ウォーキング・オブ・ザ・ヒーロー!ウォークゲーマーの僕は今日もゲーム(スキル)の為に異世界を歩く

まったりー

文字の大きさ
94 / 102
異世界クリアのラストステップ

94歩目 魔王領に来ても

しおりを挟む
「これは参ったなアユム」


林に隠れてアマンダが呟きます、魔王領に入って直ぐ、魔族たちに追いかけられてしまい大変な目に会っているんです、サモンたちもいて襲ってきたんだ、きっとサキーナが手を回していた名残だってサモンが怒っていたよ。
だから僕たちは、魔王城に急ごうって話になったんだ、僕が用事で居なくてみんなが休んでいる時、サモンが手紙を残して街に一人で行ってしまうまではね。
手紙には夜明けまでに帰って来るって書いてあった、だけど朝になっても帰って来なかったんだ、みんなとても心配しているんだよ。


「これは救出しに行かないといけないね、ウモンはユニとここにいて、僕たちで行ってくるよ」

「いや、そっちでなくてだな・・・アタシが言いたいのはお前だ」

「はい?」


アマンダが僕の指差します、みんなも驚いた顔をしているんです、実は僕の用事と言うのは髪を切る事だったんだ、とても覚悟がいるので、ちょっと離れた場所に行ってスラッチに切ってもらいました。


「あれだけ切らないって言ってたのに、どうしたんだ?」

「ふたりの思いを聞いたからね、僕も覚悟を決めなくちゃって思ったんだ、こっちに来たら、まず切ろうって決めていたんだよ」


船の上でも何度か思っていました、でも切って整えるのに時間が掛かるから後回しにしてた、それだけなんだよ。


「ショートカットも良いじゃないアユム!」

「ありがとうイーシャ、じゃあ行くよ」


ユニを抱っこしているウモンには待っている様に伝え僕たちは林を出ます、ウモンもひどい顔をしていました、それだけ心配なんですよ、僕たちは門を通らずに20mはある壁を飛び越え、高い所から街を見ます。


「マップだと、サモンはあそこに見える大きな屋敷にいる」


僕の顔をジッと見て来る二人に言います、街で一番大きな屋敷を指差すと、やっとふたりは目標を確認し始めたよ、アマンダが嫌そうな顔をして口を開きました。


「これは罠だな」

「そうね、きっとユニとウモンを誘い込もうとしているんだわ、どうするのアユム?」


ふたりが作戦を求めます、このまま突撃してサモンを救出したいって顔に書いてあります、僕のサブクエストでも【サモンを救出しろ】って言うのが手紙を読んだ時点で出ました、詳細は救出のみです。


「もちろん助けるよ・・・でも、その前にやりたいことが出来ちゃった」


高い所から街を見て僕は言います、ふたりはやっぱりって顔していますね、ユニが炭酸を飲みたくてこっちに来た時から何となく分かっていた事です。


「アユム、あまり騒ぎを起こすとサモンを助けられなくなるぞ」

「そこは考え方だよアマンダ、騒ぎを起こせば助けやすくなる、ちょっと耳貸して」


ふたりに僕の作戦を話します、それを聞いてふたりはギョッて顔して驚き、僕はそれを見て頷きます。


「そ、そんな事出来るのか?」

「結構簡単に出来るよ、僕が高速で空を飛べばいいんだ」


空を飛ぶって言葉にアマンダとイーシャは作戦を話した時よりも驚いています、僕はサキーナとの戦いで思い知りました、下からの攻撃だけでは不十分だってね、なので改善したんですよ。


「どど、どうやってだよアユム」

「簡単だよアマンダ、チコを使うんだ、チコ変形して」

「はい!マイマスター」


肩に乗っていたチコが僕たちの前に飛び、体を翼だけに変形させました、2つの翼がパタパタと羽ばたいています、チコはそのまま僕の背中にくっ付き翼を腰に当て、どう?って体勢をとったんだ、ふたりが納得の顔ですね。


「なるほどな、チコを使って飛ぶわけか、確かにあの速度なら誰にも見えないだろうな」

「で、でもパンの方はどうするのよアユム、さすがにそんなに作ってないでしょ」


イーシャの質問に色々なパンを両手いっぱいに出して答えます、スキルで手に入れたパンは拾った時点で種類が違います、食パンだったりロールパンだったりと色々です。


「今までアイテム欄に溜まっていたのを使えば余裕だよイーシャ」

「そんなに沢山あるのね・・・ねぇアユム、どうして旅をしてる時あまり食べなかったの?」


手に入れたパンは普通に美味しいです、でもこの世界では高級品になる白パンよりも良い物なので量産は難しいんです、僕は出来るだけこの世界で作れる物を食べていたいんです。


「非常食代わりに取っておいたんだ、他の料理を作れるのに食べる必要はないからね、だから今使ってしまおうって思ったんだ、手伝ってよ」


ふたりは納得したようで頷いてくれたよ、アマンダに簡単な手品を教えて最初の一手を作り作戦開始です。
ふたりは街の中心にある開けた場所に降り立ち、フードを深くかぶって大声を出して観客を集めます、なにもない手元からアマンダが小さいクリームパンを出しました。


「そこのお嬢ちゃん、これを君に差し上げよう、食べてくれるかな?」


アマンダが近くにいた紫の肌をした少女にクリームパンを渡します、隣にいた親はかなり心配しているけど、少女のお腹が鳴り仕方なく頷き少女は口にしました、少女はその後美味しいと言って全部食べてくれましたよ。


「さぁ皆さま!今のは収納魔法と思う方もいるでしょう、しかしこれは神の奇跡です、その証拠を今からお見せします、空をご覧下さい、沢山のパンを降らせて見せましょう」


イーシャが両手を高々と上げて空を見上げます、そこで僕の出番ですよ、高速で飛びながらパンを広場に落として行きます、見えちゃうと手品にならないので、二人と同じく黒いローブを羽織ってかなり早く飛ぶ事を心がけます、下では魔族の人たちがパンを夢中で拾っています。


「次は町全体にするんだけど、川や井戸には落としたら大変だね、屋根とかも乗せないようにしなくちゃ」


広場で二人が奇跡を起こしていると、魔族の人たちがどんどん広場に集まって行きます、次の段階に移ったふたりのサインを見て、僕は道にもパンを落とします、道なりに飛ぶと下から見える可能性があります、僕は円を描くように飛んだり、クロスさせてみたりと不規則にしました、道の上にいる時だけパンを落とすのはかなり大変です、下では建物から出て来る人が増え、どんどん人が集まりだしています。


「結構大変だね、でもみんな喜んでくれてる、マップの表示に空腹って出たから使えると思ったけど、予想以上の成果だね」


食料が不足しててみんなお腹を空かせていました、これでみんな少しはおなかが膨れるよね。


「出来れば落ちてないのをあげたいけど、それは無理だから、ごめんなさい・・・さて、ふたりとの合流地点に行こうか、チコよろしく」

「了解!マイマスター」


パンを降らせるのを止め、チコに方向を指示します、目標は街の中心の大きな屋敷の北側にある裏門です、上からアマンダたちが屋根を走って移動しているのが見えます。


「ふたりともお疲れ」


屋敷の裏側に到着してアマンダとイーシャを労います、ふたりは屋敷を見て既に臨戦態勢です、僕たちはローブを脱ぎ裏門を飛び越えます。


「裏門とは言え、門番がいないとはな」

「アユムの作戦が成功したって事でしょ、みんなお腹空いてるのよ」


門番たちも正面玄関のパンを拾っていました、マップで見えますけど庭に青点が沢山あります、もちろん屋敷の中にも青点はあって出てきません、大変なのはここからです、屋敷の中の数名はだんだん赤点に変わっていきますからね。


「さぁ行くよふたりとも、出来るだけ命は取らないようにね」

「分かってるよアユム」

「もちろんよ、敵とは言え魔族だものね、ユニちゃんを悲しませたくないわ」


アマンダが鞘に入ったままで剣を構え、イーシャは弓を止めて鞘入りの短剣を出します、僕はそれでもやり過ぎだと思い、ふたりにおもちゃのけん玉とヨーヨーを渡しました。


「またかよアユム」

「ね、ねぇアユム・・・さすがにこれはダメじゃない?」


魔力の紐も付いてないほんとの玩具の物です、ふたりはかなり疑問みたいですね、でも僕は言いました、モンスターと戦った時もおもちゃの矢を撃ったでしょってね、アマンダは木の枝だったとかブツブツ言ってます、イーシャはそうだけどって嫌そうですね。


「ふたりのレベルを考えたらこれくらいしないと相手が大変なことになるんだよ、僕も竹とんぼを持って戦う、さぁいくよ!」

「「は、はぁ~い」」
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...