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互いの瞳の指輪
しおりを挟む数日が経ち、今日はウィルフレッドの休みに合わせて二人で街に出かけた。
「シア、行きたいところはあるか?」
「王都の街は殆ど来た事ないから、全てが新鮮だわ」
「そうか・・・じゃあ、あの店に入ろう」
ウィルフレッドがレティシアの手を引いてぐんぐんを進んで行く。ウィルフレッドが選んだのは宝飾店だった。
「これは、これは、ウィルフレッド様。お久しぶりでございます」
「あぁ、屋敷で会った以来だな」
「そうでございますね。それで、そちらが?」
「あぁ、俺の婚約者になったベルモンド辺境伯家のレティシア嬢だ」
「初めまして、レティシアと申します」
「そうでしたか・・・あっ、それであのアメジストを」
「?」
店主が含みのある言い方をするのをレティシアは不思議そうに見ている。
「そういう事だ。できてるか?」
「えぇ、ご準備できていますとも」
そう言った店主はいそいそと奥へと入っていった。
「できてるって?」
「手紙に書いただろう?シアの瞳の色にそっくりなアメジストを見つけたって」
「もしかして・・・」
「そう、店主に頼んで作って貰ってたのさ」
「ふふっ、そうなの?何を作って貰ったの?」
「出てきてからのお楽しみだ」
二人が話をしているところに店主が戻ってくる。
「お待たせしました、こちらです」
「これって・・・」
「俺達みたいだろう?」
「えぇ・・・」
ウィルフレッドとレティシアの前に出されたのは、指輪だった。シンプルなリングだが、レティシアの瞳にそっくりなアメジストとウィルフレッドの瞳にそっくりなサファイアが寄り添うように埋め込まれていた。
「いい仕上がりだ。シア、どうだろう?気に入ってくれたか?」
「本当に私達みたい。素敵だわ」
「綺麗なアメジストを見たら、シアの瞳をいつも思い出していた。渡す機会が訪れなくとも、肌身離さず持っておくつもりだった」
「・・・もちろんくれるのよね?」
「当たり前じゃないか。渡せる時が来たんだ。お揃いだ・・・つけてくれるか?」
「もちろんよ」
互いの指にお揃いの指輪がきらりと光る。
「これは婚約指輪だな。結婚指輪はまた贈るつもりだ」
「これで十分なのに」
「店主の目の前で、商機を潰してやるな」
「それもそうね」
「その時はぜひ当店で」
「あぁ、また頼む」
二人はお揃いの指輪をつけた手を繋ぎ、宝飾店を後にした。広場の噴水近くのベンチに腰をかけると、ウィルフレッドが飲み物を買ってくるといい、その場を離れた。レティシアは自身の指に光る指輪を眺め自然と顔が綻んでいた。
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次回
違うのよっ!団長様ではなくて・・・あなたを!・・・いやっ、いやぁぁぁぁ!
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