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2 「ただいま」は転生後の世界で
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「おかえり! 待ちくたびれたわよ、サクヤ!」
笑いながら僕にウインクをしたのは、魔族の騎士フェデリカ。
頭からちょこんと生えた二本のツノと、その笑顔は相変わらずかわいらしい。
「おかえりなさい、サクヤくん!」
目に涙を浮かべながら僕の手を握りしめたのは、女神の癒し手クロエ。
温かく、やわらかいその手から、彼女の懐かしい優しさが伝わってくる。
「ようやく帰ってきたのね、セナ・サクヤ。……ふん、待ってなんかないし。でもまぁ一応言っとく。……おかえり」
呟くように言って、僕から顔をそらしたのは、エルフの魔術師ソフィー。
ちゃんとお風呂入っているだろうか。研究に没頭して忘れてないだろうか。……うん、とてもきれいな髪だ。大丈夫そうだね。
「やっと、この日が来たんだね。おかえり、サクヤ。また共に旅をしようじゃないか」
そう言いながら僕の頭を撫でてくれたのは、人間の戦士マルグリット。
いつも凛々しいあなたの姿を僕は忘れたことないですよ。この大きくて美しい手も。
「みんな……。やっと、会えた」
それから、僕は彼女たちの顔をひとりひとり見ながら、ひとりひとり名前を呼んだ。
四人もそれに応え、うなずきを返してくれた。
――そして。
「ふふ、でもお迎えはあたしたちだけじゃないんだなー、これが」
フェデリカがそう言って微笑んだ。
続けて、マルグリットも言う。
「待ちきれないから一緒に行きたい、と要望があってね。けれど全員は無理だから代表者だけ連れてきたよ」
お迎えはあたしたちだけじゃない? 要望?
二人の言葉に、一つだけ思い当たることがある。
でも、それは。
僕は二人に詳しいことをたずねようと、口を開きかけて――
『おかえりーーーーっ!!』
「……え?」
「ほら、あっち」
ソフィーが僕の横に立って、スッと指を伸ばす。その先に。
「おかえりなさい! サクヤ様!」
「サクヤーーー! おかえりーー!」
「セナくんっ! おかえりなさいっ! 新しい素材入荷してるからあとでお店来てよね!」
「ウチも新しい酒入ってるぞーーー! みんな連れて飲みにきな!」
「セナさぁぁぁぁん!! やっと帰ってきてくれたんですねっっ!! よかったぁ、これでやっと先輩のグチ聞かずにすみますぅ!!」
「おかえり、サクヤ兄ちゃん! またいっしょにあそぼーね!」
たくさんの街の人たちが僕のことを迎えに来てくれていた。
みんな笑顔で、僕の名前を呼び、再会を喜ぶ声を上げてくれている。
……ああ、ああ。改めて思う。やっと。
「やっと、帰ってこれたんだ、僕は」
「はい。こうしてようやく、再会できましたね、サクヤくん」
僕の言葉にクロエがうなずいた。
幸せが胸いっぱいに満たされていく。
だから。
この気持ちを、この喜びを、この感謝を、この万感の思いを、ひとつの言葉に込めてみんなに伝えよう。
「――ただいま!」
『おかえりなさーーーい!!!』
目の前のみんなからもう一度、“おかえり”が届く。
みんなの声が合わさって、大きな波となって。
泣きそうになる。でも堪えた。せっかくこうして帰ってこられたんだ。
涙じゃくて、笑顔で。帰ってくる前にそう決めたんだ。
でも――。
「我慢することないでしょ。サクヤ」
言ったのはフェデリカだった。
そして、少しだけ意地悪な表情を浮かべて続ける。
「涙だって感情表現のひとつ。そう言ったのはどこの誰だったかしら?」
「う、それは……」
僕はたじろいだ。なにか返そうとするのだが、なにも言葉は出てこず、口をモゴモゴと動かすことしかできない。
そんな僕の様子を見てフェデリカはニヤリと笑った。
「まったくもう、フェデリカったら。さっそくサクヤくんを困らせて。……いいんですよ、サクヤくん。あなたのやりたいようにやれば、それで」
そうクロエが助け舟を出してくれたけど、フェデリカに言われたことには確かに一理あって。
というか、それをフェデリカに言ったのはこの僕だ。
泣きそうになったのなら、泣けばいい。
泣くことを我慢しなければいけない場面だってもちろんあるだろう。でも、今この瞬間は、そうじゃない。
きっとフェデリカはそう伝えたかったんだと思う。
感動の涙だ、なにも気にせず流せばいい。
それでいいんだと。
そう思ったら、途端に涙が込み上げてきて、僕はもう我慢することなく泣いた。
両頬を涙が伝っていくのを感じる。
鼻水だって出てきそうだ。
フェデリカは、そんな僕の様子を見て、やれやれといった感じに両手を肩まで上げる身振りをした。
口元には微笑みをたたえて。
他の三人も同じように僕のことを見ている。
ちょっと、みんな。
そんな顔されたら、もっともっと泣きたくなるじゃないか。
笑いながら僕にウインクをしたのは、魔族の騎士フェデリカ。
頭からちょこんと生えた二本のツノと、その笑顔は相変わらずかわいらしい。
「おかえりなさい、サクヤくん!」
目に涙を浮かべながら僕の手を握りしめたのは、女神の癒し手クロエ。
温かく、やわらかいその手から、彼女の懐かしい優しさが伝わってくる。
「ようやく帰ってきたのね、セナ・サクヤ。……ふん、待ってなんかないし。でもまぁ一応言っとく。……おかえり」
呟くように言って、僕から顔をそらしたのは、エルフの魔術師ソフィー。
ちゃんとお風呂入っているだろうか。研究に没頭して忘れてないだろうか。……うん、とてもきれいな髪だ。大丈夫そうだね。
「やっと、この日が来たんだね。おかえり、サクヤ。また共に旅をしようじゃないか」
そう言いながら僕の頭を撫でてくれたのは、人間の戦士マルグリット。
いつも凛々しいあなたの姿を僕は忘れたことないですよ。この大きくて美しい手も。
「みんな……。やっと、会えた」
それから、僕は彼女たちの顔をひとりひとり見ながら、ひとりひとり名前を呼んだ。
四人もそれに応え、うなずきを返してくれた。
――そして。
「ふふ、でもお迎えはあたしたちだけじゃないんだなー、これが」
フェデリカがそう言って微笑んだ。
続けて、マルグリットも言う。
「待ちきれないから一緒に行きたい、と要望があってね。けれど全員は無理だから代表者だけ連れてきたよ」
お迎えはあたしたちだけじゃない? 要望?
二人の言葉に、一つだけ思い当たることがある。
でも、それは。
僕は二人に詳しいことをたずねようと、口を開きかけて――
『おかえりーーーーっ!!』
「……え?」
「ほら、あっち」
ソフィーが僕の横に立って、スッと指を伸ばす。その先に。
「おかえりなさい! サクヤ様!」
「サクヤーーー! おかえりーー!」
「セナくんっ! おかえりなさいっ! 新しい素材入荷してるからあとでお店来てよね!」
「ウチも新しい酒入ってるぞーーー! みんな連れて飲みにきな!」
「セナさぁぁぁぁん!! やっと帰ってきてくれたんですねっっ!! よかったぁ、これでやっと先輩のグチ聞かずにすみますぅ!!」
「おかえり、サクヤ兄ちゃん! またいっしょにあそぼーね!」
たくさんの街の人たちが僕のことを迎えに来てくれていた。
みんな笑顔で、僕の名前を呼び、再会を喜ぶ声を上げてくれている。
……ああ、ああ。改めて思う。やっと。
「やっと、帰ってこれたんだ、僕は」
「はい。こうしてようやく、再会できましたね、サクヤくん」
僕の言葉にクロエがうなずいた。
幸せが胸いっぱいに満たされていく。
だから。
この気持ちを、この喜びを、この感謝を、この万感の思いを、ひとつの言葉に込めてみんなに伝えよう。
「――ただいま!」
『おかえりなさーーーい!!!』
目の前のみんなからもう一度、“おかえり”が届く。
みんなの声が合わさって、大きな波となって。
泣きそうになる。でも堪えた。せっかくこうして帰ってこられたんだ。
涙じゃくて、笑顔で。帰ってくる前にそう決めたんだ。
でも――。
「我慢することないでしょ。サクヤ」
言ったのはフェデリカだった。
そして、少しだけ意地悪な表情を浮かべて続ける。
「涙だって感情表現のひとつ。そう言ったのはどこの誰だったかしら?」
「う、それは……」
僕はたじろいだ。なにか返そうとするのだが、なにも言葉は出てこず、口をモゴモゴと動かすことしかできない。
そんな僕の様子を見てフェデリカはニヤリと笑った。
「まったくもう、フェデリカったら。さっそくサクヤくんを困らせて。……いいんですよ、サクヤくん。あなたのやりたいようにやれば、それで」
そうクロエが助け舟を出してくれたけど、フェデリカに言われたことには確かに一理あって。
というか、それをフェデリカに言ったのはこの僕だ。
泣きそうになったのなら、泣けばいい。
泣くことを我慢しなければいけない場面だってもちろんあるだろう。でも、今この瞬間は、そうじゃない。
きっとフェデリカはそう伝えたかったんだと思う。
感動の涙だ、なにも気にせず流せばいい。
それでいいんだと。
そう思ったら、途端に涙が込み上げてきて、僕はもう我慢することなく泣いた。
両頬を涙が伝っていくのを感じる。
鼻水だって出てきそうだ。
フェデリカは、そんな僕の様子を見て、やれやれといった感じに両手を肩まで上げる身振りをした。
口元には微笑みをたたえて。
他の三人も同じように僕のことを見ている。
ちょっと、みんな。
そんな顔されたら、もっともっと泣きたくなるじゃないか。
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