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意気消沈している息子に
しおりを挟む「ねぇ、ウィル」
「何だ?」
「そろそろ降ろしてくれないかしら?」
「断る」
「そう・・・」
執務室からレティシアを抱えて出てきたウィルフレッドだったが、離す気はないらしい。結局馬車の中でも膝の上に乗せてレティシアの肩に頭を預けている。
「・・・こんなに綺麗なシア、少しでも手を緩めたら、横から掻っ攫われそうだ・・・」
「大袈裟ね」
「大袈裟なんかじゃない・・・どれだけの騎士達が頬を赤らめて見ていたか・・・」
「だとしたら何なの?そんなのちっとも嬉しくないわ」
レティシアの言葉を聞いても、不安は拭えないもので、肩や首に頭を押し付けて甘えている。しばらく馬車を走らせると、屋敷へと着いたようだった。馬車が屋敷の前につけたのを家令が気付いたのか、公爵夫妻が玄関前で出迎えた。
「ウィルフレッド、レティシア」
「二人とも、おかえりなさい」
「お義父様、お義母様、ただいま戻りました」
「・・・」
ウィルフレッドは、レティシアを後ろから抱きしめ、肩に額を押し付けて顔を隠している。両親に合わせる顔がないのだろう。
「ウィルフレッド、王宮はどうなった?」
「・・・片付けてきました。陛下も・・・無事です」
「そうか。それは一安心だ」
「・・・」
「ウィルフレッド、レティシアちゃんも疲れてるわ。早く部屋に戻って、メイドにドレスを解かせなさい」
「・・・はい」
ウィルフレッドは、力なく返事をすると、再度レティシアを抱え二階の自室へと、とぼとぼと歩いていった。
「随分と堪えているようだな」
「えぇ・・・誰よりも結婚式を楽しみにしていたのだもの。ようやくレティシアちゃんを名実ともに自分のものにできるってあんなに喜んでいたのに・・・」
「結婚式・・・やり直しさせてやりたいがな・・・」
「そうね・・・でも、あれだけの規模の結婚式を再度準備するには時間が必要よ。参列してくださる方々も、急には都合はつかないわ」
「そうだな」
「それに、レティシアちゃんがやり直しはしないと言ってるのよね・・・」
「あぁ・・・可哀想だが、こればかりはな・・・」
公爵当主ディアルドと、夫人のクラウディアはとぼとぼと歩いていく息子の後ろ姿を見つめながら感傷に浸っていた。王宮で事件があった事は緘口令が敷かれ、貴族達は知らない事実。どこからか噂で漏れる事もあるだろうが、それまでは、公にはできない事実なのだ。だから、結婚式を中止せざるをえなかった公爵家としては、王宮が大変な状況にある時に、表立って祝杯をあげることはできないとの判断をせざるをえなかった。その事に、公爵夫妻は心を痛めていた。
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次回
なんか凄いもの見ている・・・
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