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休暇十日目②何度目のため息

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朝食の間もずっとため息をついているウィルフレッド。その様子を見ていた老執事が何かあったのかと不思議そうな顔をして見ていた。


「坊っちゃま・・・?若奥様、坊っちゃまはどうなされたのです?」

「ごめんなさいね。王都に帰りたくないと駄々をこねていたのよ」

「それは、それは」

「別に王都に戻るのが嫌なわけじゃないんだ」

「では何故です?」

「王都に戻れば騎士として復職するだろう?だからだ」


執事はそれの何がこんなにため息をつき続けるほどの事なのかと理解ができずにいた。


「ウィルは、騎士として戻ることが嫌というわけじゃないのよ。騎士団長として復職すれば、王城に出仕する事になるでしょう?だから」

「なるほど。若奥様と一時も離れたくないと」

「やっと分かったのか」


ウィルフレッドはニコニコと見てくる老執事を睨みつけるように視線を送り不貞腐れている。


「考えてもみろ。北の辺境の師匠だって、好きな女を娶って毎日一緒にいるだろう。師匠だって騎士達の鍛錬なんかも行ってはいるだろうが、公爵邸から王城に出仕している俺とは違って、すぐそこにある屋敷に奥方がいるんだぞ?王城みたいに厳重な警備があって入りづらいなんてないし、会いたければ稽古を切り上げて帰ればいいんだから。だが、俺はそうもいかなくなる。小さな騎士団ではない。近衛を束ねている上に、下に位置する騎士団との連携も必要だ。仕事に忙殺される上に、陛下や殿下の動きにその都度仕事を変更せざるを得ないことだってある。俺は近衛騎士で、その上騎士団長でい続ける必要があるのか?辞めたい。辞めて毎日シアと一緒にいたい!」


捲し立てるように次々と思いの丈を口にしたウィルフレッド。レティシアは苦笑いしながら見ていたが、執事はまるで子どもが他と比べて駄々を捏ねているような様子に正直驚く。その後も、ずっとため息ばかりついて一向に持ち直す様子もなかった。だが、時間は刻々と過ぎていくわけで。


「皆様、数日でしたけれどお世話になりましたわ」

「何もできませんで。ぜひいつでもいらしてください」

「そうですよ、若奥様。ミルクもお待ちしておりますわ」


ミルク。あの胸の大きなメイドに抱かれた白猫だ。あれから結局メイドから離れず、ずっとまとわりついているらしい。ミルクと名付けられた猫はこの屋敷で飼い猫となることになった。レティシアはなんとも複雑な気持ちだったが、その様子に気付くとウィルフレッドが存分に甘えてくる。まぁ、それも悪くないかと思いながらニコリと微笑みだけを返した。そして二人は愛馬のブルーノと共に帰路についたのだった。





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