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私だって着飾りたい
しおりを挟むそれから何度かマダムマノアと公爵夫人は打ち合わせと商談をしていたようだが、当のレティシアにはドレスが出来上がるのを楽しみにしていてと言うばかりで、どんなものが出来上がるのかも知らされないままだった。
「・・・シア、これはどういう事かな・・・」
「どういう事と言われてもね。お義母様とマダムマノアからこれと言われて着替えさえせられたのよ」
「・・・母上もマダムマノアも何考えてるんだ・・・」
「・・・似合わなかった?」
「いや・・・似合ってる・・・似合っているが・・・これはダメだろう」
今夜は夜会の日。待っていたウィルフレッドの元に、準備を終えたレティシアが訪れた。レティシアが身につけていたのは、身体の線がはっきりとわかる、青いマーメードラインのドレスで、裾に行くほどに緩やかな広がりと、闇に溶け込むように段々と濃い青色から黒へと色づいたものだった。色に文句はないものの、レティシアの身体の線がはっきりとわかるという点で、ウィルフレッドは渋っているのだ。
「お義母様とマダムマノアが言うには、悩殺間違いなし・・・だそうなんだけど?」
「誰を悩殺させるつもりなんだ!これまでも十分に他の男達が見惚れていたというのに」
「まぁ、いいじゃない?」
「よくない」
「これでいいの」
「・・・複雑だ・・・」
「そうかしら?俺だけのものだって見せつけて、他の令息達に悔しがらせればいいんじゃない?」
「何故、そんな事する必要があるんだ」
「あら、その方が、相手も敵意を露わにしやすいわ。堂々とイチャイチャしていれば、我慢できずに何か仕掛けてくるはず。それをお義母様は見越していらっしゃるのよ。あんな女、王女であろうが公爵家にはいらないとおっしゃるんですもの」
「確かにいらない」
そこへ、タイミングを測ったように公爵夫人が現れた。
「ウィルフレッド、何があってもレティシアちゃんを守るのよ。あんな女、公爵家に二度と寄せ付けないで。自分が王族だからなんでも叶うと思っている。何の努力もしないで、願えば皆が動くし、何でも叶えられると思っている。虫唾が走るわ。アバンスの嫁の座は、レティシアちゃんただ一人。ウィルフレッドをこんなに手懐けたんですもの」
「えぇ、言われなくとも必ず守りますよ。ただ・・・母上、このドレスはちょっとやりすぎでしょう!」
「いいじゃない!可愛い義娘を着飾って何が悪いのよ」
その後もしばらく親子喧嘩が続いていた。
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次回
【クラウディアside】
こんな時でさえ、お姉様なんだわ・・・
私はお姉様と間違えられただけ
しばらくアバンス公爵夫妻の馴れ初め?若い頃の話が続きます
公爵夫人クラウディア(ウィルフレッドの母)は幼い頃にアバンス公爵家のディアルドに恋をしますが、側にはいつも美しい姉がいます。マダムマノアの若かりし頃に、誰にも負けない、クラウディアでなければいけないの。ディアルド様にふさわしい女になりたい!と言っていたクラウディア。この頃はまだディアルドに恋をし、まだ姉との比較に卑屈になる前の頃。学園に入る歳が近づいて来た頃に、ディアルドと姉クリスティアが一緖にいるのを度々見かけ、辛くなり領地に引きこもります。ディアルドもまた、幼い頃に参加した茶会でクラウディアが気になるも、会えない期間で恋を募らせていきます。互いに片想いと思ったまま成長した二人。今は仲睦まじいアバンス公爵夫妻ですが、どのように心を通わせあったのでしょう?まるで若い頃のあなたのよう・・・何が?
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