだほうがましだ!」
隊長は怒り叫ぶ。
「よかろう」
水竜さんはサーベルをヒュン! と振った。
隊長の首がゴロリ、と落ちる。
「え? す、水竜さん?」
「むっ! こんなに脆いのか! いくら何でも軟弱すぎる! 竜族の子供ですら三発位は耐えるのだぞ!」
いやいやいや、竜族と比べたらそうでしょうけど! ってか、子供になんてことしてるのよ? アンタは!
「まぁ、まだ大丈夫です。リザレクション!」
隊長の頭が時間を巻き戻したかのように元に戻った。
「ぬ? こ、これは? 自分は死んだはずでは……」
「まったく強情で困りますねぇ。仕方がない、この光景を見てもそう言っていられますかねえ?」
俺がパチンッと指を鳴らすと、黒い霧が現れ、映像が写し出された。
「なっ、き、貴様ぁ~~っ!」
そこに写っていたのは彼の部下たち。手足を鎖で縛られ、身動きが取れない状態で座らされており、首筋には水竜の部下たちが、サーベルを当てているのだった。
「クックック、これを見てもしゃべらないつもりですかねえ? アナタの返答次第では皆さんの首が危なくなってしまうかも知れませんよ?」
我ながら、なんて名演技なんだ! これでこの隊長も素直になってくれるはず。
しかし、思いもよらない展開が待っていた。
「隊長ッ! 俺達はどうなってもいい! 機密だけは、機密だけは漏らさないでくれッ!」
あっ、オイ! そんな展開期待してないぞ?! ちょっと冷静になれよ!
「さとる、すまないッ!」
隊長は目をつぶり、涙を流し始める。
「自分は絶対に漏らさないぞ! 拷問でもなんでもするがいいッ!」
隊長の決意に部下達が騒ぎ出す。
「「「隊長ッ!!!」」」
うるさく喚き散らす隊員たちに竜族たちが苛立つ。
「ええぃ、静かにしろっ! このっ!」
竜族が隊員を殴ってしまう。隊員は血を口からタラリと流しながら、
「ヤるならとっととやりやがれ! このトカゲ頭がっ!」
この一言が決定的だったようだ。竜族たちは怒り狂い、サーベルで隊員たちの首を刎ねてしまった。
「うおおい?!」
何してくれてるの?! 台本にないだろうが、そんなの!
「みんなーーーッ!!! うぅっ、くそぉ!」
隊長は涙を流しながら俯いてしまった。
黒い霧をすぐにけし、すぐにエリアリザレクションで隊員たちを生き返らせた。
くっ、これじゃ隊長が口を割らないじゃないか!
「さぁ、拷問でもなんでもするがいい! だが、口だけは何があっても割らんぞ!」
隊長は決意の眼で俺を睨んできた。
何もかも上手くいかない。くっ……、俺にも怒りが溜まってしまい、握りこぶしから血がしたたり落ちる。そして、いらいらがどんどん溜まってきた。
「ちっくしょーーーっっっ!!! なんでこうなるんだ!!!」
思わず叫びながら誤って魔力を全開放してしまった。
辺りはただならぬ魔力が満ち溢れた。そのあまりの濃密さに、水竜ですら正気を保てず、気絶してしまったのだ!
隊長も隊員たちも全て気絶してしまう。
「あ、こりゃもうだめだ。テイクツーいくしかないな……」
俺は仕方なくこの場にいる全員の記憶を消し、最初からやり直すハメになるのであった。
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