勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー

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1章 生き甲斐

14話 用無し勇者

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全然予定と違ったけど、概ね良い方向に進んだので、ワタシは胸をなでおろしました。


「グラフィっち」
「ええ、分かっているわジュリア」


もう勇者たちに同行する理由はなくなったので、ここで退散するからヘレンとジュリアに部屋を出る様、視線だけで指示を出しました。
そして、机を壊して怒り狂う勇者に声を掛け、依頼の準備をするから武器を渡す様に伝えましたよ。


「ああ、助かるよグラフィ」
「いえいえ、お金を出すのは勇者たちですから、運ぶくらいこちらでしますわ」
「なに?どういう事だグラフィ、金はそちら持ちだろう」
「どういう事も何も、依頼を出したのは勇者たちですから、ワタシたちの管轄外です」


契約でもそうなっているし、借金するなら貸すと伝えました。
それを聞いて、ふざけるなと怒ってきますが、契約違反をするのかと警告したわ。


「ワタシに危害を加えるのなら、こちらとしても契約を破棄するしかなくなりますよ」
「わ、分かった、金を貸してくれ」
「分かりました、では契約書を作りますので、少々お待ちください」


しめしめと思いながら、ワタシは書類を作り始め、ちょっとした追加事項をコソッと記入したわ。
出来上がった書類を勇者に渡してサインを求めたら、全然読まずに全員がサインしてくれて、ワタシはその場で笑ってしまったのよ。


「な、何を笑っているグラフィ」
「笑いたくもなるわ勇者、その書面には大変な事が書いてあるのよ、ちゃんと読まないとダメじゃない」
「「「「「なっなんだって!」」」」」


勇者が書面を読み始め、最後に小さく書かれていた文章を声に出して読みあげると、手遅れなのにワタシを睨んできたわ。
その内容には、払い終わるまでワタシの奴隷となる事が書かれていて、使用した紙も魔法の紙であることを教えたわ。


「既にあなたたちはワタシに逆らえなくなってるのよ、お分かりかしら?」
「そ、そんな馬鹿な!」
「信じられないようだけど、手の平には既に紋章が刻まれたし、試してみましょうか?」


右手の甲に奴隷紋が浮かび上がるのを見ている勇者に、ワタシは立ち上がってギャルトを殴るように指示を出しました。
普通なら絶対に行わない行為だったはずなのに、勇者は女性のギャルトの顔を力の限り殴ったの。


「「「イースズ!!」」」
「ち、違う、俺じゃない、身体が勝手に」
「そう、ワタシの指示を行ってしまったのよ」


これでわかったでしょうっと、倒れたギャルトを治療しているミケーナに視線を向けながら伝えたわ。
今ワタシが止めれば、治療も出来なくなると分かり、ミケーナも自分の右手を見てゴシゴシと消せない紋章をこすっていたわ。


「あははは!消える訳ないでしょ、相変わらず馬鹿ね」
「ど、どうしてこんなことを」
「どうして?あなたたちが間抜けだっただけよ」


使えないレベルだったから、こうして使える様にしたのだと説明したのだけど、それで納得してくれなかったわ。
頭を働かせれば分かる事なのに、そこまで説明しないといけない奴らでため息が出てしまったわ。


「あのね、アレシュの子供を敵に回したら、勇者として動けなくなるのよ、そんな事も分からない愚かな女を殴って何が悪いの」
「だ、だからってイースズにやらせるなんて」
「勇者イースズが最初から謝罪していれば、何事もなく話は終わったのよ、やっぱりバカね」


無意味に話を長びかせたせいで、仲間が暴走したのだと最後まで説明してあげて、その罰を与えた事を注意として伝えたわ。
もっと頭を使って話をしなさいっと、書面を胸元にしまって警告したわ。


「こ、この恨み、忘れないぞグラフィ」
「あなたも本当にバカね勇者イースズ、借金は返済できないから言ってるのよ」
「な、何だと」
「分からないの?あなたたちの借金はベールド金貨なのよ、そう簡単に返せる額じゃないのよ」


1枚で大金貨1000枚も必要な金貨で、5人の装備25個全部となり、今回だけでも返すのにどれだけ掛かるのか聞いてみたわ。
イースズは、ドラゴンを倒せば半分は返せると答えたけど、それは出費を考えない今までの考えと直ぐに指摘したわ。


「な、何が違うんだ」
「今までは、ワタシの商会が準備の為にお金を使っていたけど、その費用も借金に入るのよ」
「な、何でだよ!それはお前の領分だろう」
「だから、今までの関係ではないのよ、間抜けな勇者イースズさん」


奴隷が使うお金は、主であるワタシが支払うのだから、借金に上乗せするのは当然と笑って説明してあげたわ。
そして、今の話題になったドラゴンも、倒したのが勇者イースズたちであっても、所有権は主人のワタシにあるとクスクス笑って見せたの。


「つまり、ワタシが取り分を10対0とすれば、それであなたたちはおしまいなのよ」
「そ、そんな」
「そんな取引あんまりですわ」
「だからね、書面にサインする時、良く読むように言ったのよ」


話合った通りなのかを確認するのは当然の行いで、それをしないでサインをしたのがいけないと笑ったのよ。
魔法の紙も、キラキラと光っていて怪しいと思うはずだったのに、それすら怠ったから笑ってしまったわ。


「商人の新人でもしない事をあなたはしてしまい、だから笑ってしまったのよイースズ」
「た、頼む助けてくれグラフィ」
「グラフィ【様】でしょイースズ」
「うぐっ!・・・グラフィ様、どうか許して下さい」


よしよしっと、頷きながら他の者たちにも跪かせ、ワタシは強力な力を得ました。
でも、まずは装備の修復が必須で、それが済んでから実行しようと考えたの。


「奴隷紋は隠すとして、無意識に攻撃すれば、獣人の身体能力でも不意は付けるわ」


ワタシに恨みを持たせたことを後悔させる為、準備が整ったら同じ苦痛を与えてやると、あのガキが通った道を眺めたわ。
その後、逃げたあいつを奴隷にして量産に移れば、ワタシの出世が確定します。


「ふふふ、あはははは!楽しみね」


勝ちが決まった戦いというのは、楽しくて仕方ありません。
早く装備を直してほしいと願ったけど、それにはまだまだ時間は掛かり、その間に商会を手に入れる事にしたの。


「修復に費用が掛かるし、まずはそっちよね」


勇者イースズがいれば、商会のトップは簡単にワタシと交代するし、ワタシは世界を取る事も出来ます。
そう考えると楽しくて仕方なく、聖女にお茶を淹れさせて不味くても気にならなかったわ。
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