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第一王子ヴィンセント
しおりを挟む「殿下、ご令嬢を呼んでまいりました」
「レティシア・ベルモンドでございます」
レティシアは綺麗なカーテシーで淑女の礼をとった。
「あぁ、呼び立ててしまってすまないね」
「何か御用でしょうか?案内や世話は、姉のマリーリアが承っているはずですが・・・」
「用がなくては君と話をする事は許されないのかい?少なくともあの姉よりは面白い話ができそうだと思ったんだがな」
「殿下が何を求めていらっしゃるのかわりませんが、私に期待されても困りますわ」
「そうか・・・では、君に聞きたい事がある」
ヴィンセントは、お茶を一口飲むと、真剣な顔になり、レティシアの瞳を見つめる。
「君は、婚約者はいるのか?」
「いえ、おりませんが」
「奇遇だな。私の婚約者の座も空席だ。私の婚約者にならないか?」
「で、殿下!?」
ウィルフレッドが慌てた様子で遮るも、ヴィンセントは真っ直ぐにレティシアを見て返事を待っている。
「レティシア嬢、どうかな?」
「その問いの答えとしては、現時点では何もお答えできませんわ」
「ほぉ・・・どういう事だろうか?私が婚約者というのは不満か?」
「不満・・・そうですね。殿下は地位も、女性が好む容姿も様々な才もお持ちでしょう。正直、一番の優良物件かもしれませんわね」
「ふむ、では何故即答せんのだ?喜ばんのだ?」
「何も知らないからですわ」
「何も知らぬわけないだろう?私は第一王子。知らぬ者の方が珍しい」
「それは子どもでも知っている事ですわ。私が申したいのは、中身の問題です。いくら見目がよかろうが、中身が伴っていないのなら価値はありません。婚約は結婚の約束なのです。結婚して生涯添い遂げる。その長い道のりを一緒に歩んでいける。そんな人を悔いのないように選びたいではありませんか」
「もっともだ。私もそう思うよ。ぜひレティシア嬢とは仲を深めたいものだな」
「お気持ちだけありがたく。私はそろそろ失礼しますわ。あまり長居すると姉に申し訳ありませんからね。それでは、失礼します」
レティシアは礼を部屋を出て行こうとする。
「レティシア嬢、また話をしようではないか」
「機会があれば・・・ですね」
レティシアは別邸を後にした。
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次回
私の婚約者の座も空席だ。
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