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1章 コスで生活

16話 俺の気持ち

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「マスター!ベーコン炒めお願いします、クレミルはオークのキャベツ巻きをお願い」


俺の名前はジュロスだと、あれほど言ってるのに家のウエイトレスは一向に呼んでくれない、まぁそれは良いんだ、新人とあまりしゃべらない俺を思いやり、指示を別々に出してくれるやさしい奴だからな、だがあいつはあんな格好をしてても男だ。
エリナが店で転びそうになった時それを知った、正直驚いたよ、そしてショックだった、俺はあいつに惚れていたんだ、それからしばらくそっけない対応をしてしまった、だがあいつはいつも通り接してきた、あの事はなかった事なんじゃないかって思うくらいにな。
だがそれは本当におきたことだった、仕事が終わったある日、あいつの本名を教えてもらった、ほんとに男なんだなと思ったが、女性になったと裸を見せて来たんだ、それは確かに女性のそれで、どうしていいのか分からなくなったよ、変わったユニークスキルを持っていて変えれるとか、ダンジョンを持っていて商品を手に入れてると話してきたんだ。
でもな、そんなのはどうでも良くなっていた、俺はあいつの笑顔に惚れたんだ、男だろうなんだろうとそれは変わらない、それからは気にせずに喋れるようになった。
俺はあいつの笑顔が好きなんだよ。


「キャベツ巻きあがったよ」

「は~い、マスターは出来ましたか?」


エリナに返事をして料理を渡した、そのときの笑顔は輝いていた、俺は顔が熱くなるのをとめられなかったよ、そう俺が好きなのはあの笑顔だ働いてるあいつが好きなんだ、ダンジョンは危険だから行くなと忠告した事も仕方ない事だ、しかしあいつは絶対に必要だからそれは出来ないと断ってきた、それも悲しそうな顔をしてな、その顔は今でも忘れない。
孤児院の為、冒険者や俺の店の為、自分の為にもダンジョン探索は必要だと説得されてしまった、俺はそれを聞きそれ以上は言えなかった、女の格好をするほどだ、よほどの訳があるんだろう、今はほんとに女だが、俺も何かしてやりたいと思い、ビールの代金だけでも上げようと提案した、だが逆に叱られてしまった、商売人としてそんな事してはダメだすごい剣幕だった、あの時は怖かったなぁ。


「ほらあれだ、今冒険者を倒してる、あんな感じに怖かった」


リュウをナンパする奴は絶えないなとニヤついた、今のあいつは姿だけじゃなく体も女だ。
それを聞いて俺はまた悩んでいる、完全な女となっているってことは、俺の思いを伝えても良いだろうと思うんだ、勇気を出して告白するべきだろうか。


「まぁ・・・あいつはそんなこと気にもしてない、冒険者たちを投げ飛ばしてるくらいだからな・・・ほんと悩むぞ」


あいつの元気な姿を見てるのは好きだ、困った顔も笑った顔も好きで結局の所、俺はあいつの全部が好きなんだよ、だからこのままで行くことにした、見てるだけで幸せだよ。
新人が加わり半月が過ぎ、なかなか使えるようになって来た、あいつを見てる余裕も出来たんだ、これ以上を求めたらバチがあたりそうだ。


「ほう、ワインか」


そんな風に答えを出した日、エリナが仕事終わりにみんなで乾杯しようと集めたんだ、新しい酒のワインの試飲と、それを店に出す目処がたった祝いだそうだ、またダンジョンで無理をしたんじゃないかと心配になった。
みんなでグラスに入れて乾杯したんだが、すばらしく美味かった、ビールもそうだがこのワインは美味すぎる、新人たちは喜んで飲んていた、だが解散した後、俺は言わずにはいられなかったよ。


「リュウ!危険だと言っただろ、今のままで良いじゃないか」

「マスター・・・実は、新しいダンジョンにいけるようになったんですよ、それに孤児院に新しい子供が迷い込んできました、その子たちの為にも僕はダンジョンに入り続けます」


楽しいから行くんだとキラキラした目で言ってきた、顔も近いしなんだか良い匂いもしてきた、分かったから離れろと肩を押したが、すごく華奢で焦った、これで俺よりも強くてダンジョンに入ってるとか信じられない。
しかしこいつの強さは知っている、スチールの冒険者なんて10人でも相手にならない、だから最強のウエイトレスとか、裏の2つ名が広まっている、普通は怒りのウエイトレスだな。


「だが心配だ、どうしてそんなに自信を持てる、一人では危険だろう」


俺はどうしても気になってしまった、強いのは知っている、しかし一人では危険だ、そんな冒険者を嫌って程見て来た、だから止めてほしい、リュウを失いたくないんだよ。
リュウはそれを聞き、性別を変えてるユニークスキルの詳細を話してくれた、それは世間では親にも言わないモノだ、普通のスキルとは重要性が違う、希少な物なら国に隔離させるほどの事だ。
そしてリュウのユニークスキルはそれに当たる、ダンジョンを作れるだけでもすごいのに、こいつはそれ以上に強さがあげられるんだ、俺の店で扱ってるビールは、既に大量に在庫を有しているらしい。


「だからあんな安い値段で提供して来たのか?」

「はい、それに安い方が世間に受け入れやすいでしょ、新しい物って売れない事もありますから」


確かにそうだ、だから俺も安くしている、本来エールと同じ値段の銅貨10枚なんてありえない味だ、新しいワインもどうしようか悩んでいる、普通のワインは1杯銅貨15枚、あの味なら倍の30枚でも飲む奴はいる、だが俺の店では高いと思われ売れ行きは低いだろう。


「独占できるのに勿体ないでしょ?だから僕はダンジョンに入るんです、それにですねマスター・・・僕は楽しいんですよ」

「それは分かる、いつも楽しいと聞いてるからな、だが危険なのは変わらない、安全策はあるのか?」


魔法やスキルを使えれば緊急離脱などの救済魔法が使えるかもしれない、リュウの話では出入りに使う門を何処にでも出現させることが出来るらしい、最低ラインは超えているようだが心配だ、だから俺は約束をした、もし俺の店に来ないことがあれば、俺は孤児院に突入する。
それを聞いたリュウは戸惑っているよ、こんなリュウを見るのは初めてだ、少し可愛いと思ってしまった、しかし次の言葉に俺の方が焦ってしまったんだ。


「そうならないように全力を出します、ダンジョンの事はマスターしか知らないんですから困ります」


そうなんだ、ユニークスキルであるダンジョンは俺しか知らない、しかもステータス変化のコスプレというユニークスキルもだ、孤児院の管理人であるササピーも知らないとか言ってきた、それは俺を特別だと言ってくれたとすごく興奮したよ。
しかし直ぐに我に返った、当のリュウはそんな風に思っていない、それは顔を見れば分かるんだ、だがしかし考えずにはいられない、とにかく落ち着くことにしたよ、そして了承してその場は解散したんだ。


「まったくあいつは」


解散して、俺は自分の部屋であのワインを飲んでいた、残っていたからってリュウがくれたんだ、美味くて困る。
ビールもそうだ、だから俺の店は繁盛した、全部あいつのおかげなんだよ、だから反対するばかりでなく応援をしてやりたい。


「そうだ、あいつが俺を信じてユニークスキルを教えたように、俺はあいつを信じ応援してやればいい、他の奴には出来ない事だ」


あいつの特別な者になったとか傲慢な事は言わない、ただ信じてやれば良いんだ、ワインを一気飲みして飲み干し覚悟を決めた、これからは反対はしない、存分にやれと言ってやる。


「しかし取引値は気に入らないな、良い物はそれなりの値段が似合う」


リュウとの取引値は1樽20メリーだ、銅貨20枚なんて安すぎだ、それ位ダンジョンでは手に入るから余裕だと言いたいんだろう、だが安すぎもダメだ、今は俺の店も繁盛して金には余裕がある、普通の値段でも問題はない。


「あいつは拒否してくるだろうな、まぁそれも会話の一環ではあるが・・・クレミルと少し話て見るか」


俺もあいつの為に何かしたくなった、顔が怖いと怯えられる、半月一緒の新人たちなら少しは耐性があるだろう、相談するならそこから始めてみるのが良いだろう。
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