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1章 転生

4話 行商人の来訪

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「眠くもない、全部譲渡ってそう言う事なんだね」


僕の全ては奪われ、お腹もすかないし眠くもありません。
隣では、僕を心配してミドリたちが寝ていて、僕から離れようとしないよ。


「もしかしたら、年齢もこのままかもしれないけど、全てを奪われたわけじゃないよ」


スキルの事を言ってるんじゃなくて、僕を思ってくれるみんながいる事が嬉しかった。
だから僕は今幸せで、みんなを守っていきたいと思ってるんだ。


「でも、数値が1なのにみんなと一緒に仕事が出来てる、これはきっとあれだね」


みんなにしがみ付かれて寝ながら考えたけど、その答えはあれしかないと、いい加減女神に感謝した。
作成スキルを使って確かめたけど、やっぱりと声に出てしまったよ。


「消費が2の【パン粉】や【クルトン】が出来たよ」


作成品を長押しするとそれが可能で、どうやら僕の数値は、ゼロになる前に回復する様で、作成時間は2時間も掛かるけど、実質無限に作れる様でしたね。
みんなと同じ速度で仕事が出来る理由も、疲れないから出来たんだ。


「即死系は、もしかしたらまずいかも知れないけど、それだってコンマ数秒の時間はあるから、恐らく効かないかな」


毒や麻痺と言った状態異常もそうなる事が予想され、僕は最強なんじゃないかとニンマリです。
でも、子供と同じ速度なだけで、大人よりは遅いし、重い物は持てません。


「小麦袋1つが限界だし、出来ない事も多いから、浮かれてもいられないかな」


腕立ては出来ても、攻撃力はなく戦闘には向きません。
自分に出来る事を確認しながら、作成を1時間おきに進めていくと、朝になりみんなも起き出して挨拶をしました。


「アオ、ずっと起きてたの?」
「ちょっと早めに起きただけだよミドリ、おはよう」
「寝坊助のアオにしては珍しいわね、おはよ」


あくびをするミドリに朝の挨拶をして、僕たちは今日の畑の世話に向かった。
昨日の様に雑草を抜き、村長の家でパンを貰ったんだ。


「今日はクロワッサンだね」
「アオのパン、もの凄く美味しいわね」
「ん、さいこう」
「病み付きです」


皆も嬉しそうで僕も嬉しかったけど、今日はそれ以上にイベントがあります。
村に月1で訪れる旅商人さんが広場に来てくれる日で、僕の品物を卸す事になってるんだ。


「昨晩も準備してたから、どれくらいになるのか楽しみだね」


ルンルン気分で広場で待っているけど、どうしてか村人全員が広場で待機しています。
僕の記憶では、村長くらいしかいないはずなのに、余程見学したいのかと、僕はソワソワしてきたんだ。


「でも、人見知りの僕なのに、みんなといても発作は起きないんだよね」


昨日会ったばかりの人たちなのに、どうしてか安心するんだ。
きっと、身体が覚えていて、みんなを怖いとは思わないんだと思います。


「でも、旅商人さんは違うんだよね」


うぅ~っと、見え始める馬車を唸って迎えたけど、村長が御者席の女性と握手をしていました。
そして、御者席から降りた商人さんは、僕の品物が並ぶテーブルを見て、ビックリしていたよ。


「ゴミが一切含まれてない小麦!?」
「素晴らしいだろうジューネ、10袋を用意したぞ」
「10袋も!?」


子供の僕たち位ある袋を凝視して、信じられないって顔をして来たけど、しっかりと査定はしてくれて、1袋銀貨10枚にもなったんだ。
とは言え、僕は硬貨の価値を知らなかったので、大人のお姉さんたちに聞く事にしました。


「銅貨10枚が穴あき銅貨1枚?」
「そうよアオ君、銀貨はその上で穴あき銅貨10枚分に相当するのよ」
「っと言う事は、銅貨1000枚!?」
「あらアオ君、計算が早いわね」


大人のお姉さんである、青髪のミリナさんが僕を撫でて来るけど、小麦袋の総額が凄くて抵抗できなかったよ。
10袋は総額銀貨100枚で、1番高い硬貨の金貨になるそうなんだよ。


「た、高くないかな?」
「何言ってるのよアオ君、粉にしてないだけでなく、あれだけの品質よ」
「ミリナの言う通りだよアオ君」
「さ、サビーネさん」


急に後ろから抱き着いて来たのは、スタイルの良い赤髪のサビーネさんで、粉にしたら10倍にもなるから当然と教えてくれます。
そして、同じ様に抱き付いて来る緑髪のアンリさんが、大人たちで狩った品を見せてくれたよ。


「ドリルラビットの干し肉?」
「そうだよアオ、こいつの肉はとても美味しいの」
「それだけじゃないでしょアンリ、毛皮もあるのよアオ君」


大人の女性3人がグイグイ来て、僕は凄く緊張してしまい、ミドリが助けてくれるまでそのままでした。
でも、品物の値段が分かり、僕としては嬉しい出来事だったね。


「アオ、鼻の下が伸びてるわよ」
「アオ、エッチなの」
「ちょっちょっとふたりとも」


ミドリとウイサが腕に絡まって来るので、僕は止めて否定したよ。
女性に見惚れるとか、男なら仕方ないし、女性陣はみんな綺麗だからほんとに仕方ないんだ。


「アタシ達もそれに入るわよねアオ」
「と、当然だろミドリ、それよりも行商だよ」
「そ、そうね」


僕の答えにミドリは少しテレていたけど、丁度そこで村長さんから合図が来ました。
それは、僕の奥の手を出す合図で、しっかりとした値段を付けて貰った場合だったから、この旅商人さんは信用できる様でしたね。


「よいしょっと」
「君、これは?」
「大麦ですよ商人さん」
「大麦だと!?」


旅商人さんが驚き、袋を開けて確認したけど、これはスキルレベルが2に上がった結果です。
ここでは出さないけど、大麦はご飯として食したり、ビールにする事が出来て、そして何より味噌が作れるんです。


「まだ1袋しかありませんが、いかがですか?」
「是非買わせていただく」
「有難うございます」


大麦袋(10キロ)は、銀貨20枚になり、僕たちは大金を手に入れたんだ。
そして、旅商人さんが村を出た後、成功を祝して村長の家で宴会が開かれたんだよ。


「このビール、エールと違って美味しいわね」
「麦ゴハンも美味しいわよ」
「このミソって調味料も野菜に付けると美味しいわ」


大人の6人は気に入ってくれて、これからもどんどん作ろうと気合が入ります。
それを見てミドリが怒って来るけど、美人が喜んでるから仕方ないよね。


「ミドリも食べてよ、明日も畑のお仕事で大変だからね」
「ふんだっ!そんな事言ってもダメよアオ」


そう言いつつ、ミドリは僕の手から麦ごはんを奪い取り、バクバクと勢いよく食べてくれた。
僕は、ここにいるみんなが好きで、その中でもミドリが大好きです。
これからもこんな幸せがずっと続くことを願って、僕はまた作成を進めていきました。
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