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第9章 勇者RENの冒険

第164話 一回戦第六試合 ダークエルフ族代表 マリーン VS 天使族代表 ルシフェル

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「さぁ、荒れた舞台が元に戻ってまいりました。それにしても本日の第五試合いきなりの白熱した対決になりましたね、ローファンさん!」

「えぇ、キュイジーヌの変身、バッジの大盾、そしてヘルフレアとそれを切り裂いたバッジの剣! いやぁ、見どころ満載でした!」

「さて、次の試合ですが、いよいよ! 登場ですね!」

「はい、我らが天使族の代表、ルシフェル先輩の登場です。これには会場も大盛り上がり間違いないでしょう」

「お? 準備が整ったようです」



「東の方角! 天使族代表! ルシフェルッッッ!!!」

 割れんばかりの歓声が舞台を包み込む。歓声だけではない。観客がルシフェルの歩く足に合わせて足踏みを鳴らし、服がビリビリと揺れるような低音が会場中から溢れる。

「凄まじい声援です!!! 凄まじい轟音です!!! これほどの歓声は初めてですね!」

「もちろんです! 今大会で圧倒的一番人気ですよ! 観客の心が一つになっていますね!」

 花道に登場した男は細長く整った顔つきだった。そして背中には折りたたまれた白い羽根。手には異様に長い剣を持ってゆっくりと歩いている。

 ルシフェルは笑顔で天使たちの歓声に応えるよう手を振った。すうると女性ファンから黄色い声援が会場に溢れ出る。

「さ、さすがの人気ですね。それにしてもローファンさん、あのルシフェルの持っている剣ですが、随分と長いですよね」

「えぇ、実は一つ、情報を入手したんですが、ルシフェル先輩がとある神に認められた証としてあの剣を授かったそうなんですよ! ですから、あの剣は地上のモノではなく、神の創りし剣、神剣ということですね」

「おおっ! そうなんですか? ということは切れ味も相当なものなんでしょうか?」

「まず間違いないでしょうね。相手がどれだけあの剣に対抗できるのか? 今から楽しみです」

「ルシフェルが舞台に上がりました! では相手の入場のようです」



「西の方角! ダークエルフ代表っ! マリーン!!!」

「さぁ、登場したのはダークエルフのマリーンですね」

「彼女の弓の腕前は以前にもご説明した通りですね。視力は30を超えると言われており、1キロ先の獲物を弓で射るその腕前は、同じ弓を主武器とする我々天使族を遥かに上回っています!」

「その弓ということですが、1対1の対戦で使用するには少々キツイ装備なはずです。何しろ、接近されてしまうと攻撃手段がなくなってしまう、という欠点があるからです。ですが、御覧ください! 彼女の装備は弓です!!! 腰に短刀の一本も持ち合わせていません!!!」

「弓の扱いに相当な自身があるのでしょうね。普通に考えたら接近戦用の装備の一つくらいは持ってきそうなものですからねぇ」

「果たして、彼女の実力やいかに!」

「ちなみに、ルシフェル先輩も恐らく弓は持っているはずです。この試合に持ってきているかは微妙ですが……、先輩は弓の腕前は天使界一でしたから、どこまでダークエルフについていけるかも楽しみですね!」

「さぁ、両者が入場しましたッ! 試合前から両者の睨み合いが凄いッッ!!!」



   ***



「一回戦第六試合! 天使族代表! ルシフェル! VS ダークエルフ族代表! マリーン! レディ…………、ゴーーーーーッッッ!!!」

 先に仕掛けたのはマリーンだった。その背中に背負っていた大きな弓を引き、矢を射出する。

 その動きはとてもではないが目で追える速度を大幅に超えていた。

「まず動き出したのはマリーン! 矢を一瞬にして放ちましたッ! ですが、ルシフェルは動かないッ!」

 キンッッ! キンッキンッ!!

 響いたのは矢を弾く音。だが、ルシフェルに動いた気配はなかった。

「おっと? ルシフェルは全く動きませんが何やら矢を弾いたようですね」

「うぅむ……、一体何でしょうかね? 我々の目にはただ矢が弾かれた所しかわかりませんでしたね。ただ、マリーンの弓の腕はたしかですね。この一瞬で3発も放っていたんですから!」

 マリーンはいぶかしんだ。

 どういうことだ? 私の矢を避けもしないのに弾かれたとは……、結界か? いや、アイツにそんな術式を使った気配はない……。

 マリーンは距離を取るため、大きく後退し、弓を高速で引く。

 だが……、

 キンキンキンッッッ!!!

 またしても矢が弾かれる。だが、ルシフェルに動いた気配は感じられない。

 ならば……、これならどうだッ!

「おっとマリーンの矢が炎を帯びましたね!」

「魔法を矢に込めたんですね! 通常の矢が弾かれていましたから、いい判断だと思います。

「これでも喰らいなッ!」

 マリーンの放った矢はやはり、ルシフェルの手前で弾かれてしまった。だが、その矢から炎が落ち、ルシフェルを囲むように炎が上がる。

「ルシフェルが炎に包まれましたーーッ! んっ? こ、これはッ! ほ、炎が突然消えましたよ?」

「一体、どんな手を使って消しているんでしょうかね? ちょっと私にも見えませんでした」

 マリーナはそのずば抜けた視力でルシフェルの行動全てを観察していた。

 ルシフェルはその場から一歩も動いてはいない。魔法も使ってはいない。ただ、手に持った剣を振ったのだ。

 それも誰の目にも止まらぬ速さで。その剣を鞘から抜くことなく振り回し、矢を叩き落す。そして周りを囲んだ炎すら剣を振り回す勢いで消し飛ばしてしまったのだ。

 背中がいやに冷たく感じる。

「この化け物め……」

 マリーナは舌打ちした。

 この化け物を倒すには……、出し惜しみしてる場合じゃないってことね……。

 矢に氷の魔法と風の魔法を付与し、マリーナはさらに攻撃を仕掛けるのであった。


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