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3章 商品チート

53話 標的は聖法王国

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「それで、どうしてリイルが寝込んだんだ?」


カリーナたちが心配してワタシの所に来たのだけど、商会で起きていた事を説明すると、立ち上がって聖女を殺すとか言い出したわ。
ワタシは直ぐに止めて、それはリケイルの仕事だと教えたのよ。


「どうしてだよカーリー」
「カリーナ、リケイルも同じくらい怒っていて、命を取る以上に懲らしめるつもりなのよ」
「それは分かるけどよ、倒れるくらい悩んでるんだぜ、心配じゃねぇか」
「そうね、ダンジョンで無我夢中で戦ってるリケイルは、鬼気迫ってる感じだったわ」


死に物狂いでモンスターと戦っている感じで、80階までが限界と思っていたのに、その勢いで100階のボスまで倒したの。
その怒りがどれほどなのか、その結果が物語っていて、もう止められないと伝えたの。


「一人で100階かよ」
「ええ・・・ボロボロになっても突き進み、リケイルはそれを成したの」


とても見ていられなかったけど、ワタシは見守る事を約束したしリケイルを信じていたの。
倒れた時、リケイルはとてもさわやかな表情をしていて、迷いは無くなった感じだったのよ。


「だからね、きっと起きたらいつもの彼に戻っているわ」
「それならいいけどよ、そいつらをヤル時はオレたちも行くからな」
「当然でしょ、これはリイル商会の力を見せつける戦いなのよ」
「そうか、それを聞いて安心したぜ」


カリーナたちはやる気になってくれて、商会が統一しているのが分かったわ。
クラーシュたちが戻ってきたら、即座に動いて貰うけど、聖法王国には落とし前を付けてもらうわ。


「でも、策はあるのかしら?」
「ルーシェ、今決まっている作戦は、冒険者と商会で乗り込む事よ」
「本当に全面戦争ですね」
「ええ・・・だけど、リケイルはあの子たちを助けたいみたいだから、それだけじゃ足りないのよ」


彼らは自分の意思でここを抜けたわけだし、戻って来るとは思えないけど、罠に嵌って後悔していれば結果は変わります。
本当は、そんな子たちは放っておくのが良いのだけど、今回の子たちが罠に掛かった責任が自分にあると感じてしまった。


「なるほどな、リーダンでの事が蘇る訳だな」
「そう言う事よカリーナ・・・だから、なんとしてでも救いたいのよ」
「まったく、不器用な奴だな」


そんな彼が好きで商会にいる訳だけど、そんな彼だからこそ、みんなが慕ってついて行くのよ。
強くて優しいのにちょっと頼りない彼は、支えてあげたくなって放っておけないわ。


「だからね、今は寝かせてあげましょ」
「分かったよ、起きたら聞かせてもらおうぜ」
「でも、しばらく起きない」
「そうね、アミラの言う通り、3日は寝込んでしまうと思うわ」


それだけ疲労していて、そのまま死んじゃうかもと心配だった。
彼との子供もまだなのに、彼が倒れた時は心臓が止まるかと思ったのよ。


「って事は、クラーシュたちが戻って来てからって事だな」
「そう言う事だけど、その間も出来る事はあるわ」
「それって、ダンジョンに行くための準備か?」
「ええ、リケイルの装備がボロボロだから、直ぐに修理をお願いね」


職人たちにお願いする様カリーナたちに指示を出し、ワタシはリケイルのおでこに乗せていたタオルを冷やし直したの。
ボロボロの彼を見たのは、前のPTを入れても初めてで、ダンジョンでの戦いは本当に怖かったわ。


「途中で止めたら彼に嫌われるからって、ワタシは何も言えなかったけど、こんな結果になってしまったわ」


ボロボロの彼を見て、こんな状態まで追い込んだ聖法王国に怒りが湧いてきます。
何も出来なかった自分にも怒りを覚えたけど、それ以上に許せなかったのよ。


「その為にも、ワタシも同じくらい追い込む必要があるかしらね」


ワタシは魔法士だから、その為には魔力を練らないといけません。
だから、護符を大量に用意して、そこに魔法を詰め込む作業を始めたわ。


「中級までしか詰め込めないけど、これで建物を壊すくらいは出来るわよね」


40階のボス程度なら1撃と言える威力の護符を作って行き、見ていろとニヤニヤしてしまったわ。
そして、4日が経ってリケイルが起きるまでに準備は整ったのだけど、目を覚ました彼はワタシが思っているよりも怒っていたのよ。


「リケイル?」
「カーリー聞いてほしい・・・戦争を起こすよ」
「ほ、本気なの?」
「あくまでも相手次第だけど、聖女が嘘をつくなんてあってはいけない」


神聖な者と言われている聖女は、給金10倍と言う嘘を言って来たから怒っていて、それがしっかりと払われていれば違うかもしれないけど、まず払わないのは予想できたのよ。
そして、6人は奴隷の様に働かせることが聖女の態度で分かっていて、看過できないとリケイルは纏めました。


「だからね、その国を世界から追放しようと思うんだ」
「追放って」
「国自体を崩すんだ、復活なんてさせないほどにね」


聖法王国には、7つ星冒険者の勇者がいて、そいつと戦わないといけないのが決定したわ。
でも、リケイルなら勝てると信じて疑いませんでしたね。


「分かったわリケイル、やりましょう」
「ありがとうカーリー」
「お礼なんて良いのよ、ワタシたちは夫婦でしょ」
「そう言えば、子供を作るって話だったよね」


今夜にどうかと、起きたばかりのリケイルに言われ、ワタシは顔が真っ赤になってテレてしまいました。
まだ早朝なのに、そんな話になって焦ってもいたけど、忘れてなかったのが分かってホッとしたの。


「そんな事言って、今日は寝かせないわよリケイル」
「ははは、ずっと寝ていたんだから、僕は平気だよカーリー」
「死にそうだったのに随分元気ね、でも嬉しいわ」


夜が楽しみと、フラフラっとベッドから出て来るリケイルに肩を貸して、ワタシたちは一緒に朝食を取ったの。
そして、カリーナたちともお話をして、聖法王国を潰す作戦をリケイルから聞いたのよ。


「でもよ、オレたちだけで1つの国を取れるのか?」
「あらカリーナ、自信が無いの?」
「そんな事はねぇよ、望む所だカーリー」


レベルを考えれば、300人足らずのワタシたちでも行けるでしょう。
でも、リケイルはそうは考えてなくて、多くの国も参加させる考えを持っていたわ。


「そ、そんな事出来んのかよ」
「クラーシュたちが戻って来て、会議の報告を聞いてからだけど、聖法王国の実態を知れば参加して来ると思うよ」
「随分な自信だなリイル」
「当然だよカリーナ・・・僕はね、とっても怒っているんだ」


人の弱みに付け込んでくる奴らが嫌いで、反省なんてさせないで後悔させると言い切りました。
こんなに起こるリケイルは初めてで、ちょっと怖かったけど頼もしいと感じたわ。
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