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3話 記念日 21歳〜
しおりを挟む翔太と一緒にいる時間…
空も太陽も私の為にある様な気持ちになった
翔太が、そう思わせてくれた
ーーーーーーーーーー
新宿アルタ前。
『凛子、紬季!』
袴から私服に着替えて、待ち合わせ場所に着いた
大勢の人が行き交う中、2人をすぐに見付けた
なぜなら…
紬季が、遊びに行く時は必ずアニマル帽を被って来る
今日は…シロクマの帽子だ
そして凛子は、赤毛のロングヘアで長身だから普通に目立つ。
そんな2人だから、どこで待ち合わせしても見付けれる
『恋町!』
凛子が手を振った
私は2人の所に来て、まずは謝った
『ごめんね、うち遠くて…』
私の家だけ都心から離れている
いつもは早めに家を出て、間に合う様に来るけど…
今日みたく急な待ち合わせの時は遅くなってしまう
『いいのよ恋町。しかしお前さんは美人でデカパ…なのに服装が地味…群衆に埋もれて見付け辛いのです』
目立ち過ぎる帽子の紬季に言われた
『デカ… これでいいのっ!』
私は少し怒って答えた
『確かに地味。新世紀なのだ…心置きなく乳を出せ!でも紬季は目立ち過ぎで、私は普通だからバランスがいいのかもな?』
どこぞのボーカルみたいな髪をして凛子が言ったので…
『いいえ、私だけ普通で乳も出しません!』
きっぱり言い切ってあげた
『ふむ…恋町の固定観念は別として…ペガサス達もここに向かっているそうだ』
凛子が携帯電話を見ながら言った
『楽しみだねっ 大学のプリンス達とカラオケなんてさ!あっ、わいは翼狙いなのでよろぴく♡』
はっきり言える紬季を尊敬する
『うまく割れたねぇ 私は断然、飛雄馬』
『えっ?』
凛子の言葉に私は驚いた
凛子は先月、付き合っていた彼氏に振られたばかりだった
そんなすぐに切り替えれるの?
『なに?もしかして恋町も飛雄馬狙い?それは贅沢だぞ!翔太にしておけ翔太に!!』
凛子に頬をつねられた
『ちひゃう、ちひゃう!ひんこ、わひゃれひゃあひゃりらひゃら』
うまく話せない私を見て…
『きゃははは!何言ってるかわかんない!』
シロクマ紬季が笑ってる
『過去は過去よ。目の前にある豪華な獲物の方が大事だわ』
凛子が私の頬から手を離して言った
豪華な獲物…
凛子が前向きになってるなら、口を出す必要はないか
『雨乃さん!』
名前を呼ばれて、声のする方を見た
メンズ雑誌に出てる様な王子達が、私達に向かって歩いて来る
今更だが
これは奇跡かもしれない
『うえー!かっわいいな、この帽子!』
翼がすぐに紬季の帽子をパフパフしながら言った
『そうだろそうだろ。わいは他にもアニ帽たくさん持ってるぞ!ふっふん。』
腰に手を当てて自慢気な紬季
『ホンマ?えーなぁ…』
翼は紬季を優しく見詰めた
『雨乃さん…ワンピース可愛いですね。その落ち着いた紺色が似合います…それに朱色の模様がとてもいい…とにかく凄く似合う』
翔太が私の服を褒めてくれた
いつも地味だから、あまり褒められないので嬉しかった
『ありがとうございます』
ペコっと頭を下げてお礼を言った
『か…』
翔太は何か言いかけてやめた…
『べた褒めですね花川君。だが…恋町は胸がデカいから、それを隠す服装ばかりなのですよ』
『ちょっと凛子!』
胸が大きいのはコンプレックスなのに…
だから今日も、紺色のワンピースを着て…その上に深い朱色のレースで編んだベストを着て来た、ワンピースの袖に朱色の模様があったから。
なのに胸の事話されたら、努力が意味ない…
『えっ……む、胸!?』
たちまち顔が赤くなった翔太を見て、飛雄馬が
『クスクス…凛子ちゃん、翔太を虐めないで?とりあえずカラオケ行こうか』
飛雄馬の一言で、みんな同じ方向に歩き始めた
不思議と…
初対面なのに違和感がない私達6人だった
電車に乗ってもカラオケに着いても、翔太は私の隣に座った
凛子と紬季も気を使ってるのか、私の隣に座らなった…
だからずっと翔太が隣にいた
最初は恥ずかしかったけど…
カラオケでアルコールを飲んでいるうちにだんだん気にならなくなった
カラオケで1番盛り上げてくれたのは翼だった
さすが大坂のハーフ?
紬季とも気が合うのか随分仲良くしてた
この2人はお笑い担当かな
そして飛雄馬。
女性には不自由してなさそうなのに…
凛子がカラオケ画面の前で歌っている時、私の横に来て
『凛子ちゃんて彼氏いる?』
耳元でヒソヒソと…
『今はいないですよ』
『よし!ありがとう』
なんて会話をしてきた
モテそうな人だから、軽いノリなのかもしれないけど…
凛子も飛雄馬を気に入っているから、今は良いのかも。
『あ、あま雨乃さん?今、飛雄馬と何話してたの?』
反対側に座っていた翔太に聞かれた
『…秘密です』
言わない方がいいと思ったので、そう答えた
『そ、そうか……』
翔太はその後、ビールを一気に飲み干し…
『飛雄馬…ちょっとトイレ付き合えぇ』
立ち上がって飛雄馬の所へ行き、首に腕を回した
『うっ…なんだ?どうした、翔太?』
『雨乃さんは…雨乃さんは…ダメだ、だからトイレ付き合え』
『あはは!そうかそうか、わかったよ』
そして2人は部屋を出て行った
どうしたんだ?
『ちょっと待ってぇや、俺も一緒に行くわ』
翼も出て行った
あら…3人とも出て行っちゃった
『ちょこっとLove、歌う?』
『あ!いーね』
凛子と紬季は、そんな事お構い無しの様子だけど。
その後すぐに3人は戻ってきて、何事もなかった様に3時間ぐらい楽しく過ごした
割り勘で支払いを済ませてカラオケボックスを出た
『今日はありがとう、楽しかった!』
翔太が私達に言った
『私達こそとても楽しかったです』
私が答えた
『ね?今月いっぱいは学割使えるから、近々また遊ぼうよ』
凛子が言うと
『そうだね、じゃあみんなアドレス交換する?』
飛雄馬が言った
『6人同時に出来るん?』
翼が翔太に聞いた
『それは無理かな…』
翔太が首を傾げて答えた
『あっ!翼は紬季ちゃんと、翔太は恋町ちゃんと交換すればいいんじゃない?』
飛雄馬が言った
『それはいいね!でもちょっと待て…飛雄馬?今、雨乃さんを恋町ちゃんって言っただろ!』
翔太が飛雄馬のお腹を軽く殴った
『…痛っ なんでよ?凛子ちゃんと紬季ちゃんって呼んでるんだから恋町ちゃんって呼ぶだろ?』
『ダメだダメだ』
『お前も呼べばいいだろ?』
『俺はまだ呼べないからダメ!だからお前もダメ!』
酔っているのか少し子供っぽく飛雄馬に絡む翔太
名前で呼んでいいのに…
『いいですよ恋町で。翔太君?』
私も少し酔ってたので、抵抗なく言えた
『雨乃さん…本当?いいの?』
『はい。友達なので』
『恋町ちゃん…』
『はい。翔太君』
『わわわ…恋町ちゃん恋町ちゃん?』
『は、はい翔太君!』
『恋町恋町恋町ちゃん!!』
顔を近付けて、何度も名前を呼ぶ翔太
なんか…ドキドキする
『ふふふ…可愛い』
『本当、見てる方が照れますな』
『俺等には出来ないね?』
『同感やわ』
その後、飛雄馬の提案通りアドレス交換をした
この日はこれで解散したけれど、あまり日にちを空けず6人で遊んだ
頻繁に会っていたので、すっかり仲良くなった
6人で遊ぶのが当たり前みたくなっていた
でも3月末に近付いた頃、翔太から31日2人だけで映画に行きたいとメールで誘われた
断る理由もないので約束した
映画に行く前日、凛子と紬季にお昼を食べながらその事を話した
『それは…いよいよ告白されるんじゃない?』
就職の為、髪の色を黒く染めてショートヘアにした凛子が言った
『わいも黒髪のお凛と同意見じゃ』
今日は虎のアニマル帽を被っている紬季にも言われた
『私も!って思うけど…』
私は煮え切らない言い方をした
『けど?』
凛子がタバコに火を点けながら聞いた
『明日、もし告白されなかったら?4月に入ればあまり遊べないし…そうなると友達確定かなって…』
私が翔太を好きなのは、2人とも気付いてるだろうけど…
こんな話…答えてくれるかな
『その時は恋町が告白しなよ?』
紬季がふざけないで話し出した
『わ、私から!?』
『そう。見ててわかっていたから、敢て聞かなかったけどさ。恋町、翔太が好きでしょ?だったら向こうから言われなくても恋町が告白すればいいんだよ』
普段ふざけてる人に言われると重みがある…
『メールも知ってるし、何とかなるよ頑張れ!そもそも、翔太から声掛けて来たんだし…振られる可能性0だろ?』
『そうだよ、ペガサス翔太は間違いなく恋町さんに惚れてるからな』
『そ…そう? うん…頑張ってみるかな』
振られる可能性0って言葉に、かなり期待を持ってしまった…
次の日…翔太との待ち合わせに30分も早く着いた
でも翔太はもう来ていた…
『あれ…私、時間間違えた?』
不安になって翔太に聞いた
『間違えていないよ。…早く来ていたら恋町ちゃんも早く来て、早く会えた…俺を喜ばせてくれたから今日は全部俺の奢りね』
『え、いいよ自分の分は払うよ』
『いいの。払わせて、ね?』
この子供っぽい笑顔に私は弱い…
『わかった…今日だけね。』
『代わりに手を繋いでくれる?』
『えっ!?』
『いや?』
『え、いや…あ、いやじゃないけど』
動揺していると翔太に手を握られた
『契約成立!』
心の準備ぐらいさせてよ…
告白されるかも…ってドキドキしていた
手を繋がれて尚更、BPMが上がった
だけど…
ここから翔太は急に話さなくなった…
映画館に入る時も…上映前も…
おかげで映画の内容が頭に入らなかった
映画が終わって…外に出ても、手は繋ぐけど話をしない
居た堪れなくなって…
『映画面白かったね。明日から学割使えなくなるね…お腹すいたから帰るね!』
何だかわざとらしい話し方をして、帰る流れを私が作った
『あ…うん。送るよ』
翔太は、こんな風に受け答えしかしない…
告白されるどころか、気分悪くさせたみたい…最悪だ
電車の中でも翔太は何も話さなかった
私は色々考えた
私のメールの返信が良くなかったのか、いつも私の服装や髪型を褒めてくれるのに当たり前の顔をしてたのか…
振られる可能性0から100になった不安で一杯だった
家の近くの駅に着いて
『今日はありがとう…』
翔太にそう告げて電車を降りた
ここで終わりか…
『俺も降りるよ』
翔太も私の後ろに続いて電車から降りた
どうして降りた?
責任感で家まで送るつもりなのか…
駅から出ると夕焼けが広がったていた
『あ…手』
翔太はそう言うと、手をしっかり繋いだ
この…無言の手繋ぎの意味はなんだろうか
しばらく歩いて…
『そろそろ家だから、ここでいいよ』
そう言って手を離した
『あ…やっぱり飯食いに行こうか?』
ようやく会話らしい事を言ったが…
『もう家着くから今度ね!』
私は私なりに良い笑顔で断った
告白される、なんて勝手に期待してたのが恥ずかしかったし…
告白されなかったら私からすればいい、なんて自惚れていたのも涙が出るぐらいバカだから…笑って、自分を誤魔化したかった
『わ、困るよそれ…』
『!?』
翔太から予想もしなかった言葉…
やはり何か嫌われる事したのかも…
『本当困るんだよね…その笑顔も声も何もかも可愛いくて、独り占めしたくなる気持ちが限界だよ…』
『え…?』
『今日さ…恋町ちゃんに言いたい事があって映画に誘ったんだ。それで勢い付いて手を繋いだけどさ…繋いでみたら胸が痛くなって、何を話していいのかわからなくなった…ずっと話もしないでごめんね』
怒ってなかった?良かった…
話って何だろう?
告白…? いやいや自惚れは良くない
『話って…?』
『うん…。もうわかっていたよね?卒業式で花束なんて渡して「友達になって下さい」なんて回り口説く言ってさ…本当は付き合って下さいって言いたかったのバレバレ…』
そう話すと、翔太は私に背中を向けてしまった
『そ、そうだったの…?』
全然そんな事思ってなかったけど…
『俺さ、入学式の日に恋町ちゃんに一目惚れしたんだ…廊下で俺とぶつかった時、俺がよそ見してたからなのに「大丈夫ですか?」って背伸びして、心配そうに見詰めてきた…その顔が忘れられなくなって…好きなんだって、気付いたけどずっと伝えられなかった…』
えっ嘘?
私…こんな素敵な人とぶつかったの?
全然覚えていない…最悪。
それより私に一目惚れ?それこそ嘘みたいだ…
私が言葉に詰まっていると…
『恋町ちゃんは俺の事、友達として会ってくれてたのにね…ごめんね、急にこんな事言って。』
『いや…私』
『あ…うん、そうだよね…嫌だよね。でも本当にずっと好きでした この数日間、俺と友達になってくれて…夢見させてくれてありがとうね、本当に楽しかった!』
そう言うと翔太は振り向いて微笑んだ
目には少し涙が見えた…
泣いている…?
告白されてるよね?でも何か展開がおかしい…
あ、私が「いや」って言ったからだ!
早く、自分の気持ち言わなきゃ…
『わ、私も大好きです!』
焦って、大きい声で言ってしまった…
『え……?』
翔太も驚いている
『私、花束貰った時に多分…いや、絶対一目惚れしました… 私と付き合って下さい!』
あれれ 告白しちゃった…
『嘘だろ…?本当…?』
『うん。本当…もうダメかな?』
『ダメなわけないよ!!…や、やったぁ』
そう言うと翔太はボロボロ泣き出した
『え?どうして泣くの…』
オロオロする私…
こうして私は翔太の彼女になった
2000年3月31日 花川翔太と雨乃恋町が付き合った記念日。
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『トキ、今でもね…あの時を思い出すと胸が高鳴るんだよ』
こんなにも鮮明に覚えている
夕焼けと…翔太の顔も自分の気持ちも。
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