二度目の勇者の転生録 ~カムバック報酬は最強スキルでした~

おかか梅

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1 二度目の異世界

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 光の扉を開き、足を一歩踏み出せば。
 そこは――異世界だった。


 けれど。
 ここは僕の知らない場所じゃない。
 僕のよく知っている、“異世界”。

 ここは、かつて僕の暮らした“世界”なんだ。







 視界いっぱいに広がるのは、灰色の高層ビル群ではなく、透き通るような青い空と、風を受けて波を打つ鮮緑の草原。
 雑じり気のない爽やかな空気を鼻から思いっきり吸い込むと、途端に懐かしさが込み上げてくる。
 
 ……うん、無事に帰ってこれたみたいだ。
 ひさしぶりだったから、この世界の理に再び受け入れてもらえるか心配だったんだ。

 僕はほっと胸をなでおろす。
 たぶんかなり緊張していたのだろう。力が一気に抜けて、全身がふにゃふにゃと実感のないものになった。

「おっと……はは……なんの心配もいらないって事前に説明は受けてたんだけどね」

 それでも不安は不安だったし、心配は心配だったのだ。
 ふう、と溜息をひとつついて、僕は目をつぶった。気持ちを落ち着けようと、ゆっくり呼吸を整えていく……。

 すると――

 いろいろな音が聞こえてきた。
 この世界の、いろいろな音。
 例えば、風の吹く音。
 例えば、妖精の羽音。
 例えば、精霊のまたたき。
 例えば……遠くから聞こえてくる鳴き声。――あれはたぶん、ホワイトドラゴンの咆哮だろう。

 ああ、そうだった。
 この辺りの空は彼らの通り道だったよね、そういえば。

 ふふ、と僕はつい笑い声を漏らしてしまう。
 だって、本当に懐かしくて。
 レイバート山脈のホワイトドラゴン、ラケスは元気にしているだろうか。
 五千年以上を生きてきた彼は、それだけの時を過ごし経験と情報を蓄えてきた知恵者だ。きっと壮健だろう。
 あとは討伐されたりする可能性だけど……まぁ、Lv.90を超える古代竜の血統種だ。そうそう負けるようなことはない、と思う。
 落ち着いたら挨拶にいかなきゃね。

 ドラゴンの友に思いを馳せながら、僕はひさしぶりに降り立った世界の“音楽”に耳を傾け続ける。
 ついさっきまでの不安が嘘だったように、気持ちも落ち着いてきた。
 
 こういうのも懐メロって言うのかな。
 妖精の羽ばたきや、ドラゴンの咆哮。
 この世界に住んでいたことのある僕だからこその懐かしいメロディ。
 うん。いいんじゃないかな。

 ……と、そんなことを考えていた時だった。
 

 複数の足音が聞こえてきた。
 動物か、あるいは魔物かと思ったけれど、それは一瞬のことで、足音が人のものであることはすぐに気がついた。

 しかも。

 この足音は聞いたことのあるものだ。
 いや、正確には。

 いつも近くで感じていたリズム、だ。
 この世界のたくさんの音と同じように、このリズムもまた懐かしい。
 
 だから僕はまぶたを上げて、音のする方に目を向ける。
 ひとつの確信を持って――



「みんな!!」


 彼女たちはいた。
 かつて、共に旅をし、共に戦い、共に喜び、共に涙を流し、共に夢を語り合い。

 そして、共に世界を救った仲間たちがそこにいた。


「みんな!!」

 僕は地面を思い切り蹴って、走り出す。
 彼女たちの元に向かって。

 ――ああ、本当に本当に僕は帰ってきたんだ。
 この世界に。この場所に。

 みんなの待つところに!


 声が届いたのか、彼女たちも口々に僕の名前を呼びながら、僕の方に駆けてくる――。


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