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休暇二日目④西の辺境、カルスヴァ
しおりを挟む道中、王宮であった事、北の辺境での小競り合い、師匠でもある西の辺境伯の怪我。今回の事件の詳細を語ったウィルフレッド。心に抱えていたおもりが消え、随分と軽くなったようだった。
「話して少しは楽になった?」
「・・・あぁ・・・もしかしてそのために話せと言ったのか?」
「そうよ?事件の内容を聞いたって、私にできることなんてないわ。一つだけいい情報を貰ったけど」
「なんだ?」
「まだ秘密」
「秘密は嫌だと言っただろう?教えてくれ」
「ふふっ、ウィルが騎士団長を辞めるために必要な事とだけ言っておくわ」
ウィルフレッドははぐらかされたようで、むすっとした顔で拗ねていた。
「もうじき西の辺境伯の領地に入るぞ」
「そうなのね」
二人の頬をさらりと気持ちのいい風がふれていく。
「ゲオルグ様、怪我の様子どうかしらね・・・お話できればいいのだけれど」
「師匠は強い方だ。きっと笑って出迎えてくれるさ」
白馬のブルーノはどこへいっても視線を集めてしまい目立ってしまう。辺境の領民達もあれは誰だと気になっている様子だ。東の辺境領は視察に行ったことで、ブルーノという白馬がいることを領民達は知っている。それに跨るのは騎士団長であるウィルフレッド・アバンスだという事も。だが、西と北の辺境へは、ブルーノを連れてきたことはない。領民達は白馬が珍しく、それに跨るのは見目麗しい男と、銀の髪がキラキラ光る、さながらお姫様のような女。物語からでてきたような光景に視線を奪われている者も多かった。
「やはりコイツでは目立つな・・・」
「ふふっ、ブルーノの毛並みは綺麗だものね」
「シアの方が綺麗だぞ?」
「毛質が?」
「ブルーノと比べるな」
「ふふっ」
格好は平民か、裕福な家庭の子息に子女といった感じだが、二人から溢れる気品は隠せない。王都の時と同じように、随分と視線を集めていた。
「着いたぞ。ここが西の辺境伯の屋敷だ」
まるで城塞のように頑丈な塀に囲まれ、華美ではないが、大きな屋敷があった。広大な土地に屋敷と、騎士団の詰所、訓練所、騎士達の寮。まるで実家の東の辺境のようだとレティシアは思っていた。ウィルフレッドはひらりと馬から降りると、門番の騎士に声をかけていた。
「西の辺境伯に取り次ぎ願いたい。近衛騎士団、団長のウィルフレッド・アバンスだ」
「近衛の騎士団長様!?た、確かに白馬はその証明だと聞いたことがあります・・・少々お待ちください!」
門番の騎士は急いで屋敷へと走って行った。それもそのはず、二人が西の辺境へと訪れたのは突然の思いつきで、レティシアが提案した事にすぎない。連絡を入れている暇もなく、そのまま来てしまった。受け入れる事ができなければ、そのまま西の辺境で宿を取ろうと考えていた。
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次回
お、奥様!大丈夫ですか!?だ、誰かメイドはいないか!
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