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アバンス公爵邸
しおりを挟む翌日、レティシアと辺境伯ギルベルトは公爵邸へと訪れていた。到着し、アバンス公爵邸の使用人に案内され玄関に足を踏み入れた瞬間、もの凄い勢いで何かが飛び込んできた。
「えっ!?」
「お会いしたかったです!お義姉様!僕、ルシアンです」
レティシアに抱きついてきたのは、歳の離れた、ウィルフレッドの弟だった。輝くような金の髪に、エメラルドのような瞳をキラキラと輝かせてレティシアを見上げていた。なんて可愛い天使なんだとレティシアは見入っていた。
「きゃー!可愛い!!」
誰かが心を代弁してくれたのかと思えば、公爵夫人が駆け寄ってきて、ルシアンごとレティシアを抱きしめた。
「ちょっと、何してるんですか!俺のシアなんですよ!離れてください、ルシアンも離れろっ!羨ましい事するな、俺もまだなのに!」
二人を引き剥がしたかと思うと、今度はウィルフレッドが抱きついてくる。ウィルフレッドは、ルシアンがレティシアの胸に飛び込んだのを見逃さなかった。子どもなのをいい事に、勢いでやったことをつい羨ましいと言ってしまった。
「ウィル、何が羨ましいの?」
「えっ・・・えっと・・・その、む、胸に・・・」
「こんな小さな子ども相手に嫉妬しないで」
ウィルフレッドはレティシアを抱きしめたままむくれている。
「お兄様酷い!」
「そうよ、私だってレティシアちゃん愛でたいのに!」
「ダメです!シアは俺の!俺だけのものです!」
そこへ公爵が呆れながらやってくる。
「おいおい、玄関で何やってるんだ・・・」
いつまでも続く攻防に、公爵が横やりを入れ、ひとまず休戦。応接室へと案内された。しかし、どう考えてもおかしい。ギルベルトの横に座ろうとしていたレティシアだったが、解放してもらえないのだ。
「ウィル、おろしてくれない?」
「嫌だ」
ウィルフレッドは、応接室に入るやいなやレティシアを抱き上げると、ソファに座ったギルベルトの横に腰をおろしたのだ。そう、レティシアを膝に乗せる格好で。
「辺境伯、息子が・・・なんかすみません」
「いいえ、ここまで娘を慕ってくれているのは嬉しいものですよ」
父親同士が苦笑いしている。
「それにしてもレティシアちゃん、可愛いわぁ!娘が欲しかったのがやっと叶ったわ!」
「僕も綺麗なお義姉様ができて嬉しいです!」
「妻も次男もこの通りです。本当にウィルフレッドと一緒になってくれるご令嬢がいるなんて、嬉しい限りです」
「アバンス団長ほどの方なら引く手数多でしょうに」
「いえ、息子は本当に結婚をしたがらなかったんです。縁談の釣書を見もせずに片っ端から断っていくものですから・・・親としては難儀な問題でした。それなのに、こんなに素敵なお嬢さんを連れてくるなんて・・・」
話は順調に進み、二人は晴れて正式に婚約者となった。
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次回
なっ、何言ってるんですか!ダメに決まっているでしょう!
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