【完】海賊王と竜の瞳を持つ皇女

hiro

文字の大きさ
29 / 82
第5章

第28話 お伽話の続き

しおりを挟む




 2人の人間から愛を教わった竜。
 しだいに竜は、愛には種類があることに気づく。

(この愛とは、なんなのだろうか……)

 竜は考えた。

 銀髪の男からは、母性にも似た、狂おしいほどの愛を。
 黒髪の男からは、切なさにも似た、胸を焦がすような愛を。

 それぞれの人間から、違う形の愛をもらった。


 竜が愛した2人の人間。

 この2つの愛も、違う種類なのだと気づく。


 銀髪の男には、家族愛に似た、安心感のある愛を。
 黒髪の男には、番いのような、自分のすべてを捧げる愛を。

 それぞれの人間に、抱いている愛の形。


 そうか。
 私は、黒髪の男を《愛している》……
 この身を捧げるほどの愛を、黒髪の男に抱いている……


 愛の違いに気がついた竜は、黒髪の男にそのことを伝えた。
 黒髪の男もまた、竜に対して、すべてを捧げるほどの愛を抱いていた。


 2人はその夜、愛を確かめ合った。



 その事実を知った銀髪の男は、怒り狂った。
 
 竜の能力である《神の栄光》を封じ、《青い石》を触った者だけに幸せを与えるようにしていた2人の人間。
 銀髪の男は、竜に渡していた《青い石》を奪いとると、涙を流して叫んだ。

『裏切り者たちに、この《青い石》は触らせない! お前たちだけが幸せになるなど、許さぬ!』

 裏切られた悲しさ。
 自分には向けられなかった、愛。

 銀髪の男も、確かに竜を愛していたというのに……。


 銀髪の男は、そうだ、と呟く。

『《神の栄光》を、すべて封じ込めてしまえばよい。竜以外のものが《青い石》に触れたとき、災いが起きればよい』

 銀髪の男は、にぃっと笑った。
 そして青い石を持ったまま、走り去っていった。


 残された、黒髪の男と竜。
 《神の栄光》を封じ込められた《青い石》を奪われてしまった。

 竜は嘆いた。

 黒髪の男に、幸せを与えたかった。
 黒髪の男と、幸せに生きたかった。

 《神の栄光》がない竜には、それが叶わない。


 黒髪の男は、笑った。

『お前がいるだけで、これ以上になく幸せだ。《神の栄光》など、いらぬ』

 
 竜は、涙を流した。
 そして、愛しい気持ちから、涙が溢れることを知った。


 黒髪の男が口を開いた。

『これをやろう』

 竜の耳にそっと触れると、ちりんと音が鳴った。

『これは?』

『《青い石》を削ったときの欠片でつくった、耳飾りだ。俺が、お前のためだけにつくったものだ。これがあれば、俺たちは幸せになれる』


 竜は耳飾りにそっと触れた。

 誰かを幸せにするのではない。
 2人で幸せになる。


 それから黒髪の男と竜は、幸せな日々を送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結】何度でもやり直しましょう。愛しい人と共に送れる人生を。

かずえ
恋愛
入学式の日に前回の人生を思い出す。短いけれど、幸せな一生だった。もう一度この気持ちを味わえるなんて、素晴らしいと大喜び。けれど、また同じことを繰り返している訳ではないようで……?

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん
恋愛
「これが私ということですか? まさか冗談ですよね」 レイン様との初めての夜。 私は鏡の中の自分にかわいた笑い声をあげた。 真っ白なフワフワの身体。 丸い虹色の瞳。 なぜか私はお父様からいただいたぬいぐるみの姿になっていたからだ。 「何を企んでいるんだ。魔法でぬいぐるみになって、俺の寝首をかくつもりなのか」 レイン様は凍り付いた瞳を私にむけた。 レイン様の正式な名前はレイン・ファン・バルバドで、バルバド帝国の若き皇帝陛下でもある。 冷酷な事でしられるレイン様の二つ名は【血の雨】という。 そんな美しくも恐ろしい皇帝陛下にウサギ村の貧乏令嬢である 従姉妹に婚約者を奪われた私はひょんな事から嫁ぐことになった。 私はお金の為に。 陛下は政治的な立場をまもるための契約結婚だったけれど。 「皇妃がウサギになった事がばれるときっと大騒ぎになるだろう。 しばらくは俺達だけの秘密にしておくんだ」 そう言ってレイン様は私をポショットにいれて連れ歩く事にした。 貴族会議や公務にともなわれた私がポショットの中から見たのは、 レイン様の孤独や思いがけない温かさだった。 そしていつしかぬいぐるみの分際で、皇帝陛下を愛し始めていたのだ。 レイン様のお役に立ちたい。 その一心で聖獣ラビと契約を交わし不思議な魔法を使えるようにも なった。 なのにレイン様の反勢力派に捕らえられてしまう。 私はレイン様の弱みになりたくなかった。 だから彼らと一緒にこの世から消えるつもりだったのに。 騎士達を率いたレイン様が反勢力のアジトへ突入してきたのだ。 これは私、キャンディラビットがぬいぐるみになって冷酷皇帝陛下レイン様に溺愛される、ちょっと不思議なお話です。 (土曜日曜の二日間で一気に完結まで更新いたしますので、安心してお楽しみください。 よろしくお願いいたします)

処理中です...