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国が欲しいのか
しおりを挟む「ククッ・・・乗っ取るとは随分な物言いだな」
ウィルフレッドとレティシア、宰相は、三人の出立を見送り終えると、そのまま国王の元へと戻った。今目の前で笑いを堪えているのは国王だ。
「それにしてもどうしてそのような事になったのだ」
「陛下と・・・その話をしていたのではないのですか?」
「私とか?」
ウィルフレッドは、自身が離れている間に国王がレティシアを横取りしようとしていたと盛大に勘違いした。その時の込み入った話の中に、そのような話も出たのだと思い込んでいた。
「私はそのような話をした記憶はないが?」
「私も陛下とはそんな話はしていないわ」
「・・・そうか」
「ふっ・・・全く夫人は面白い考えを持つものだな。私からの褒美など全て断るのだろう?なんだ、欲しいものを聞かれたら、『国』だと答えるのか?」
「別に国が欲しかったわけではありませんわ。もし手に入るならそれはたまたま手に入れただけという事です」
「して・・・何か仕掛けようと考えているのか?」
「今はまだ・・・いずれ、三人が何か突破口を見つけてくれるような気がするのです」
レティシアは国王に向かってにこりと笑う。
「三人も嬉しかろう。罪を犯した者、実の家族にさえ期待されていないかった者。様々ではあるが、そなたからの信頼の言葉が何よりも糧になるだろう。きっと、期待に応えてくれるだろうな」
「えぇ、そのように思います」
「ウィルフレッド」
国王に声をかけられたウィルフレッドは、いまだにレティシアを後ろから抱きしめている。国王の御前だという事はもうどうでもいい事のようだ。
「はい」
「いい妻を迎えたな」
「はい、誰にも譲れない、いい妻です」
うん。国王は、深く、嬉しそうに頷いた。
「宰相、そなたの所も無事、いい婿が迎えられそうで何よりだ」
「えぇ、ようやく肩の荷が降りたというものです。平民出身ではありますが、彼は品行方正で、清廉で、とても真面目な青年・・・だったのですが」
「ん?」
宰相は良い婿を迎えられるとホッとしていたはずだ。何故かどうしたものかと困り顔である。
「どうしたのだ、宰相?」
「いや・・・仲がいいのは良い事。政略結婚なら尚更ですが・・・いささか、アイオロス君の態度が急変しましてね・・・」
「態度が?急変とはなんだ?」
国王は何があったのだと純粋に疑問を投げかるが、それを聞いていたウィルフレッドとレティシアは笑いを堪えている。ミリアに遠慮しなくなったアイオロスは素直に、真面目に、そして真っ直ぐに、ミリアに愛を請う。その様子を宰相が困り顔で居た堪れない様子でいるのを想像して、気の毒に思いながらも笑いを堪えていた。
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