【完】海賊王と竜の瞳を持つ皇女

hiro

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第9章

第66話 血に染まる

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「なに、……してる」

 ジンは重い口を開く。
 問いかけに、ルーチェは眉をひそめた。


「ジンこそ……なんで、ここに……?」



 現実を、受け入れられない。
 長い沈黙。


 あぁ、そうか。
 ルーチェはひとつの仮説をたてた。


 ジンたちが秘密にされていた、《例の件》……
 それがいま、ここにいるということは……


(ルバーニャ国にきたのは、《王家の宝玉》が目的……だったのね……)



 ルーチェには教えられなかった話。
 昨夜、部屋で話したときに「明日は用事がある」といっていたもの。


 耳飾りが、まるで嘲笑うかのように青く輝きを増した。



(……やっぱり、そばにいちゃいけなかったんだね……)



 落胆するルーチェの背から、バタバタと足音が近づく。
 あらわれたのは、船員の1人だった。


 見知った顔の船員だったが、ルーチェの存在に気がつかなかった。

 船員は、まっすぐにジンを見る。



「船長! 王宮の衛兵たちが集まってきたっス。あと、例のものは見つからねぇっス!」

「他のやつらは?」

「何人かは先に撤退させました! 一応、誰も捕まってません!」

「そうか」



 船員の無事を確認すると、ほっと息をつく。

 先代船長がこの王宮にいることを知っていたジンは、《王家の宝玉》をターゲットに選んだ。



 先代船長への復讐。

 自分を捨てた先代船長の、大切な場所を壊すために。



 私利私欲的な目的だというのに、理由もきかずについてきてくれた船員たち。
 彼らは理由もなく、手を貸してくれた。




「って、あれ? 船長、船長がいるっスよ!」


 先代船長の存在に気がついた船員。
 その姿に、レンは口の端をあげた。

 船員は目を丸くして、ジンとレンを見比べた。


 ジンは深く息を吐くと、レンに向けていた短剣を鞘にしまった。



「全員撤退だ」

「は、はい」


 踵を返すと、レンに背を向けた。
 ふり返ることなく、足早に逃げる。


 後ろ髪を引かれるような気持ちになった船員は、何度もレンをふり返りながら、ジンのあとをついていった。




 その様子を見ていたルーチェは、はっと我に返り、レンに駆け寄った。



「レン、大丈夫!?」


 声をかけたが、レンは膝をついたまま立ちあがろうとしない。

 肩に触れると……



 ぬるっ。



 あたたかいものが指先に触れる。

 肩についていたのは真っ赤な液体。



 血。



 レンの服から、じんわりと滲む血。
 この血は、レンの体から出たもの。



「……ルーチェ、さ……ま」


 かすむ声が、ルーチェの名を呼ぶ。
 流れ続ける血を見て、その現実に蒼褪めていく。


 レンが……
 大量の血を、流している……。



「……っ」



 ルーチェは血のついた手で、自分の頬を覆った。




「い、……いやぁぁぁーーっっ!」




 悲痛な叫びが闇夜に響き渡る。

 悲しみの声は、ジンたちのもとまで届いたが、決してふり返ることはなかった。
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