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今朝何があったんだ?

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「それで?」

「はい?」


 アルバートはまだ何かを待っているような様子だ。ニヤリと浮かべた笑みは十日間の事を聞こうとしているのかウィルフレッドにはわからず困惑の表情だ。


「今朝何があったの?ウィルフレッドの事だから、夫人にべったりで離れたくないなんて言って時間がかかるものだとばかり思っていたが?」

「あぁ、その事ですか」


 ウィルフレッドは今朝の出来事を口にしようとし、思い出しただけで笑みが溢れた。


「何かいい事でもあったという感じだね?」

「えぇ、聞いてくれますか!シアが、シアが泣いたんですよ!」

「それがどうしたんだ?」

「その理由がまた可愛くて!俺が久々の登城に意識をそちらに向けてないと、また行きたくないと駄々を捏ねてしまいそうだったので、早朝、まだシアが眠っている間に庭に出て剣を振るっていたんです。寝室に戻ってきたら、シアが起きていて、随分と小さくなっていたものですから、どうしたと声をかけたところ、振り向いたシアが俺の顔を見て泣いたんですよ。どこか痛むのかと聞きましたら、胸だと。はじめ、心臓が痛むのかと慌てましたよ」

「病気ではなかったんだな?」

「えぇ、起きたら俺が横にいなくて、常備しているこの剣も見当たらず、また火急の呼び出しがあったのかと思ったらしいのです。今回の事は、俺だけが落ち込んでいたんだと思ってましたが違いました。少なからずともシアの心にも影を落としていたんです・・・しかし、何があっても気にしていないようなシアだったのに、俺がいないだけで泣くなんて!可愛いにも程がある!その後にポカポカと胸を叩かれたんですが、こんな子どものようなところもあったのかと驚いたぐらいです。しかし、それすらも愛おしくて!」


 捲し立てるように勢いよく語るウィルフレッドは、アルバートに前のめりになり今にも詰め寄ってきそうだ。流石のアルバートも、これには若干引き気味である。


「しかし、愛しい者の涙とは嬉しいと思うものか?僕は愛しいマリーリアには涙なんか流させたくないけどなぁ」


ウィルフレッドが訴えてくる事がわからないとでも言いたげに、アルバートは腕を組み、考える素振りを見せるが内心は納得がいかないようだ。


「その感情を、表情を見せるのは俺の前だけだと言う事が、この上なく嬉しいのです。なんだっていいんですよ。それが例え怒りでも」

「怒りでも?」

「えぇ、無関心なんかより断然いい。どんな感情であれ、俺に向けられているだけで嬉しいものです」


アルバートは、その考えからすると確かに一理あると思った。マリーリアのいろんな表情を見てみたい。そんな事を考えていた。






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