【完】海賊王と竜の瞳を持つ皇女

hiro

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第1章 生誕祭

第5話 脱走

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 竜のように、外の世界へ憧れるルーチェ。

 15歳になったいまでも、このお伽話が大好きだ。



(やっぱり、正攻法はダメか)


 今日だけは、外に出たかった。
 
 年に数えるほどしかない、城の警備が確実に薄くなる、生誕祭の日。

 自分の婚姻年齢に達する前に、どうしても出たかった。


 15歳になった、この日に。



 ルーチェは洋服棚を開くと、横の壁を押した。
 
 すると、板が外れて隠し空間が現れた。

 中には茶色の大きなマントと靴がしまわれていた。

 事前に用意しておいた、脱走用の荷物。


 荷物を抱え込むと、部屋の欄干からこっそり顔を出した。

 あたりを見渡し、誰もいないことを確認する。

(こんなに賑やかなんだから、気づくはずがないわね)

 窓まで伸びている木にひょいっと飛び乗ると、器用に服をたくしあげながら地上に降り立った。


 まるで羽が生えているように、軽やかな着地。


 ルーチェは静かな足取りで庭を抜け、裏の出入口へとまわった。



 お祭りで警備が手薄になっているため、出入口の護衛は2人だけ。

 護衛から死角になる木に隠れながら、城壁の隙間に手を添えた。
 
 城壁をのぼれそうなことを確認すると、護衛に気づかれぬよう、荷物を城外へと投げ捨てた。

 一歩ずつ、静かに城壁をのぼっていく。

 護衛に見つからないように、息をひそめながら……。



 のぼりきると、街が一望出来るほど高い城壁。

 高さに臆することなく、ルーチェはひょいっと飛び降りた。


(よし、成功……!)


 ルーチェは大きなマントで全身を覆い、金色の髪を隠した。

(私だって、お伽話の竜のように……幸せは自分でつかんでやるんだから!)

 城壁に背を向けると、その場から逃げるように走り出した。
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