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ぐずぐずの誓い

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頬に触れていたレティシアの手のぬくもりが感じられなくなり、焦ったウィルフレッド。


「誓ってくれるわよね?」

「えっ?」

「ずっと、一緒にいるって、私だけを愛してくれるって」

「・・・もちろんだ、でも・・・」

「でも?」

「・・・」

「言って」

「・・・俺で・・・いいのか?夫になっていいのか?夫でいていいのか?」


涙が溢れて視界が揺らいでいるウィルフレッドは、レティシアの言葉を待つ。レティシアはウィルフレッドの瞳をじっと覗き込むと、ゆっくりと口を開く。


「・・・そんなに知りたければ教えてあげるわ。あなたを夫にすると決めましたの。私の未来の夫はウィルフレッド・アバンス。この国の近衛の騎士団長様ですわ」


レティシアの言葉はいつかの夜会で、ヴィンセントの求婚を観衆の前で断り、ウィルフレッドを選んだのだと言った言葉のようであった。


「・・・しあぁぁぁ・・・うわぁぁぁん・・・」


ウィルフレッドは、泣きながら、崩れ落ち床に座り込んだ。部屋を覗き込んでいた騎士団員達からは、ウィルフレッドの姿は机に隠れて見えなくなってしまった。そしてウィルフレッドに合わせるようにレティシアも床に膝をついた為、表情は伺えない。


「ウィル、あなたは生涯、レティシア・ベルモンドを妻とし、愛し続けると誓いますか?」

「・・・はいっ、誓い、ますっ」

「よく言えました!」


レティシアはウィルフレッドの髪を梳くように頭を撫でた。ウィルフレッドはたまらず、目の前にあったレティシアの胸に顔を埋めるようにしてその身を抱き寄せた。


「・・・シア、綺麗だ・・・」

「ふふっ、やっと褒めてもらえたわ。あぁ、長かったぁ、長時間このドレス着てるの疲れたのよ?」

「・・・ごめん・・・」

「ねぇ、帰りましょう?」

「・・・しかし・・・」


レティシアはウィルフレッドの腕に捉えられたままの体勢で、ぐっと姿勢を正すと、扉の向こう側に話しかける。


「こんな騎士団長、役に立たないわよねぇ?」

「えぇ、本当に」


誰かわからないが、騎士の一人がレティシアの問いかけに応える。そして、次の瞬間、執務室に、20人ほどの騎士達がなだれ込んできた。


「団長、おめでとうございます」

「いやぁ、結婚式参加できないから残念だと思ってたんですけど、ラッキーでした」

「幸せのお裾分けありがとうございまーす!」


騎士達が、姿が見えないままのウィルフレッドに声をかけていく。


「・・・お前達・・・」

「皆さん、ウィルのこの書類は、急がないとダメなもの?」

「いえ、団長でなくともいいんですが、副騎士団長が不在の今は、第一隊隊長でも可能です。しかし、緊張の場面に居合わせたことで、三日の休暇を言い渡されております・・・ので・・・」

「それは問題ないよ」

「?」


部屋の外から覗いている騎士達の後ろから声がした。そしてその人物は、騎士達の間をぬって、部屋へと入って笑顔で微笑みかけていた。




ーーーーーーーーーーーーーー

次回

騎士の皆さんにお伝えしないといけない事があったのよ




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