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吉報と最後通告

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だが、アイオロスは言えなかった。やはり望んでいい相手じゃない。アイオロスに踏み出す勇気はなかった。


「そういえば、さっきそこでミリア嬢に会った」


何故ここでミリアの名が出たのか。アイオロスは焦燥感に駆られる。


「随分とご機嫌だったものだからつい良い事があったのか?と聞いたんだ」


アイオロスは何も言わずただジッと聞いていた。その次の言葉を待っていた。


「お気に入りの騎士を見に来たらしい。たっぷり見て、目もあったんだと大層嬉しそうだったな」


自身も確かに目はあった。だが、他にもいたのかもしれない。知りたいような知りたくないような、アイオロスは目を逸らした。そしてウィルフレッドはと言うと。その表情を見逃していなかった。


「そういえば、宰相が、ミリア嬢になかなか婚約者ができないと嘆いていてな。近日中にお見合いの場を設けるみたいなんだが、その相手で宰相は決めたいらしい」


アイオロスはバッと顔を上げた。婚約者が決まらないと言う事は、婚約者がいないと言う事。それだけならば吉報だった。だが、その見合い相手と結婚が決まる・・・アイオロスにとって最後通告のようなものだった。もうミリアは手に入らない。望む事さえできないと、失意のどん底に落ちてしまった。


「そう、ですか」


ウィルフレッドは昨日屋敷に帰ってからレティシアに話をしていた。アイオロスを副騎士団長にする事、そして宰相の娘であるミリアとの縁談の話。もちろんレティシアは喜んだが、言われるがままに縁談を進めないで欲しいと前にも言っていたが、ミリアには望まれて結婚をして欲しいと思っている。アイオロスは伯爵家からの縁談がくれば断れなくなってしまう。そんな縁談ではミリアは本心から喜べない。きっと二人とも遠慮してしまう。ミリアがいいのだとアイオロスに言わせたいのだと言う。


「それはそうと、お前も平民出身ではあるが、副騎士団長という肩書きが着いたんだ。これから女性が寄ってくるぞ?いい相手をしっかりと選べよ」


ウィルフレッドは執務室に戻るといい去って行った。


「・・・一体誰を選べって言うんだよ・・・ミリア嬢はもう・・・」


ウィルフレッドが去って行った方向をジッと見つめながらアイオロスは静かに呟いた。



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