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治癒魔法
しおりを挟む今日も今日とて、僕たちはダンジョンに潜る。
なので、こういうことだって起こる。
「いったーーーーーーいっ!!!」
アイリの悲痛な叫びが、ダンジョン地下6階に響き渡った。
ダンジョンの壁にかけられた魔法の松明がフルフルと揺れるほどの大音量だった。
「あ、アイリ、大丈夫?」
「うー……大丈夫じゃない、大丈夫じゃないよぉ、創介くぅん……」
頭のてっぺんを両手でおさえながら、その場にしゃがみ込んでしまうアイリ。
さっきの戦闘でアイリはオークの一撃をくらってしまったのだ。
手と髪の毛に隠されてよく見えないけど、これはタンコブ案件だろうな……。
「……う~~~っ、オークってあんなに素早かったかなぁ……? いつも余裕で回避できてたのにぃ」
「アイリ落ち着いて。とにかくまずは治療しなきゃだ。えっとポーションか傷薬を――」
と、僕はポーチに伸ばしかけた手を、途中で止めた。
そうじゃない。そうじゃないよね。この場合、アイテムを使うよりも有効な手があるじゃないか。
僕はアイリのそばに膝をついて、声をかける。
「アイリ、アイリ。回復アイテムを使おうかなって思ったんだけどさ、でもそれよりもっと効果的な手段があるよね?」
「……え?」
「ヒールの魔法だよ。ね、そのほうが回復アイテムよりも治りが良いんじゃないかな?」
アイリがゆっくりと顔を上げて、僕の顔を見る。
相変わらず両手は頭の上に乗っかったままだ。
「ひーるの、まほう……」
「うん。つまり、アイリが自分で自分に魔法をかけるってこと」
「あぁ……」
ポッとアイリの頬がピンクに染まった。
「わ、わ。恥ずかしい……ヒーラー、私です……」
「うん。アイリはヒーラーだ。頭、痛むだろうけど詠唱できる? キツイようだったらアイテム使うのも選択肢になると思うけど……」
「う、ううん、だいじょうぶ、やってみるよ……ありがとう、創介くん」
アイリはそう言って、頭から両手をおろすと、祈りをささげるように胸の前で指と指を組み合わせた。
すると、ポツリ、ポツリと、歌うように、治癒魔法ヒールの詠唱を始め――。
「――ふはぁ……きもちいい……」
アイリの体を青白い光が包み込み、無事、オークに負わされたダメージは治癒されたのだった。
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