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いたずらと甘いデート
しおりを挟む結局出かける前も、出掛けてからも、ウィルフレッドはレティシアから離れなかった。
「ブルーノの上、結構高いのね・・・?」
「怖いか?俺に掴まっててもいいぞ?」
「大丈夫。高いけど、風が気持ちいいわ」
そう答えたレティシアだったが、ウィルフレッドはつまらなさそうに口を尖らせる。ウィルフレッドの前に横向きに乗せられているレティシアは、馬の背に乗った高い位置からの視点に見慣れずキョロキョロしている。だからウィルフレッドの表情には気付かなかった。こっそり指示を出すと、ブルーノは両前足を高くあげ、地面に着地し身体を揺さぶった。
「きゃぁっ!!」
突然の事に、レティシアは驚いて、咄嗟にウィルフレッドの服を掴んでしがみつく。
「なぁ?だから言っただろう?危ないからしっかり掴まっててくれ」
満足そうなしたり顔を見せるウィルフレッドに、してやられたと口を尖らせるレティシア。それを見て、ウィルフレッドはちゅっと軽く触れるだけのキスをする。
「んっ!?」
そしてさらに揶揄っていく。
「そんなに口を尖らせて、キスのおねだりか?」
「ちっ、違うからっ!」
レティシアはウィルフレッドの服を掴むと、そのまま胸に押し付けて顔を隠した。手綱を握る反対の手で、レティシアをしっかりと抱き、ブルーノに歩を進めるように指示を出すウィルフレッド。
「すまん、あまりにもシアが可愛くてな」
満足そうに微笑んでいた。
小一時間ほどゆっくり進んで湖に着いた。澄み渡って輝く湖面にレティシアが感嘆の声を上げる。
「とても綺麗!ウィル、凄いわ!」
「喜んで頂けて何よりです、俺のお姫様」
レティシアがウィルフレッドの話し方がいつもと違い不思議に思って振り向くと、いつの間にか敷物も引かれ、準備が終わっていた。
「さぁ、お昼にしよう」
「えぇ」
二人は並んで座ると、お弁当を広げていった。
「おいしそうだな」
「ふふっ、何から食べる?」
「シアから食べる」
「・・・ウィルって、そういう事さらっと言える人だったのね」
「これはシアにだけだ。遠慮しないって言っただろう?遠慮してたら、求めてくれないって俺の愛しい婚約者がむくれてしまうからな」
「もう!むくれてるわけじゃ、んっ!?」
ウィルフレッドは隙をついてレティシアの唇を奪う。
「言った通りシアから食べたぞ?」
「はい!あーん!」
レティシアは、手にしたサンドイッチをウィルフレッドの口に無理矢理押し込んだ。
「むぐっ・・・ん・・・うん・・・おいしい」
「ふっ・・・ふははははは」
「どうしたんだ?」
「そこは怒るところでしょう?」
「なんでだ?シアにあーんして貰ってなんで怒るんだ?」
「ふふっ、はい、もう一回あーんして」
「あーん・・・モグモグ・・・これもおいしい。シアは料理の天才だ」
「大袈裟よ」
「いや、この味はシアにしか出せないぞ?シアは俺を喜ばせる天才か?俺を幸せな気分にする魔法でも使えるのか?」
「何よ、今朝は大泣きしてたくせに」
「・・・辛いこと思い出させるなよ・・・」
そう言うと、ウィルフレッドはゴロンと寝転がり、自らレティシアの膝に頭を乗せ腰に抱きついた。
「焦ったんだぞ?起きたらシアがいなくてさ・・・いつもは目覚めたら一番にシアがいるのに・・・それが当たり前になっててさ・・・昨晩の事で嫌われたのかと思って・・・」
「本当にびっくりしたわ。あんなに取り乱すなんて思ってなかったもの」
「今の俺には、シアがいないなんて、この世の終わりだぞ?」
「本当に大袈裟ね」
レティシアはウィルフレッドの髪を梳きながら、頭を撫でた。しばらくすると、ウィルフレッドは寝息を立て始めた。近衛騎士という立場上、いつ呼び出しがかかるかわからない緊張感の中、普段の眠りは浅い。しかし、レティシアに触れていると、ぐっすり眠ってしまう。それだけ安心できる相手という事なのだろう。
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次回
渡す機会が訪れなくとも、肌身離さず持っておくつもりだった
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