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花嫁は銀の女神

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王宮であったことは緘口令が敷かれる。その為詳細を語ることができないウィルフレッドは、両親に合わせる顔がなく、どんな言い訳も思いつかなかった。今はただただ、腕の中にいる愛しい花嫁を逃すまいと必死に捉えている事でしか自分を保っていられないのだ。


「ウィル、ドレスを脱ぐから少しだけ離れてくれる?」

「嫌だ」


メイド達が、公爵夫人の指示で二人の部屋に来たのだが、ウィルフレッドがレティシアを抱えたままソファから微動だにしない。ドレスを脱ぎたいレティシアだったが、無理矢理抜け出すのも無理そうだと早々に諦めた。少しでも腕の中から抜け出そうとすれば、途端に力が強くなり、結局動けなくなってしまったのだ。膠着状態のまま、メイド達はおろおろと困っている。


「ウィル、疲れてるの。一緒に湯あみしましょう?」

「・・・あぁ・・・」

「・・・」

「・・・」

「ドレス脱がないと湯あみできないわ」

「・・・」

「ウィル?」


無言で暗い表情のまま固まっている顔を覗き込んだレティシアに、ウィルフレッドはちゅっと軽くキスをした。そしてはじめて腕を緩めたのだ。


「ありがとう、ちょっと待ってて」


メイド達がレティシアの私室に促したが、レティシアが横に首を振る。レティシアが腕の中からいなくなった事に、絶望したような表情のウィルフレッドがいたのだ。これは姿が見えなくなると再起不能になる。そう思ったのである。だから部屋には戻らず、目の前でドレスを解いてもらう事にしたのだ。


「・・・シア・・・」

「何?」

「なんか凄いもの見ている・・・」

「ん?あぁ・・・目の前でドレス脱ぐなんて事、普通ないからかしら?」

「俺の目の前で銀の女神がどんどんその身を露わにしていくんだ・・・」

「まったく、何言ってるのよ」


メイド達も、苦笑しながら微笑ましく二人を見ている。


「だが、普通、花嫁との初夜って、互いに湯あみして寝室に入って、夜着がとか、バスローブがとか・・・そんな感じだと思ってたんだが・・・」

「その方がよかった?」

「いや、姿が見えなくなるのは困る」

「じゃあ、仕方ないじゃない?目の前にいた方が安心するんでしょう?」

「あぁ・・・さすがシアだな・・・俺の事よくわかってるんだな・・・」

「わかりやすいわよ?」

「そうか・・・」


ウィルフレッドと話しながら、メイド達に成されるがままドレスを解いてもらう。全て取り払われ、髪の飾りもとり、レティシアの銀の髪がサラリと落ちてきた。下着だけになったレティシアの姿をぼうっと見つめていたウィルフレッド。


「ねぇ、湯あみしましょう?もう、疲れちゃった・・・お湯に浸かったら眠っちゃいそうだわ。しっかり支えといてね?」

「あぁ、わかったよ」


にへらっと表情を緩めたウィルフレッドはレティシアを抱えあげると、続き間のバスルームへと向かった。メイド達は二人の後ろ姿に礼をし、寝室を出ていった。





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次回

ちゃんと結婚式したい






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