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ある男の勘違い
しおりを挟む「待ってましたよ」
国王と別れ、王宮の通路を歩いていたウィルフレッドとレティシア。通路の壁に背を預けた男性が声をかけてきた。
「はじめまして、私はセオドリック」
レティシアに向けてニコニコと名を語った目の前の男。聞いた名にウィルフレッドはピクリと反応を示す。
「何故、あなたが・・・」
「ん?君は姫の護衛騎士・・・かな?まぁ、いい。姫、私とお話ししませんか?」
ニコニコと笑顔を向け、セオドリックはレティシアの返事を待つ。
「誰かとお間違いでは?」
「間違うも何も、私は君と話がしたい。名を伺っても?」
「レティシアと申しますが?」
レティシアはウィルフレッドの反応から見るに、この男はどこぞの高位貴族の令息・・・もしくは王族であるだろうと予想がついた。見たところ、レティシアと同じ歳程の相手に、ウィルフレッドが相手の出方を伺っているからだ。レティシアは表情を変えることもなく、ただ相手をじっと見つめていた。
「そんなに見つめられると・・・ますます君に惚れてしまいそうだ」
「シア、あんまり見るんじゃない」
「・・・シア?君達は愛称で呼ぶような仲なのか?姫に護衛騎士・・・婚姻前から愛人を囲うとは、姫は余程夫となる男を嫉妬させたいらしいな」
「夫を嫉妬させたいですか・・・もう十分されているので間に合ってますわ」
「ふっ、愛人に嫉妬されてご満悦なのか・・・そんな愛より、本当の愛を教えて差し上げますよ?与えるばかりではなく、与えられる喜びも知らないと、ね?」
セオドリックはコテンと首をかしげ、レティシアを見ている。
「ん?レティシア嬢とウィルフレッド、帰ったのかと思っていたが?」
「陛下」
ウィルフレッドが頭を垂れる。
「あぁ、陛下。こんなにも美しい姫がいて、私に内緒にするなんて酷いですね。私が嫁探しに来ているのはご存知でしょう?なぜ1番に紹介してくださらなかったのですか。こんなに美しい姫は、嫁に出さず、愛人でも囲っておけば自国に留め置けるとでもお考えですか?そんなの女性の幸せとは言えませんよ。彼女は愛されるべきだ。本当の愛を知るべきだ」
「その必要はない」
国王レオナルドは、目の前のセオドリックが、先程からレティシアの事を姫と呼ぶ。騎士団長に護衛されながら通路を歩く美姫に見えたとの事だろうと予想はついた。
「あの・・・」
レティシアが口を開く。
「なんだろうか、美しい姫君よ」
「愛人・・・使い方は間違っていますが、愛する人というのなら間違いではありませんわね。ウィル・・・」
ウィルフレッドが強く握りしめていた手をそっともう片方の手で包む。
「・・・シア」
「ウィル、お腹すいたでしょう?」
「・・・へっ?」
なんとも色気のない話に変わり、ウィルフレッドは困惑した。目の前のセオドリックも、何を言い出したんだ?と口を開けてポカンとした。
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次回
・・・そう言うことか?
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