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【ウィルフレッドside】怒られたって君がいい
しおりを挟む殿下に興味がないなら俺に興味を持って欲しい。
「だったら俺と少し話をしないか?」
「あなたと?別に話す事なんてないわ」
えっ・・・俺も殿下と同じなのか・・・
あっ、待ってくれ!まだ話がしたい・・・
「待ってくれ、礼が言いたくてこの半年、ずっと君を探していたんだ」
「・・・何のお礼ですか?覚えがありませんが」
覚えがない?あの時の事、忘れたとでも言うのか・・・
「・・・覚えていないと言うのか・・・」
「覚えていない方があなたにはいいんじゃなくて?」
確かに他に知られてしまえば醜聞になっていただろう・・・だが、俺には無かった事に何てできないんだ
「名前も知らない、素性もわからない、そんな令嬢一人を半年もかけて探す必要があったのですか?」
本当は半年もかけるつもりはなかったんだ。
「本当は、すぐ見つける事ができると思っていた。これでも近衛騎士の騎士団長だ。顔が効くし、縁談だってたくさんきている。情報は持っていたと思ってた。しかし、君が見つからなかったんだ・・・」
「だから?俺は引く手数多で大人気だって自慢しにきたの?それだけならもう行きますけど」
「自慢とかではないんだ!悪い・・そういうつもりでは・・・俺は・・・君を好きになってしまったんだ・・・この半年ずっと想っていた。一夜、たった少しの時間だったが、君に惚れてしまったんだ」
「簡単に惚れるのですね?」
「・・・いや、初めてなんだ・・・女性にこんなに恋焦がれるなんて・・・」
本当に初めてだ。これまで女性に対してこんな気持ちを抱いた事なんてなかった・・・
「そこまで想って頂いて、ありがとうと言うべきなのかしら?でも、お礼が言いたいなら手紙でもよかったのではなくて?」
「手紙か・・・でも、君が辺境伯のご令嬢だと知ったのはつい先日の事なんだ」
「私、別に隠れていたわけでもないのですけれどね・・・」
本気で探していた。君を求めていると言う事をわかってほしい。必死だったんだと、わかって欲しい。君が俺に少しでも興味を持ってくれるなら格好悪くてもいい。
「それなんだが・・・単純に俺のミスだ・・・」
「ミス?」
「あぁ、高位貴族は殆ど顔も名前も知っている。だから、公爵家、侯爵家、伯爵家と順に調べていっていたんだが、辺境伯を失念していた。だからこれまで時間がかかってしまったんだ」
「話にならないわ。辺境を何だと思っているの?それでもあなた騎士団長なの?」
・・・あっ・・・
「・・・すまない」
「辺境はね、国の攻防の要なの。辺境の騎士達は、毎日緊張の中、常に戦いを強いられているわ、王族や要人を護衛するだけが騎士の仕事じゃないの。辺境の騎士達はね、明日の命さえ危ぶまれる事だってあるわ。そんな事も王都では気にも留めていないのでしょうね。だから辺境が頭に浮かんでこなかった。あなたの言っている事はそういう事よ」
決して辺境を軽んじていたわけではないんだ!
「本当にすまない!」
「謝るべきは私にではないわ。毎日命をかけて戦ってくれているのは彼等騎士達だもの。私はただ、騎士の皆さんが過ごしやすいように、そして、街の皆さんが安定した暮らしを続けていけるように尽力をするだけ」
君はやはり素晴らしい女だ。俺は騎士団長失格だな・・・
「・・・俺は・・・今まで何を見てきたんだろうな・・・恥ずかしいよ。君の言う事は正しい。そして俺はあまりにも考えがなさすぎた。こんな俺が騎士団長だなんて笑わせるなって思うよな・・・」
「別に笑いはしないわ。だって、その地位はあなたが努力した証。これまでの事を認められた証なんですもの。別に恥じる事も卑下する事もないわ」
認めて・・・くれるのか?やはり君がいい。君しかいない。他の誰にも渡したくない。
「でも、騎士は王都の中心にしかいないわけではない。もっと広い視野を持つべきね。あなた、辺境の騎士に勝てる?きっと無理だと思うわ」
剣には自信がある。負けるはずがない。
「俺は剣には自信がある。実力で騎士団長まで上り詰めたんだ」
「じゃあ、一度手合わせしてみるといいわ。彼等が命を懸けて戦っている事がきっとわかるわ」
それでも俺は負けない。勝って、君に少しでも気になって貰えれば・・・絶対に勝つ。負けは許されない。
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次回
君は、婚約者はいるのか?
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