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兼任で代理
しおりを挟む「それは問題ないよ」
声がした方を見れば、騎士の間をぬって第二王子アルバートが部屋へと入ってきた。ウィルフレッドは床に座り込んだまま、レティシアの腰にしがみついているが、誰が来たのかは声でわかった。
「・・・アルバート殿下」
「ウィルフレッド、この度は大変だったな。いろいろありすぎた。父上も、お前を心配していたよ?ふっ、まだ騎士団の詰所にいるって報告がきた時は、どうしようもない奴だなって、呆れたよ。そんなに他が信じられなかったか?それとも、令嬢に合わせる顔がなかったか?」
「・・・後者です・・・」
「バカだなぁ・・・レティシア嬢が・・・いや、もう、小公夫人か。夫人がウィルフレッドに愛想を尽かすわけないだろう?」
「そんな事っ!わからないじゃないですか!」
「いや、わかる。愛想を尽かすと言うなら、とっくの昔にそうなっているさ。今も尚、お前の腕に囚われていてくれる彼女は、間違いなくお前だけを愛しているし、お前の事だけを想っている。兄上が何度も振られたように、お前にしか興味がないんだ。何も不安になる事も、卑屈になる事もないんじゃないか?」
アルバートの言葉を聞き、ウィルフレッドは、ようやく涙が止まった瞳で、レティシアの事を見上げた。
「そうよ、ウィル、あなただけ。ウィルだけなのよ?」
「シア!!」
「うっ・・・苦しいわ・・・」
「あっ・・・すまん!」
未だ顔の見えないウィルフレッドに、苦笑いしながら、アルバートは言葉を続ける。
「ウィルフレッド、父上から、お前に10日の休暇を与えると伝言だ。その間は僕が騎士団長と副騎士団長を兼任する。騎士としての仕事はできないが、組織を動かすにはうってつけだろう?」
「殿下・・・」
ウィルフレッドはゆっくりと立ち上がると、レティシアを支えて立ち上がらせる。ウィルフレッドは、アルバートに向き直ると、深く礼をし頭を上げた時には、決意に満ちた表情をしていた。
「ありがたく休暇を頂きます」
「あぁ、ゆっくり休んでくれ。マクシミリオンとレイバンの件はお前が戻ってから進めるとする。それまでは、何も手を加えないよ」
「ありがとうございます」
真っ直ぐアルバートの顔を見ていたウィルフレッドの表情には、もう迷いはなかった。再度深く礼をしたかと思えば、レティシアは異変に気付く。身体が宙に浮いている。
「えっ?」
「シア、帰ろう」
礼から身体を起こすと同時にレティシアを横抱きにして抱えていたのだ。ゆっくりと歩き出したウィルフレッドは、執務室を出るために入り口へと向かう。
「あっ、そうだった!」
「どうしたんだ、シア?」
「騎士の皆さんにお伝えしないといけない事があったのよ」
「何だ?」
レティシアが何を言うのか何も検討がつかなかったウィルフレッドは、首を傾げてその言葉を待っていた。
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次回
皆には負担を強いるが、戻るまでしっかり頼んだぞ
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