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1章 派遣

18話 領主の耳に入り

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「参ったわね」


馬車の移動をしている間に、専属メイドのアリータから情報を聞いて、お母様から言われたお仕事の大変さに頭を抱えたの。
それと言うのも、領地の端にある村にダンジョンが発見され、そこに支援する様にお母様が指示を出したのに、それが上手く機能していなかったからなの。


「お嬢様のせいでは無いのです、そんなに深刻にならなくてもいいと思いますよ」
「ありがとうアリータ・・・でも、冒険者ギルドの職員が村に着いたのに、領主の対応が遅かったのは問題よ」
「それだって、ギルドの連絡がなかったからでしょう」


アリータがいう様に、冒険者ギルドの報告が遅れた事は問題だけど、出発した報告はされていて、逆算すれば分かる事だったわ。
だからこそ、様子を見に行く事をワタシが言われ、今まさに騎士10名と一緒に向かっているのだけど、途中の街で情報を聞いて頭を抱える問題が浮上したの。


「まさか、街のギルドが邪魔をしているなんて、そんな事あってはならない事よ」
「そうですね・・・アリジュラの街に着いたら、急いで責任者を処罰ですね」
「そうねアリータ、きつく言ってやらないとだわ」


ギルド職員が到着して2ヵ月以上も経過していて、今視察に行くのは順調なのかの確認でもあり、一喝するにも丁度良かったんです。
ワタシがお仕事として派遣され、統治することになったけど、果たしてどこまで出来ているのか不安しかありません。


「ですがお嬢様、放置するよりはいいかと思いますよ」
「そうね、ワタシが先導すれば動きも早くなるし、街に到着したら勇士を募りましょう」
「そうですよお嬢様、頑張りましょう」


アリータが応援してくれますが、情報では村に到着した職員が原因で、街のギルド職員が友好的でないらしく、どうしてそこまでと思っています。
問題の街に到着して、各ギルドの責任者を早急に屋敷に呼ぶと、ワタシはまた頭を悩ませたわ。


「誘拐騒動があったの?」
「はい、その者たちのおかげで組織の根城が判明したんですが、兵士の隊長を任せていた男が協力を拒否しまして、単独でその者たちは動き誘拐された少女たちを救出したんです」
「な、何をやっているのよ!」


その隊長を呼ぶように伝え、そいつが来るまでに他の報告を聞きました。
そして、ダンジョンの進捗が予想よりも進んでいて驚いたわ。


「40階のボスの素材を卸しているのね」
「そうなのですが・・・いまだに冒険者は2PTしか入ってなくてですね、そのボスの素材は担当の職員が入手しているみたいです」
「はい?」


意味が分からない報告だったけど、村にいる職員は元冒険者で凄腕と言う事が分かり、本当にどうして協力してないのかと𠮟りつけたわ。
各ギルドの長は、頭を下げて謝ってきたけど、謝罪は良いから職人と職員を派遣する様に指示を出したわ。


「そ、それがですね領主代行様、誰も行きたがらないのです」
「なんですかそれは」
「いえ・・・山の中の村には行きたくないと、志願者が集まらなくて困っています」


そこを集めるのがギルドの仕事で、何をしているんだとまた叱る事になりました。
ダンジョンの素材が卸され、既に利益になる事が分かっているのに、どうして手をこまねいているのかと怒鳴りましたよ。


「すすす、すみません・・・ですが」
「ですがではありません!志願者がいないのなら、依頼を出して報酬を与えて向かわせなさい、その為の支援金は送っているはずですよ」
「そ、それが・・・そのお金も、兵士の者が持って逃げまして、捜索しているんです」
「なっ!」


そんな報告は聞いていないと、怒り過ぎて頭が更に痛くなってきました。
そんな状態の中に問題の兵士長が部屋に入ってきて、どういう事なのかを聞いたわ。


「申し訳ありません、何分相手は付与魔法士だったもので、情報が確かなモノという確証がありませんでした」
「それで、あなたは包囲して捕まえようとしたのですか?捕まっている人がどうなるのか考えなかったのですか?」
「包囲すれば相手は解放すると考えたのです、決して見捨てたわけでは」
「では、逃げられそうになった事はどう説明するのですか?」


ギルドの長たちの話では、捕まっていた少女たちの話を聞いて、拘束されていた誘拐犯たちを見つけて捕まえたとありました。
つまり、包囲していた場所から逃げられたのに、隊長は自分のせいではなく、情報を流した問題の付与魔法士だった職員にあると言ってきたんです。


「あなた本気ですか?彼は事件を解決した功労者ですよ」
「それも怪しいのです領主代行様、付与士は後方で見ているだけの存在ですよ」
「もういいです・・・それで、支援金を持ち逃げした兵士の件はどうなのですか?」
「そ、それは・・・今探していますが、既に遠くに行かれている様で、見つかったと言う報告はありません」


街を守る為にいる兵士たちが逆に迷惑を掛けていて、どうしてくれようと思ったわ。
クビにして追放なんて簡単だけど、それでは損をするだけで終わってしまい、少しでも領地に貢献して貰う方法を考えたわよ。


「分かりました、兵士長のあなたは長としての資格をはく奪し、お金を持って逃げた兵士を探しなさい」
「なっ!何故ですか領主代行様」
「何故って、そんな事も分からないのが一番の原因かもしれませんが、理由なんて沢山あり過ぎて、ワタシはあなたを処刑したいくらいですわよ」


部下の兵士の教育不足から始まり、誘拐犯の捕縛失敗に少女たちの保護を怠った事、情報提供者を蔑み協力を拒んだことをあげました。
おまけとして、そんな功労者に責任を擦り付けた事まで加え、探索か処刑のどちらが良いかを聞きましたよ。


「そ、それは」
「猶予を1年とし、部下数名を連れて行く許可も出しましょう・・・言っておきますが、あなたが探す事を止め逃げるのならば、ワタシの名誉にかけて全力で探し出し処刑します」
「そ、そんな」
「そんな顔をしたいのはワタシの方です」


情報を隠蔽している状態で、盗んだ者を探していると言われても、見つかるわけがありません。
何もしてない事と同じなのに、どうして許されると思うのか不思議でならず、さっさと準備して旅立てと命令しました。


「さて、今の話を聞いて、ギルドの長たちは何かいう事がありますか?」
「「「「「ありません」」」」」
「協力感謝しますわ、じゃあワタシが村に行く明日までに準備をしてくださいね」
「「「「「あ、明日」」」」」


驚く長たちですが、今すぐにでも出発したいくらいで、驚いている暇があればギルドに戻って力を尽くせと睨み、部屋から退出させたわ。
そもそも、各ギルドは国と協力関係にある別の組織で、国に報告すれば大問題になるほどの事だったんです。


「まったく、お金が盗まれたのは兵士の失態なので、それを採用した領地の責任ではあるけど、ギルドも大概ね」
「ですが、ギルドがお金を代わりに出すくらい、お嬢様のメイドであるアタシでも考え付きます」
「そうよねアリータ」
「はい、利益になると分かっているのなら、他の街のギルドから派遣しても良いくらいです」


手段なんていくらでもあり、村を発展させるのが最優先でした。
冒険者ギルドの職員が派遣されてるのだから、話し合いを持ち掛けても良かったのに、それすらしてないとか信じられなかったわ。


「アリータ、悪いのだけどワタシの騎士たちに買い出しと馬車の手配をさせてくれるかしら」
「村の為の品ですね」
「ええ、お詫びを持って行かないと相手に失礼です」


事件を解決した功績として、お金を渡すのも考えましたが、それなら村の為に動いた方が誠意が伝わると思っての事で、それでもダメならお金も提供する作戦です。
兎に角、お詫びと感謝を大前提に村に向かい、その後協力することを提案し、領主が動き出したことを知らせるんです。


「1つで良かったはずなのに、2つも余計な事が増えてしまいましたね」
「ええアリータ、それも最悪な印象を持たせてね」
「そうですね・・・ですが、謝罪から入れば良いのですから、ある意味簡単ですよお嬢様」


それもそうねっと、前向きに考えないといけなくなり、ため息を漏らしてしまったわ。
そして、次の日に門の前で待ったんだけど、5つのギルドからは1名ずつの職員と冒険者PTが1組護衛として来ただけだったわ。


「よろしく、自分たちは3つ星冒険者の【フェニックスフレイム】です、自分はリーダーのラルソニーです」
「ええよろしくラルソニー」
「はい、仲間も紹介します」


フェニックスフレイムの残りのメンバー4人は、エルフの女性ミシャルさんにドワーフの男性ドワワ君、それと女剣士のプリーナさんと魔法士のダイアル君でした。
ギルドの職員からの紹介はなく、頭を下げるだけなので、ワタシたちは出発したのだけど、馬車の中でワタシはがっかりして頭を抱えたわ。


「まったく信じられない、なによこの人数」
「仕方ないですよお嬢様、いないよりはいいと思いましょう」
「まぁそうね、もう頼らない事にするわ」


ワタシの知り合いの商人を呼んだ方が良いと思ったほどで、彼女が来るまでに現状を整理しようと考えたわ。
そして、5日の旅が始まったんだけど、2日目に驚きの事が起きたのよ。
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