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第一章
*P.3*
しおりを挟む「それは、無理だ」
イリアの目の前に来たクロードが、イリアの顎にゆっくりと左手を伸ばす。
「…私なら…あなたに勝てるわ…」
クロードの瞳と同じ色の、深紅の長い爪が生えた親指が、イリアの唇の上をゆっくりと這う。
「………どうやって…?」
…ドクンッ…
聞こえない鼓動が、お互い聞こえたような気がした。
「……っ」
「…クロード様……お取り込み中、申し訳ございませんが、本日の業務はまだまだ残っております。早急にご自分の執務室へお戻りください」
ユーリの怒り口調で放った言葉が、空気が止まったような妙な雰囲気をすぐに切り裂いた。
「あ……あぁ…。…とにかく……姫…イリア……お前は今日から永久に私とここで過ごすのだ。…絶対にこの部屋から出てはいけない…」
クロードはそう言うと、扉の前に立つ悪魔に合図をした。
「これからはカウォルがお前の身の回りの世話をする。お前の従者として好きなように使え」
コツコツとヒールを鳴らしながら、パーマがかった紫色のショートヘアの悪魔がベッドへと進む。
「……行こうか。ユーリ」
「…御意」
ユーリを連れて部屋を出て行くクロードを、イリアは黙って睨み続けた…。
「…彼女は危険です。クロード様」
部屋の扉を閉めた途端、ユーリがきつい眼差しでクロードを見つめる。
「………わかってる…。わかっていたのに、止められなかったんだ」
「……はぁ」
扉の先は少し長めの廊下になっている。
窓は無く、薄暗い灯りが等間隔でやんわりと光を放つ。
ユーリはわざとらしく溜め息をついて、扉の前で俯いているクロードを置きざりにしたまま、廊下を歩き始めた。
「あなたはこの世界の王です。真実が知れたら…反乱が起きますよ。あなたをよく思わない魔物たちは少なくないですからね」
「………………だ」
クロードは小声で何かを言った後、フラフラと歩き出す。
「え?なんて?」
ユーリがイライラした様子で足を止め振り返った。
少し赤くなった顔を手で覆い、潤んだ瞳をしたクロードはユーリから目を逸らす。
「…イリアが可愛すぎて……頭がおかしくなりそうだ……」
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