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差し入れ
しおりを挟む「皆さんに差し入れがあるのです!」
レティシアの言葉に、騎士達が沸き立つも、ウィルフレッドは少しばかり不機嫌になる。差し入れという言葉に、受け取るのは自分だけだと思っていたからだ。
「ウィル、なんて顔しているのよ」
「だって、差し入れって・・・俺だけじゃないって事になる・・・」
「何も個人的になんて言ってないわ。食材が無駄になってもダメでしょう?」
「食材?」
「えぇ、結婚式のあとのパーティで出す予定だった、料理用の食材よ。傷みやすいものもあるみたいで、料理長が頭をかかえていたわ。だから、つまみやすいものにしてもらって持ってきたの。騎士様達も、今回の事で、普段の職務に増して仕事が増えているはずよ?だから、皆さんで食べてもらえば解決すると思ったの」
「そういう事か・・・よかった」
「よかったって?」
「何でもない。だったら、シアからじゃなくて、公爵家からという事だな?」
「えぇ、そうよ」
「ならいい」
満足気な顔になったウィルフレッドは、集まっていた騎士達に声をかける。
「みんな、迷惑をかけた。料理は公爵家からだ。みんなでつまんでくれ。悪いが、10日の休暇をとらせて貰う。皆には負担を強いるが、戻るまでしっかり頼んだぞ」
「はい!」
「お任せくだい!」
「団長、ゆっくり休んでくださいね」
「ありがとうございます!」
騎士達がそれぞれに言葉をかける中、ウィルフレッドは嬉しそうに抱きかかえたレティシアを見つめながら歩いて行った。部屋を出る瞬間振り向き、アルバートへと向き直る。
「殿下、この度はご迷惑をおかけします。よろしくお願いします」
「あぁ、頼まれたよ」
ウィルフレッドとレティシアの姿を見えなくなるまで見つめていたアルバート。あれが自分の義理の妹夫婦なのだと穏やかな目で見つめていた。いつしか自分の愛するマリーリアも、あんな風に真っ直ぐ思いを告げてくれる日がくるだろうかなどと思いを馳せながらも、自分が想いをぶつけすぎて、結局独りよがりになってしまいそうだななどと考えていた。自分達の結婚式は、皆から祝福を受けることができるよう、それまでの日を楽しみに、そして周りにも尽くしていこうと決めたアルバートだった。
「さて、騎士団長代理として仕事するかな・・・まずはこの書類の作り直しからだね」
アルバートが見下ろす机の上には、ウィルフレッドが涙で濡らして行った書類の跡が残ったままだった。
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次回
お義父様、お義母様、ただいま戻りました
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