上 下
58 / 132
3章 1年1学期後半

58話 驚異のダンジョン

しおりを挟む
「またなのネサート!?今度は何よ!」


2時間しても2階の階段が見えない事で、誰もが思っていた異変をネサートがまた言い始めた、ツィーネは強めに聞き返します。
順調だと思っていた中で、あえて口にしなかったからだけど、勇気があると僕はツィーネを抑えて聞いたんだ。僕は思い当たる事が無かったんだ。


「あのあの・・・あたしたちがここに入って、もう2時間ですよ。そろそろ次の階に続く階段があっても良いはずですよね?というか、既に降りてないとおかしいです」


ツィーネにそう言われ、僕達はその事にに向き合います。
慎重に進んではいましたが、分岐と部屋の数を考えれば、既に階段を降りているはずだったんです。


「まぁ確かに、普通のダンジョンなら2階の中間か、もっと進んでるかも」
「そうですよねツィーネ!だから変なんですって、どうしてこんなに広いんですか!!」


ツィーネとネサートが言い合いをした後、僕に顔を向けてきて答えを求めて見てきます。
僕は知りませんよって頭を左右に振り、エルフPTのリーダーであるザードに視線を向けて助けを求めたよ。


「仕方ないな、魔法以外にマッピングが得意な俺が説明してやる」
「「「「「お願いします」」」」」
「うむ、このダンジョンを入ってから、俺はずっとマッピングしていた。どうやらここはかなり広いようだぞ」


ザードは羊皮紙をバックパックから出して床に広げて見せました。
みんなで集まりその紙を見たけど、いつのまにと思うほど細かく書いてあったんだ。


「いつの間にこんなことしてたのよ」
「ふふふ、俺の趣味なんだ。それよりも見て見ろ」


ザードの指差す位置はダンジョンの真ん中に見え、ダンジョンの奥に進み同じ所も通ってない僕たちは愕然としたよ。


「ザードこれって、まだ先があるって事よね?」
「そう考えるのが妥当だなツィーネ。ダンジョンは大体正方形に作られるが、今俺たちがいるのはここだ」
「明らかに先があるわね」


通ってない道もあるようだったけど、他の道があるほどじゃなくて長細いダンジョンになっていたんだ。


「僕たち、ダンジョンの右端からスタートして左の端まですすんでたんだね」
「うむ、そこから更に進み長方形の形が今だ。これを見て何か気にならないか?」


かなり長い長方形の形をしていて、これを正方形にするとなると、そう考えてみんなの意見が一致します。
まだまだ1階は続き、同じ位の時間が掛かるとザードが答えを出したんだよ。


「じゃ、じゃあ後2時間も掛かるって事なのね」
「正方形にするとしたらまぁそうだな。そしてな、更に悪い事にモンスターはまだ強くなるぞ」


紙の数か所にペンで点を打ってくれて、そこはモンスターが強くなった場所だと教えてくれた。
そして、先に見える扉を指差してあそこもそうだと、無言で視線を向けてきました。


「まぁそう嫌な顔をするな、要は考え方だぞ」


ザードが指を立て、僕たちはとても運がいいと言ってきます。
この先まだまだ強くなるとしても、相手モンスターはスライムで、弱点が氷なのは変わらない。


「つまりだ、弱点を突き人数で押し込めば勝てるんだ」


ザードはドヤ顔を決めて来て、僕は氷魔法を主体の戦略を考えます。
5つのPTを別けなくて良かったと、つくづく思ったよ。


「あのぉ~ちょっといいですか?」


僕が慎重に来てよかったと思っていると、ネザートが手を挙げて話に入ってきました。
弟の質問をネサートが何よって顔して聞こうとしてたので、僕はまぁまぁってネサートを抑えてから話を進めます。


「先に行ったヒューマンのPTはどうしてるんでしょうか?先に進んでるのは分かるんですけど、下の階に行ってるんですよね?僕たちそんなに時間かかり過ぎですかね」


ネザートの意見を聞き、僕たち全員は確かにって顔をしてしまいました。
モンスターはアレシャス殿がこっちを見て、その都度補給しているとしても、道はザードの地図を見ても分かる通り一本道に近いんだ。


「会う事だってあるはずなのに、どうしてなのかな?」


偶然って事もあるけど、ほとんど一本道で数は僕たちの方が多いのだから、追いついていてもおかしくない。
いったいどうしてなんだろうっと、不思議に思い首を傾げました。


「もしかして、僕たち追い越しちゃったのかな」
「そうかもねラーツ・・・でも向こうはここを知ってるから、最短を進んでるんじゃないかしら?」
「その可能性はあると思うけど、それでも5人で戦っていれば時間は掛かるよ」


考えても分からず、僕たちは先が長いのだからと先に進むことにしました。
そして次の部屋には、スライムに戦士が乗ったモンスターがいて、手強そうな感じが伝わって来た。


「ピュロ、ピョロロ~」


スライムがぴょんぴょん飛んで止まっている時間はなく、動きの速いメンバーが翻弄され、乗ってる戦士も魔法を剣で捌いたり、氷の魔法を盾で防いできた、僕たちの攻撃は全て躱されるか盾で防がれます。
これはほんとに強敵だと、僕は体力の消費を諦め全力を出すことを選択します。


「こんなのがこれからずっと出るのね、ラーツ!武技を使うわよっ!!」
「僕もそう思ってた、行くよツィーネ!」


僕とツィーネで斬撃を飛ばす遠距離系の武技【斬撃刃】を放つと、さすがのスライム騎士も盾で防いでも吹き飛ばされ壁に激突した。
武技はMPと闘気を使うのでかなり疲労します、なのでいざという時に使うんです。


「ピュュ~~」
「もう一押しね、魔法まだなの」
「あのあの、行きます~」


起き上がろうとしているスライム騎士に、ネサートたちの氷の魔法が襲い掛かり氷漬けになりました。
そして、とどめのハンマーが小人族の隊から振りかぶられ、4つともヒットして倒すことが出来たんです。


「つ、強かったね姉さん」
「そうねネザート・・・それにあれ見て、戦ったかいがあったよ」


ネサートが指差した先には、なんと宝箱が出現していたんだ。
どうやら今のモンスターがドロップしたみたいで、みんなも嬉しそうに集まりだします。


「は、早く開けなさいよラーツ」
「分かってるよツィーネ・・・じゃあ行くよ」


みんなで集まって早速に開けてみましたけど、中には今のモンスターが使っていた片手剣が入っていて、誰もが目を輝かせたね。
それだけ綺麗だったんだけど、それは騎士なら誰もが知ってる事で、僕たち騎士科は戸惑っていたんだよ。


「すごくキラキラだね・・・ねぇラーツ、鑑定しないの?」
「わわ、分かってるよネザート【鑑定】」


僕は見惚れていてスキルを使うのを忘れていました。
声を掛けられ鑑定を掛けたけど、凄い品過ぎて【ゴクリ】と唾を飲み何も言えなくなったんです。


「姉さん、ラーツどうしたのかな?」
「きっとすごい品だったのよ、あたしも見て見るわ」


ネサートも鑑定を掛け、その剣の名前がみんなに知らされます。
剣はプラチナソードと言って、正式な騎士になった時に送られるモノでした。


「それってすごいの?」
「当たり前でしょネザート、あたしたちからしたらあの杖と同じよ」
「そ、それは凄いね」


これは凄い剣がドロップしたと、誰もがどうしようっと顔に出ています。
魔法科も同じようなすごい装備はあるけど、騎士科の事だから知らないようだけど、自分たちの装備だったらと生唾を飲みましたね。


「ゆ、夢なのかしらラーツ!?」
「そんな訳ないよツィーネ。これは部隊長とか仕官も好んで使ってる武器で、金貨1枚相当もする剣だよ」
「「「「「金貨1枚!?」」」」」


魔法科のメンバーが声を揃えて驚き、僕はみんなを見て頷いて肯定したよ。
これは間違いなくプラチナソードで、こんな装備が1階層に出るなんて信じられなかった。


「目の前のこの剣、ほんとにキラキラと輝いてる」
「すごく綺麗ね~」


宝箱から取り出せず眺めるだけの僕たちですけど、そろそろ次に進まないといけません。
どうしようっと顔を見合いますが、お金に換えるのは言うまでもないよね。


「どどど、どうするのよラーツ!?ここ、こんな高価な物」
「おお、落ち着いてよツィーネ!きっと運が良かったんだよ」


そう言って一番知識のある、ザードに意見を求める為視線を向けました。
きっと良い提案をしてくれると期待したんだけど、顔はかなり引きつらせてますよ。


「戦ってる姿を見るかぎり、あのモンスターの鎧と兜と盾はプラチナではなかった。問題の武器は振っていたから良く分からなかったが、ラーツの考えが正解だと俺も思う。俺たちは運がよかったんだ」


答えを出した感じだけど、みんなはザードの表情を見てその答えが違うと感じていた。
ザードは自分に言い聞かせている様に見えてしまったんだ。


「とと、とにかく持ち帰らないとね、ラーツお願い」
「ぼぼ、僕なの!?」


高価すぎて僕たちには手に負えないらしく、みんなが目だけで訴えてきます。
ツィーネに反対できず、僕は箱から取り出してバックパックにしまって持ち帰る事になりました。


「まぁアレシャス殿に判断してもらうのが妥当だろ」
「そうだねザード、僕たちには荷が重すぎだよ」


心なしか、バックパックが重い気がします。
こうして僕たちはまたダンジョンを進んで行き、僕たちはこのダンジョンの本当の怖さを知る事になるんです。
しおりを挟む

処理中です...