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辺境伯の疑問
しおりを挟むウィルフレッドは自分の考えが甘かった事に気付かされた。ギルベルトは、騎士団が強ければという辺境伯ではなく、他国との外交も含めての辺境伯のあり方を示した。もちろん、ウィルフレッドが不足しているというわけではない。辺境としてはこれ以上にない申し分のない婿なのだ。しかし、辺境伯であるギルベルトは、アルバートの外交の手腕と、王族であるという事を大いに利用させて貰おうという算段なのである。
「私はまだまだですね・・・勉強になりました。これだから、いつもご令嬢に怒られてばかりなのです」
「そうか・・・そう言えば、娘とは辺境で会ったのが初めてでしたかな?」
「いえ、一年半前の夜会です」
「あぁ・・・私が無理矢理行かせた夜会だな。しかし、アバンス団長は警備や護衛などで娘と話す時間などなかったのではないですか?」
ギルベルトは軽い疑問のつもりであったが、ウィルフレッドは、何かを見透かされているような気持ちになり、ビクッと肩を揺らし、正直に話すべきなのか悩んでいた。
「お父様」
レティシアが呼びかけた事に、あの事を話すつもりなのかと内心冷や汗が出たが、同時に覚悟もした。もし辺境伯に怒りをぶつけられても甘んじて受けるつもりだ。
「ウィルは、あの夜会で私に一目惚れしたらしいのですわ。辺境の視察には、他の騎士様に無理矢理代わって貰ったらしいのです。どうしても私に会いたかったんですって」
にこりと微笑むレティシアに、ギルベルトも納得したようだ。そんなレティシアを見て、ウィルフレッドはやっぱり自分の妻になるのはレティシアしかいないと確信した。
「そうでしたか。毎日のように手紙が来ていたのでね、随分と熱心な令息がいるものだと思っていましたよ。アバンス団長からだと知った時には驚いたものです。一旦娘を辺境に連れ帰って、嫁がせる準備に取り掛かろうと思っておりましたが・・・気が変わりました」
「?・・・気が変わったとは?」
ギルベルトはレティシアに視線を向ける。
「レティシア、辺境の屋敷の荷物はこちらに送る手配をする。このまま王都に残ってもいいぞ?」
「ぜひ、お願いします!!」
「どうしてウィルが返事をしているの・・・」
「だって、シアと離れたくないんだ」
「はっはっはっ、よかったな、レティシア」
大笑いする辺境伯ギルベルト、満面の笑みを浮かべているウィルフレッド、そして、もう諦めがついたとばかりに苦笑いするしかないレティシアだった。
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次回
ウィル、何が羨ましいの?
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