上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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4章 1年3学期

114話 秘密の共有

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「なによお母様ったら!」


いじけたわたしは、ベッドに顔を埋めて怒ったのよ。
だって、わたしだけのけ者で、わたしだけが自室に閉じ込められたのよ。


「シャルティル様、そんなに落ち込まないでください」
「ウサウサ~」


ふたりが慰めてくれるけど、そんな事じゃわたしの機嫌は治らないわ。
月見が、わたしの顔にすり寄ってきてくれたけど、余計枕に顔を埋めたのよ。


「シャルティル様」
「なによぉ~エミリーだって気になるでしょ、わたしたちを助けてくれた白騎士は、子供だったのよ」


お母様の演説が終わった時、そんな話をしていました。
身長を考えても、きっとわたしとそう変わらないと、エミリーに言ったのよ。


「お母さまの隠し子かもしれないのよ!どこの誰なのよ」
「顔を隠しているんですから、分かりませんよ。それに、そちらのモンスターは平気なんですか?」


興奮したわたしの腕の中には、ラビットの月見がいつの間にかいたわ。わたしがぎゅって抱きしめてるから、とても苦しそうにしていたの。
エミリーが、触りたそうにしていたから、貸してあげると、フワフワですねと返事が返ってきて、素っ気ないのにずっと撫でてるわよ。


「お母さまの子供だとしたら、ダンジョン貴族であることは確かなんだけど、旅をしてるって話だから、学園にはいないでしょうし、わたしと同じで、来年入学って線もないわ」
「ダンジョン貴族なんですか?どうしてそんな人が旅をしてるんですかね」


月見を撫でていた手を止めて、エミリーが驚いてたけど、わたしは口を滑らせたと、口を押さえたわ。
でも、わたしにはそこは関係ないわ、問題はどこのだれかと言う事ね。


「旅が好きとか、ふざけた返事を貰ったけどさ、きっとお母様みたいに冒険者でもやってるんでしょ。わたしは、いつも一緒だったのに、あんな人知らないけどね」


わたしはそれもあって怒ってるの、お母様と一緒にいた冒険者は、全員知っているわ。
仲良くもなってて、そんな知らない人がお母様と仲良くしてるの、わたしに秘密にしていたって事なのよ。


「そんなにわたしって信用ないのかしら?それとも、子供だと思ってるから、教えてくれないの?」


そう考えると、余計わたしは悔しくて泣きそうになります。
お母様は、わたしを大切にしてくれていたけど、それは勘違いだったのよ。


「冒険者の中にいるはずのお父様が、いったい誰なのかも教えてくれなかったし、きっとわたしなんて」


枕をぎゅっと抱きしめて、わたしはもう泣きそうです。
そんな時、ドアがノックされたの。エミリーが、わたしを見たから、許可を出して扉を開けたのだけど、そこには白騎士が立っていたわ、わたしは白騎士を睨んでやったわ。


「なんの用かしら?白騎士様」
「あらら、拗ねてますねぇシャルティル様」


顔は見えませんけど、白騎士の声は呆れた感じだったわ。
だからわたしは、持っていた枕を投げつけてやろうと構えたの、だけど止まったわ。


「あ、あなた仮面を!?」


白騎士は、わたしたちの前で仮面を取っていたのよ。
仮面の下には、わたしと同じくらいの年頃に見える、男の子の顔がありました。
わたしは、突然すぎて構えたまま固まってしまったわよ。


「どうかな、これで少しは機嫌が治った?」
「どど、どうせお母様に言われたからでしょ!女帝様だものね、断れないだけじゃないのよ!!」


心にもない事を、わたしは叫んでしまったわ。
お母様が、わたしの為にお願いをしたのなら、それはすごくうれしい事だったの。でも、今は正直な気持ちは出せないんですよ。


「シャルティル様の言う通り、それを命令できるのは、君の母親のマリア様だけだよ・・・でもね、命令することにしたのもマリア様だ、君の事を想ってのことだよ」
「もうっ!分かってるわよ」


わたしの心内を言われ、恥ずかしくなって枕を彼に投げつけました。
彼は、飛んでくると思ってなかったのか、まともに顔に受けていましたよ。


「意地悪だったかな?ごめんね・・・僕の名前はアレシャス。ダンジョン学園の1年生だよ」


枕を持って、横から顔を出して、彼は自己紹介をしてくれました。
そして、わたしは彼の顔を思い出しのよ。


「あなた!?クレープ屋をやってた学生ね!」
「覚えててくれたんだね、僕もあの時の子がお姫様だとは思わなかったよ、良いとこの子供ってのは、そこの彼女がいたから分かったけどさ」


エミリーを見て彼は言いました。エミリーは気づかれていたのかと、びっくりしていたわね。
月見も知っていたのか、エミリーの肩をトントン叩いているわ。


「でもおかしいわ、演説で旅をしているって言ってたけど、あなた学生なのよね?」
「それは世間定の設定だよ。秘境を旅してる冒険者ってことにすれば、ダンジョンヒューマンって思う人はいないからね」


それを聞き、わたしは冒険者ではないのか、緊張して質問しました。
もしも冒険者でなかったのなら、お母様は隠し事をしていないと思えるからなのよ。


「僕は冒険者じゃないね」
「じゃあ、最近知り合ったって言ったのも」
「そうだよ、今日初めてお会いしたんだ。あそこには、中ボスの使い方の切っ掛けを作ったから呼ばれたんだよ」
「そ、そうだったの」


わたしはそれしか言えなくて、彼が凄いのだと直ぐに理解したわ。
彼は簡単に言ってるけど、お母様と旅をしている時、お母様は中ボスやボスの使い方が分からないっと、口癖の様に言っていたのよ。


「そうだよ・・・ほんとならさ、僕があそこに行く予定はなかったんだ。切っ掛けとは言っても、実験したわけじゃなかったからね」


彼はそう言うけれど、わたしはその難しさを知っています。
お母様は、その使い方を見つける事ができなかったの。モンスターの生態を調べてなにが足りないのか、冒険者になってお母様は必死だったわ。
そうしている内に、女帝になるくらいダンジョンが評価された。


「女帝になったお母さまと似てるわ。研究していたら、誰よりもすごいダンジョンを作ってて、困ってたわ」
「そうだったんだね。それにしても僕も驚いたよ、屋台でジャール金貨を出してきたお嬢様が、まさかマリア様の子供だとはね」
「子供ってだけよ、わたしはお母さまみたいに凄くないわ」
「またそうやっていじけないでよ、マリア様は自分の護衛を断ってまで、君を助けたんだよ」


アレシャスは、笑顔でわたしを助けに来るまでの事を話してくれました。
彼のしゃべり方は、親しみを感じる優しい物で、お母さまが冒険者をしていた頃の懐かしさを感じました。
お母様が女帝になって、誰もがわたしにしてこなくなった物の1つだったの。


「なんだか久しぶりだわ、お母様以外とこんなにお話ししたのなんて、いつぶりかしら?」
「僕も経験あるけど、身分が変わると相手が態度を改めちゃうからね、今まで親しくしてたのに、ちょっと寂しいよね」


とても暗い顔で、寂しいのが良く分かったの。わたしはそれを見て、冒険者を辞めて女帝になった時の、お母様を思いだしたわ。
きっと、王位争奪戦の結果を知った冒険者たちの中に、今までの対応ではない人がいたのよね。


「身分なんて関係ないわ、今まで仲良くしていたのだもの」
「そうだよね!?」


ボソッと口にした言葉に、彼はすごく反応して顔を近づけて来たわ。
顔が近いと思ったのだけど、彼は気にせず話し始め、その顔が可愛く見えてしまったわ。


「表情は年相応なのね」


さっきと同じくらいの声量だったのに、彼は反応しないで、ちょっと興奮していたわ。
あんなに強いのに、ほんとに子供なんだと、少しホッとしたんです。


「貴族は、平民と話しちゃいけないなんておかしいんだよ。僕は絶対、普通に話すのを止めないよ、みんなは変だって言うけどさ、仲良く話していた方が楽しいでしょ」


その通りだとわたしも思ったけど、そこで分かってしまったの。
お母様が何故、冒険者を辞めたのか、そしてお父様が誰なのかを言わない理由は、わたしにあったんです。


「態度を変えてしまったのは、お父様だったのね」


彼がずっと話しているから、わたしは一人で呟いたの。
わたしにつらい思いをさせない為に、冒険者を辞め、研究も打ち切ったんだわ。


「わたし、お母さまに愛されていたわ・・・ねぇアレシャス、わたしと友達になってくれない。こうやって話のできる人って、今のわたしは、お母様しかいなくてつまらないの」
「もちろんだよ・・・というか、僕は既に友達だと思ってたけどね」


アレシャスが、ちょっとテレた感じで言ってきて、その顔がとてもかわいかったから、わたしはドキッとしましたよ。
横を向いて誤魔化すように、感謝の言葉をつぶやいたけど、顔が熱くて仕方ないわ。


「反則級の笑顔ね」
「ん?なにか言ったシャルティル」


アレシャスが顔をのぞき込んできから、わたしは手で押して防ぎました。
それでも見て来るから、わたしは恥ずかくて、彼の持っていた枕を奪い、顔に押しつけてやったんです。


「もうっ!乙女の顔をのぞくなんてマナー違反よ、罰として、何か秘密を話しなさい!」
「ええー!?」


アレシャスは、横暴だと言ってとても困っていて、わたしはしてやったりと思って胸を張ります。
でも、冗談ではなくて、ほんとに知りたいのよ。


「う~ん、秘密かぁ」
「さぁ早くしなさいよアレシャス、言っておくけど、すごい秘密じゃないとだめだからね、誰も知らない事じゃないと許さないわよ」
「誰も知らないことかぁ~・・・僕が一度死んで、違う人に生まれ変わった、とかかな?」


ボソッと言った秘密を聞いて、わたしはしばらく思考が止まったわね。
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