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夢と変化

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アイオロスはその後、何も手につかないまま騎士団の寮へと戻ってきた。食事を口にするも、中々進まない。これではダメだと首を横に何度も振って食事をかきこむ。


「俺は何をやってるんだ・・・」


近衛として私情に気持ちを揺らしていてはいけない。こんな事では副騎士団長など務まるものかと自分を律した。アイオロスはゴロンと寝台に仰向けになる。目を閉じれば笑顔のミリア、恥ずかしがるミリア、小首をかしげるミリア。どれもこれも鮮明にまぶたに焼き付いている。そうだ、夢でならいくらでも会える。夢に出て来てくれればいいのにと切実に願いながら、気付けば寝息を立て始めていた。






『隊長様なら大丈夫ですわ。この私が保証します』





『じ、自信を失ったら、また私が付けて差し上げますわ』





『アイオロス様』




「・・・はっ!?・・・あぁ・・・夢・・・か・・・」


夢なら覚めないで欲しかった。もっとミリアのコロコロ変わる表情を見ていたかった。白み始めた窓の外を眺めながら、アイオロスは寂寥感せきりょうかんさいなまれていた。それからしばらく、騎士達に稽古を付けている間も、自身の鍛錬中も、王宮に出入りをする際も、街に出ても、いつもミリアの姿を探してしまう。いるはずないのにと心ではわかっている。でも一目でもいい。姿を見て、いや、欲を言えば会って話がしたい。挨拶だけでもいい。ミリアの声が聞きたい。遠くから眺めているだけだけの彼女だったのに、近くにいて目を見て、会話をする。その喜びを知ってしまった以上、知らなかった時にはもう戻れないのだなと痛感していた。数日前にはなかった事。アイオロスは俯いて深いため息をつく事が増えていた。ミリアと話をしてから数日が経ったある日、アルバートの護衛で街に出る。やはりいつもの通りにミリアの姿を探してしまっていた。


「アイオロス、どうした?」

「へっ?あっ、いえ、申し訳ありません」

「誰か探しているのかい?」

「・・・不審な者がいないか確認をしていただけです」

「そうか」


アルバートはアイオロスの様子に気付いていた。警護の意味で周りを注意深く見ていたのではなく、誰かを探すように女性ばかりを見ていた事。それが随分と必死な様子である事。数日前までにはなかった事だ。アルバートが知る限り、ウィルフレッドとレイバンの教えを忠実に守る生真面目な性格のアイオロス。注意が散漫になったり、職務中に他の事に気を取られるなどと言う事はこれまでにはあり得なかった。それだけ縁談をチラつかせた事が彼に何か変化を与えたのだろうと。




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